実家を片づけることになった、施設への入居で仏壇を置けなくなった、子どもに位牌を引き継ぐ負担をかけたくない。そんなとき、位牌を寺院に預けて供養をお願いする方法があります。その受け皿の一つが位牌堂(いはいどう)です。
ただし、位牌堂という名前だけで、預かり期間や供養の内容が決まるわけではありません。今ある位牌をそのまま預かる寺院もあれば、寺院が用意した位牌に故人の名前を記して祀るところもあります。「永代供養」と案内されていても、同じ位牌を期限なく個別に安置するとは限りません。
この記事では、位牌堂と納骨堂の違い、利用方法、費用の見方、預ける前に家族と確認したいことを解説します。
位牌堂とは?位牌を寺院で祀るための場所
位牌堂は、故人や先祖の位牌を安置し、供養する場所です。独立した建物だけでなく、本堂の一角や裏側に位牌壇を設けている寺院もあります。まずは建物の名称よりも、「どの位牌を、どのような形で祀ってもらえるのか」を確認しましょう。
自宅で祀っていた位牌を預ける場合と、自宅の位牌は残したまま寺院にも位牌を設ける場合では、準備が異なります。前者は保管と供養の引き受け、後者は寺院での新たな位牌の建立が中心です。同じ「位牌供養」という案内でも、希望する内容に対応しているとは限りません。
位牌堂と納骨堂の違い
位牌堂は主に位牌を祀る場所、納骨堂は遺骨を納める施設です。位牌を預けただけで、遺骨の納骨先まで決まるわけではありません。反対に、遺骨を納骨堂へ納めても、自宅の位牌を必ず手放す必要はありません。
同じ寺院の建物内に位牌を祀る場所と遺骨を納める場所があることも、納骨堂の区画に位牌を置けることもあります。そのため「位牌堂には遺骨を置けない」「納骨堂なら位牌も預かってくれる」と名称だけで判断しないようにします。申し込みの対象が位牌だけなのか、遺骨も含むのかを分けて確かめてください。
遺骨の行き先も検討する場合は、納骨堂とは?費用・種類・メリットとデメリット、後悔しない選び方で施設ごとの違いを確認できます。
自宅の位牌と寺院の位牌を両方残すこともできる
一人の故人について、複数の位牌を設ける「位牌分け」という考え方があります。寺院での供養をお願いしながら、自宅でも手を合わせたい場合は、どちらにどの位牌を祀るか相談します。位牌に対する考え方や必要な法要は宗派・寺院によって異なります。
複数の家庭で位牌を祀る場合の準備は、位牌分けとは?親の位牌を兄弟姉妹で祀る方法・時期・費用と注意点で解説しています。
一時預かりと長期の供養では何が違う?
後で自宅へ戻す予定がある場合
引っ越しや家の建て替えなどで、一定期間だけ位牌を置けない場合は、一時預かりに対応する寺院へ相談します。預かり開始日と引き取り予定日、期間を延ばせるか、延長時の費用を先に決めておきます。
ここで大切なのは、位牌を後で返してもらう希望を明確に伝えることです。「供養をお願いします」とだけ伝えると、お焚き上げなど、位牌そのものを手放す依頼と区別できないことがあります。預ける位牌の写真と一覧を残し、返却を前提とした預かりであることを書面でも確認しましょう。
自宅での管理を終え、長期の供養をお願いする場合
位牌を受け継ぐ人がいない場合などは、寺院で長期間祀ってもらう方法を検討します。ただし、個別に安置する期間、期間終了後の供養、位牌そのものの扱いはそれぞれ別の確認事項です。
たとえば、一定期間は預かった位牌を安置し、その後はお焚き上げを行う寺院があります。一方で、寺院が用意する位牌を建立する形式もあります。今ある位牌を残すことを重視するなら、その希望に合う仕組みかどうかを最初に確かめてください。
「永代供養」という言葉だけで判断せず、誰の名前をどのように残し、どのような法要を続けるのかまで聞いておくと、家族にも説明しやすくなります。十三回忌など特定の年忌で必ず切り替わるという全国共通の決まりはありません。
位牌堂の費用は「総額と内容」をそろえて比較する
位牌堂の費用を全国一律の相場として示すことは難しく、安置期間、位牌の数、寺院で新しく作るかどうか、供養の内容などで変わります。料金表が一柱単位なのか、一人の故人を表す一霊単位なのか、一家族単位なのかも見落としやすい点です。
寺院の公式案内に見られる費用の例
2026年11月時点で確認した公式案内では、法雲寺は安置料10万円・期間10年間とし、期間終了後はお焚き上げを行うとしています。深川不動堂は、寺院が用意する位牌による先祖供養を戒名一柱30万円、追加戒名一柱5万円と案内しています。
これは全国相場ではなく、内容が異なる二つの例です。「10万円と30万円のどちらが安いか」と単純に比べることはできません。現在の位牌を預けるのか、新たに建立するのかという違いも含め、最新の条件を各寺院に確認してください。
見積もりで確認したい費用
- 申し込み時の安置料・供養料
- 位牌の新調費用と文字入れ費用
- 毎年の管理料や護持会費などの継続負担
- 個別の年忌法要を依頼する場合のお布施
- 預かり期間の延長、返却、配送などにかかる費用
