陰膳とは?いつ供える?普段のお供えとの違いと基本の作法

仏壇の前に陰膳として供えられた仏膳椀の精進料理 葬儀・仏事
  1. はじめに
  2. 陰膳とは
    1. もともとは遠くにいる人の無事を願う食事
    2. 現在は故人を偲ぶ食事として用いられる
    3. 陰膳と影膳に大きな違いはない
  3. 陰膳と普段のお供えの違い
    1. 陰膳はその場にいない人のための一人分の食事
    2. 仏壇へ供えるご飯は仏飯と呼ばれる
    3. 仏膳や御霊供膳と呼ぶこともある
  4. 陰膳はいつ供えるのか
    1. 通夜や葬儀の会食
    2. 葬儀後から四十九日まで
    3. 四十九日の法要
    4. 一周忌や年忌法要
    5. お盆や彼岸、命日
  5. 陰膳はいつまで供えるのか
    1. 四十九日を一区切りにする
    2. 一周忌や三回忌まで続けることもある
    3. 家族の負担になる場合は無理に続けない
  6. 陰膳に用意する料理
    1. 基本は一汁三菜
    2. 故人の好物を供えてもよい
    3. 毎日違う料理でなくてもよい
  7. 陰膳に使う仏具
    1. 仏膳椀の基本的な内容
    2. 専用の仏膳椀がなくてもよい
  8. 陰膳の配置と向き
    1. 飯椀は左手前、汁椀は右手前
    2. 箸の側を故人へ向ける
    3. 蓋は外して供える
    4. 宗派や地域による違いがある
  9. 陰膳を置く場所
    1. 自宅では仏壇や後飾り祭壇の前
    2. 法事では遺影や位牌の前
    3. 会場へ小さな陰膳を注文できる場合もある
  10. 陰膳は誰が食べるのか
    1. 家族で分けて食べてもよい
    2. 下げる時間に決まりはない
    3. 傷んだ料理は無理に食べない
    4. 会場では持ち帰れない場合がある
  11. 浄土真宗では陰膳を供えないのか
    1. 故人が四十九日間旅をするとは考えない
    2. 仏前へのご飯は阿弥陀如来へのお供え
    3. 家庭の習慣として用意する場合もある
  12. 陰膳を用意するときの注意点
    1. 必ず用意するものではない
    2. 宗派や地域の習慣を確認する
    3. 無理に豪華な料理を用意しない
    4. 会食会場には事前に伝える
  13. まとめ

はじめに

葬儀や法事の会食で、故人のために一人分の食事が用意されているのを見たことがある方もいるでしょう。
このように、その場にいない人や亡くなった人のために用意する食事を、陰膳(かげぜん)といいます。
陰膳には、大切な人も一緒に食卓を囲んでいると考え、その人の無事を願ったり、故人を偲んだりする意味があります。
しかし、陰膳について調べると、「四十九日まで毎日供える」「法事の会食で用意する」「普段仏壇へ供えるご飯も陰膳と呼ぶ」など、さまざまな説明が見つかります。
そのため、いつ供えるものなのか、仏壇へ普段供えるご飯と何が違うのか、供えた料理は誰が食べるのか迷う方も少なくありません。
陰膳の用意は仏教上の一律の義務ではなく、宗派や地域、家庭によって考え方や作法が異なります。
この記事では、陰膳の本来の意味、いつ供えるのか、普段のお供えとの違い、料理の内容、仏膳椀の配置、供えた後の食べ方、浄土真宗での考え方について解説します。

陰膳とは

陰膳とは、旅行や仕事などで遠くにいる人や、亡くなった人のために、その人が一緒にいるように用意する食事です。
現在の葬儀や法事では、故人も家族や参列者とともに食事をしていると考え、遺影や位牌の前に供える一人分の料理を指すことが多くなっています。

もともとは遠くにいる人の無事を願う食事

陰膳は、もともと亡くなった人だけを対象とする習慣ではありませんでした。
長い旅や出征などで家を離れている人の席を用意し、本人の分の食事を食卓へ並べて、無事に帰ってくることを願う習慣でした。
交通や通信が発達していなかった時代には、遠くへ出た家族の様子を簡単に知ることができませんでした。
家族が毎日食事を用意することには、本人が事故や病気、飢えに遭わず、無事に過ごせるようにという願いが込められていたと考えられます。
現在では、生きている家族のために陰膳を用意する家庭は少なくなりましたが、遠方にいる人の無事を願うという本来の意味は残っています。

現在は故人を偲ぶ食事として用いられる

現在、陰膳という言葉は、通夜や葬儀、四十九日、一周忌などで故人のために用意する食事という意味で広く使われています。
遺影や位牌の前に小さな仏膳を供える場合もあれば、法事の会食会場に故人の席を設け、参列者と同じ料理を一人分置く場合もあります。
故人を食事の場から除くのではなく、家族とともに食卓を囲んでいる存在として偲ぶためのものです。
ただし、陰膳を用意しなければ供養にならないということではありません。
宗派の考え方や地域の習慣、家族の希望に応じて、用意するかどうかを決めて構いません。

陰膳と影膳に大きな違いはない

陰膳は「影膳」と書かれることもあります。
一般には、どちらもその場にいない人や故人のために用意する食事を指し、意味に大きな違いはありません。
本人の姿が見えなくても、その人の代わりとなる膳を用意することから「影膳」と表記される場合があります。
一方、葬儀社や寺院、料理店などでは「陰膳」という表記が多く見られます。
施設によって呼び方が異なるため、法事の料理を注文するときは、名称だけでなく「故人用の小さなお膳を用意したい」など、希望する内容を具体的に伝えると確実です。

陰膳と普段のお供えの違い

陰膳と、仏壇へ普段供えるご飯は、似ているように見えて意味が異なります。
どちらも故人や仏様に関係する食事ですが、誰のために、どのような目的で用意するかが違います。

陰膳はその場にいない人のための一人分の食事

陰膳は、本来、その場にいない人のために用意する一人分の食事です。
亡くなった人に供える場合も、故人が家族と一緒に食事をしていると考え、本人の分として用意します。
葬儀や法事の会食で故人用の席を設ける場合や、遺影や位牌の前に一人分の料理を置く場合が代表的です。

仏壇へ供えるご飯は仏飯と呼ばれる

仏壇へ日常的に供えるご飯は、一般に仏飯(ぶっぱん)と呼ばれます。
炊きたてのご飯を小さな仏飯器に盛り、本尊やご先祖へ供えます。
仏壇へのお供えには、ご飯のほか、水、お茶、菓子、果物、花などがあります。
仏飯は毎日の供養として行われることがありますが、陰膳のように必ず一汁三菜の料理を一人分用意するものではありません。

仏膳や御霊供膳と呼ぶこともある

四十九日や法要などで、仏壇や祭壇の前にご飯、汁物、煮物などをそろえて供える膳は、仏膳や御霊供膳(おりょうぐぜん)などと呼ばれます。
地域や家庭では、こうした仏膳も広く陰膳と呼ぶことがあります。
そのため、陰膳、仏膳、御霊供膳という言葉が、実際には厳密に区別されず使われていることも少なくありません。
名称だけにこだわるより、誰に対して、どのような意味で供える食事なのかを理解することが大切です。

陰膳はいつ供えるのか

陰膳を供える日や期間について、すべての宗派や地域に共通する決まりはありません。
通夜や葬儀などの会食時だけ用意する家庭もあれば、四十九日まで毎日供える家庭もあります。

通夜や葬儀の会食

通夜振る舞いや葬儀後の精進落としで、故人のために陰膳を用意することがあります。
会食会場の上座に遺影や位牌を置き、その前に小さな仏膳を供える方法が一般的です。
参列者と同じ料理を一人前用意し、故人の席へ置く場合もあります。
どちらの形式にするかは、地域の習慣や葬儀会館、料理店の対応によって異なります。
陰膳を希望する場合は、葬儀社との打ち合わせ時に確認しておきましょう。

葬儀後から四十九日まで

葬儀後から四十九日まで、後飾り祭壇や仏壇の前に陰膳を供える家庭もあります。
毎日一汁三菜を用意する家庭もありますが、朝だけご飯と汁物を供えたり、家族の食事を少量取り分けたりする場合もあります。
ただし、四十九日まで毎日供えなければならないという全国共通の決まりはありません。
家族に負担がかかる場合は、初七日など七日ごとの節目や、家族が集まる日だけ用意しても構いません。

四十九日の法要

四十九日の法要では、読経や納骨の後に会食を行うことがあります。
その席で、故人の遺影や位牌の前に陰膳を置く場合があります。
四十九日は忌明けの節目となるため、陰膳を用意する家庭が比較的多い時期です。
ただし、宗派によって四十九日の捉え方は異なり、陰膳を用意しない寺院もあります。
法要を寺院や会館で行う場合は、事前に必要かどうかを確認すると安心です。

四十九日には、陰膳の用意だけでなく、法要の日程、納骨、会食、返礼品などについても準備が必要です。
詳しい流れは、四十九日とは?法要までにすること・当日の流れと準備で解説しています。

一周忌や年忌法要

一周忌や三回忌などの年忌法要でも、故人を偲ぶために陰膳を用意することがあります。
一周忌までは用意し、その後は省略する家庭もあれば、三回忌や七回忌まで続ける家庭もあります。
一方で、四十九日以降は陰膳を用意しない家庭もあります。
何回忌まで続けなければならないという決まりはないため、地域の習慣や家族の考え方に合わせて判断しましょう。

一周忌以降の法要では、陰膳を必ず用意する決まりはなく、地域や家庭の考え方に合わせて判断します。
一周忌の準備や当日の流れについては、一周忌とは?法要の準備・当日の流れ・服装と香典も参考にしてください。

お盆や彼岸、命日

お盆や彼岸、祥月命日などに、故人の好きだった料理や飲み物を供えることもあります。
毎日用意することが難しくても、故人を思い出す節目の日に食事を供えることで、気持ちを表せます。
専用の仏膳椀がない場合は、普段使っている小さな食器に少量ずつ盛り付けても構いません。

陰膳はいつまで供えるのか

陰膳を続ける期間にも、一律の決まりはありません。
四十九日を区切りとする家庭が多いものの、一周忌まで続ける家庭や、法事のときだけ用意する家庭もあります。

四十九日を一区切りにする

日常的に陰膳を供えている場合は、四十九日の忌明けを一区切りとする方法があります。
四十九日までは毎日または七日ごとに供え、その後は命日や法事などの節目だけにする形です。
毎日の用意が家族の負担になっている場合も、四十九日を機に簡略化しやすくなります。
ただし、浄土真宗では、四十九日を故人が成仏するまで旅をする期間とは考えません。
宗派による違いを確認して判断しましょう。

一周忌や三回忌まで続けることもある

法事後の会食で陰膳を用意する場合は、一周忌や三回忌まで続ける家庭もあります。
故人の席があることで、参列者が思い出を語りやすくなり、故人を身近に感じられることもあります。
ただし、仏教上の義務ではないため、家族の負担や会場の事情を考えて省略しても問題ありません。

家族の負担になる場合は無理に続けない

陰膳は、故人を思うための習慣です。
毎日一汁三菜を用意することが負担になる場合は、ご飯だけ、故人の好物だけ、家族の料理を少量取り分けるだけでも構いません。
陰膳を供えることをやめたからといって、故人を大切に思う気持ちが失われるわけではありません。
花や線香、仏飯など、別の形で供養を続けることもできます。

陰膳に用意する料理

陰膳の料理には、精進料理を用いるのが基本とされています。
ただし、家庭で日常的に供える場合まで、必ず正式な一汁三菜を用意しなければならないわけではありません。

基本は一汁三菜

正式な仏膳椀を使う場合は、ご飯と汁物に三種類の料理を組み合わせた一汁三菜を基本とします。
一般的には、ご飯、味噌汁や吸い物、野菜の煮物、胡麻和えや白和え、漬物などを用意します。
仏事の精進料理では、肉や魚などの動物性食材を避けるのが基本です。
にんにく、ねぎ、にら、らっきょうなど、香りの強い野菜を用いない場合もあります。
ただし、料理の内容は宗派や寺院、地域によって異なるため、正式な法要では菩提寺(ぼだいじ)へ確認してください。

故人の好物を供えてもよい

命日や法事には、故人が生前好んでいた料理、菓子、果物、酒、コーヒーなどを供えることがあります。
形式的な料理だけでなく、故人らしさを感じられるものを添えることで、家族が思い出を振り返るきっかけにもなります。
ただし、寺院へ持参する場合や、宗派の作法に沿って仏膳を整える場合は、肉や魚、酒などを避けることがあります。
事前に寺院へ確認しましょう。

毎日違う料理でなくてもよい

四十九日まで陰膳を続ける場合でも、毎日献立を変える必要はありません。
家族の食事を少量ずつ取り分けたり、ご飯と汁物だけにしたりしても構いません。
料理を作れない日は、ご飯、果物、菓子など、用意できるものを供える方法もあります。
形式よりも、家族が無理なく続けられることが大切です。

陰膳に使う仏具

陰膳や仏膳を正式に整える場合は、仏膳椀(ぶつぜんわん)と呼ばれる小型の食器一式を使用します。
仏膳、御霊供膳、霊供膳などの名称で販売されていることもあります。

仏膳椀の基本的な内容

一般的な仏膳椀は、飯椀、汁椀、平椀、壺椀、高坏(たかつき)、箸、膳で構成されています。
飯椀にはご飯、汁椀には味噌汁や吸い物を入れます。
平椀には野菜の煮物、壺椀には胡麻和え、白和え、煮豆などを盛ります。
高坏には漬物などの香の物を置きます。
商品や地域によって器の呼び方や形が異なり、飯椀を親椀、高坏を高杯と表記することもあります。

専用の仏膳椀がなくてもよい

陰膳を供えるために、必ず専用の仏膳椀を購入する必要はありません。
普段使っている小さな茶碗や皿へ、家族の食事を少量ずつ盛り付けても構いません。
法事の会食では、故人用の席に参列者と同じ食器や料理を用意することもあります。
仏膳椀を購入する場合は、仏壇や後飾り祭壇に安全に置ける大きさか確認しましょう。

陰膳の配置と向き

仏膳椀の配置は、宗派によって異なることがあります。
ここでは一般的な配置を紹介しますが、菩提寺から指示がある場合は、その作法を優先してください。

飯椀は左手前、汁椀は右手前

食べる人から見て、左手前にご飯を盛った飯椀、右手前に汁椀を置くのが基本です。
奥側に平椀と壺椀を置き、中央付近に高坏を置きます。
ただし、平椀、壺椀、高坏の位置は、宗派によって異なる場合があります。
法要で正式に供える場合は、菩提寺や仏具店へ確認しましょう。

箸の側を故人へ向ける

陰膳は故人に召し上がっていただく形で供えるため、箸が置かれている側を遺影、位牌、仏壇へ向けます。
遺族から見ると、料理が反対向きに置かれているように見えます。
これは、遺族から見た向きではなく、故人側から食べやすい向きにするためです。
会食会場で故人用の席を設ける場合は、その席に本人が座っていると考え、通常の食事と同じ向きに料理を置きます。

蓋は外して供える

蓋付きの仏膳椀を使用する場合は、料理を盛った後に蓋を外して供えるのが一般的です。
蓋の置き方は、膳や器の形によって異なります。
分からない場合は、仏膳椀の商品説明や菩提寺の作法を確認してください。

宗派や地域による違いがある

仏膳椀の器や料理は似ていても、配置や供え方は宗派、地域、寺院によって異なる場合があります。
インターネット上で一つの配置図を見つけても、それ以外の並べ方がすべて間違いというわけではありません。
親族の間でも作法が異なることがあるため、正式な法要では、法要を依頼する寺院の考え方を優先しましょう。

陰膳を置く場所

陰膳を置く場所は、自宅、寺院、葬儀会館、料理店などによって異なります。

自宅では仏壇や後飾り祭壇の前

自宅で供える場合は、仏壇や後飾り祭壇の前に置きます。
仏壇に膳引きがある場合は、その上へ置くこともあります。
料理をこぼしたり仏具を倒したりしないよう、不安定な場所や高すぎる場所は避けましょう。
仏壇内に置く場所がない場合は、仏壇の前へ小さな台を用意しても構いません。

法事では遺影や位牌の前

法事後の会食では、上座に遺影や位牌を置き、その前に陰膳を用意することがあります。
故人用の席を一つ設け、その席に遺影や花を置く方法もあります。
会場によって、遺影や位牌を置く場所、持ち込める仏具、線香の使用などに制限があるため、予約時に確認しておきましょう。

会場へ小さな陰膳を注文できる場合もある

料理店やホテル、葬儀会館では、故人用の小さな陰膳を用意できることがあります。
施設によって、陰膳、影膳、御霊供膳など名称が異なります。
参列者と同じ料理を一人前注文することもできますが、料理が余ることを考え、小さな膳を選ぶ家庭もあります。
予約時に料理の内容や料金を確認してください。

陰膳は誰が食べるのか

供えた陰膳は、一定時間がたった後に下げ、家族で食べても構いません。
仏前から下げた食べ物は「お下がり」と呼ばれます。

家族で分けて食べてもよい

陰膳は供えた後、家族や参列者で分けて食べられます。
食べ物を無駄にせず、故人と食事を分かち合うという意味でも、お下がりをいただく方法があります。
法事会場で故人用に一人前の料理を用意した場合は、会食中に参列者で少しずつ分けることもあります。
誰が食べなければならないという決まりはありません。

下げる時間に決まりはない

陰膳をいつ下げるかについて、全国共通の決まりはありません。
家族の食事が終わったとき、線香が燃え終わった頃、料理が傷まないうちなどを目安に下げます。
自宅で供える場合は、長時間置いたままにせず、その日のうちに片付けましょう。
特に夏場や暖房の効いた部屋では、料理が傷みやすいため注意が必要です。

傷んだ料理は無理に食べない

長時間室温に置いた料理や、傷みやすい食材を使った料理は、無理に食べる必要はありません。
食中毒の危険がある場合は、感謝の気持ちをもって処分しましょう。
陰膳を食べなかったからといって、供養にならないわけではありません。

会場では持ち帰れない場合がある

料理店やホテルでは、食品衛生上の理由から、陰膳を含む料理の持ち帰りを認めていない場合があります。
陰膳を注文するときは、会食中に分けて食べるのか、残った場合は会場で処分されるのかを確認しておきましょう。
持ち帰れない場合でも、故人のために食事を用意した意味が失われるわけではありません。

浄土真宗では陰膳を供えないのか

浄土真宗では、故人が成仏するまでの旅の食事という意味での陰膳は、一般的に用意しません。
亡くなった人は、阿弥陀如来の本願によって浄土へ往生すると考えるためです。

故人が四十九日間旅をするとは考えない

浄土真宗では、亡くなった人が四十九日間をかけて成仏へ向かうという考え方を基本としません。
そのため、故人が旅の途中で困らないように食事を供えるという意味での陰膳は、浄土真宗の教義とは合わないと説明されます。
ただし、浄土真宗でも仏前へご飯を供えることはあります。

仏前へのご飯は阿弥陀如来へのお供え

浄土真宗で仏前へ供えるご飯は、仏飯や御仏供(おぶく・おぶっぱん)などと呼ばれます。
故人の空腹を満たすためではなく、本尊である阿弥陀如来への報恩感謝を表すお供えです。
したがって、「浄土真宗では食べ物を一切供えてはいけない」ということではありません。
本願寺派、大谷派などの派や寺院によって供え方が異なることもあるため、詳しくは菩提寺へ確認しましょう。

家庭の習慣として用意する場合もある

浄土真宗の家庭でも、法事の会食で故人用の料理を用意することがあります。
この場合は、故人の旅の食事という教義上の意味ではなく、故人を偲び、一緒に食卓を囲んでいると感じるための習慣として行われます。
親族が陰膳を希望しているものの、宗派の作法が気になる場合は、菩提寺のご住職へ相談してください。

陰膳を用意するときの注意点

陰膳は、形式を整えることだけが目的ではありません。
宗派や家庭の事情に合った方法で、故人を偲ぶことが大切です。

必ず用意するものではない

通夜、葬儀、四十九日、一周忌などで、陰膳を必ず用意しなければならないという決まりはありません。
陰膳がないからといって、故人を大切にしていないことにはなりません。
家族だけの小規模な法事や、会食を行わない法事では、陰膳を省略することもあります。

宗派や地域の習慣を確認する

料理の内容、仏膳椀の配置、供える時期は、宗派や地域によって異なります。
親族の間で考え方が違うこともあります。
正式な法要を行う場合は、菩提寺のご住職、葬儀社、料理店へ事前に確認すると安心です。

無理に豪華な料理を用意しない

陰膳のために高価な仏膳椀を購入したり、毎日多くの料理を作ったりする必要はありません。
普段の食事を一口ずつ取り分けるだけでも、故人を思う気持ちは表せます。
高齢者だけの家庭や、料理を作ることが難しい家庭では、ご飯、果物、菓子、飲み物など、無理なく用意できるものを選びましょう。

会食会場には事前に伝える

法事の会食で、遺影、位牌、花、陰膳を置きたい場合は、予約時に会場へ伝えます。
当日に突然依頼すると、席や料理を用意できないことがあります。
遺影を置く台、故人の席、陰膳の料理内容、持ち帰りの可否まで確認しておくと安心です。

まとめ

陰膳とは、もともと旅や出征などで家を離れている人の無事を願い、その人のために用意する食事でした。
現在は、通夜、葬儀、四十九日、一周忌などで、故人を偲ぶために用意する食事という意味でも使われています。
陰膳と影膳に大きな意味の違いはありません。
普段仏壇へ供えるご飯は仏飯と呼ばれ、故人の一人分の食事として用意する陰膳とは、本来の意味が異なります。
ただし、地域や家庭では、仏膳や御霊供膳も広く陰膳と呼ぶことがあります。
陰膳をいつ供えるか、いつまで続けるかについて、一律の決まりはありません。
葬儀や法事の会食だけで用意する家庭もあれば、四十九日まで毎日供える家庭、一周忌や三回忌まで法事の際に用意する家庭もあります。
仏膳椀を使う場合は、ご飯、汁物、煮物、和え物、漬物などを盛り付けます。
ただし、器の配置や供え方には宗派差があるため、正式な法要では菩提寺へ確認しましょう。
供えた料理は、お下がりとして家族で食べても構いません。
ただし、長時間置いた料理は、衛生状態を確認し、無理に食べないことが大切です。
浄土真宗では、故人が成仏するまでの旅の食事という意味での陰膳は一般的に用意しません。
一方、阿弥陀如来への感謝を表すものとして、仏前へご飯を供えることはあります。
陰膳は必ず用意しなければならないものではありません。
形式だけにとらわれず、宗派や家庭の事情に合った方法で故人を偲ぶことが大切です。

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