- 期間終了時の法要やお焚き上げが含まれるか
料金の名称だけでなく、「何が含まれ、何が別に必要か」を確認します。入檀(にゅうだん)、つまり檀家になることが条件かどうかも重要です。年間の支払いがある場合は、将来その支払いを引き継ぐ人が必要なのかまで考えておきましょう。
申し込み前に確認したい七つのこと
1.今ある位牌をそのまま預けられるか
寺院によっては、指定の位牌への作り替えが必要です。位牌の高さ・幅・奥行き、材質、柱数を伝え、安置できるか確認します。繰出位牌(くりだしいはい)のように複数の札が入っているものは、外側の位牌だけでなく、中に何人分の記録があるかも伝えます。
2.安置期間はいつから数えるか
「十年間」などの期間があるなら、申し込み日、位牌を預けた日、故人の命日など、どこを起点とするかを確かめます。延長できるか、満了前に連絡があるか、連絡がつかない場合はどう扱われるかも確認してください。
3.期間終了後に位牌と記録がどうなるか
位牌そのものを残す期間と、名前や命日などの記録を残して供養する期間は同じとは限りません。お焚き上げをする場合、事前の通知があるか、家族が希望すればその前に引き取れるかを確認します。説明に「合祀」とあっても、位牌の扱いを指すのか、遺骨の扱いを指すのかを具体的に聞きましょう。
4.宗派や檀家になる条件があるか
宗派を問わず受け付ける寺院でも、その後の供養は受け入れ先の宗派の作法で行われることがあります。浄土真宗では一般に位牌ではなく過去帳や法名軸を用いますが、他宗派で作られた位牌の預かりに対応する寺院もあります。宗派名だけで決めず、個別に相談してください。
5.いつ、どこでお参りできるか
位牌の前で直接お参りできるのか、共用の場所で手を合わせるのかを確認します。予約の必要性、参拝時間、休みの日、花や供物の持ち込み、線香の使用についても聞いておきます。足腰に不安がある方は、段差や階段、椅子、駐車場からの距離を見学時に確かめましょう。
6.途中で返してもらえるか
親族が引き継ぐことになった、自宅で再び祀りたくなったなど、事情が変わる可能性もあります。返却の可否、申し出の期限、手続きできる人、費用を確かめておきます。返却できる場合でも、支払った供養料が返金されるとは限らないため、別々に確認が必要です。
7.自分が連絡できなくなった後の窓口
契約者が入院したり亡くなったりした場合の連絡先を決めます。身近な親族がいない場合は、連絡先がなくても申し込めるか、その際に期限や管理料をどう扱うかを寺院へ相談してください。運営する寺院、問い合わせ先、将来施設を移転・閉鎖する場合の取り扱いも確認しておきます。
位牌を預けるまでの進め方
家族の希望を確認し、位牌の記録を残す
位牌を管理している本人には負担でも、ほかの家族は自宅に残したいと考えているかもしれません。預ける理由、寺院での供養内容、今後のお参り方法を共有します。位牌をまとめるだけで管理を続けられる場合や、別の家族が引き継げる場合もあるので、結論を急がず選択肢を比べましょう。
位牌の正面と裏面を撮影し、戒名・法名、俗名、亡くなった年月日などを読める形で残します。文字が不鮮明なときは、自己判断で削ったり洗剤でこすったりせず、寺院や仏具店に相談してください。記録があると、寺院への説明や将来の家族の確認にも役立ちます。
数を減らす方法を検討したい方は、増え続ける位牌、どうすればいい?複数ある位牌をまとめる方法と注意点も参考にしてください。
寺院へ相談し、現地を見学する
菩提寺(ぼだいじ)がある場合は、まず現在の事情と希望を伝えると相談を進めやすくなります。別の寺院へ依頼する場合も、従来の供養をどうするか家族で整理しておきましょう。問い合わせでは、預けたい柱数、既存の位牌を残したいか、返却の予定があるかを伝えます。
可能なら現地で安置場所と参拝場所を確認し、費用と利用条件を持ち帰って検討します。「すべてお任せ」で済ませず、家族が大切にしたい点が説明書に含まれているかを見てください。
法要と持ち込み方法を決め、書類を保管する
今ある位牌を移す場合と新しく作る場合では、必要な法要が異なることがあります。開眼供養や閉眼供養の要否・名称を一律に決めず、受け入れ先の寺院に確認します。持ち込む日時、梱包方法、郵送を受け付けるかも事前に相談してください。
位牌は装飾や台座が外れることがあるため、無理に分解せず、動かないよう保護します。預けた後は、受領書、利用条件、費用の明細、安置期間、連絡先を一緒に保管し、家族にも保管場所を知らせておきましょう。
位牌堂を選ぶときは「預けた後」まで考える
位牌堂は、自宅で位牌を守り続けることが難しくなったときの選択肢です。ただし、位牌を預けること、遺骨を納めること、仏壇を手放すことは、それぞれ別に検討する必要があります。
大切なのは、今ある位牌を残せるか、個別安置はいつまでか、その後どう供養されるか、家族がお参りできるかという点です。費用の安さや「永代」という言葉だけで選ばず、自分と家族が納得できる供養の続け方を決めましょう。


