認知症予防の運動は何から始める?安全に続ける歩行・体操の工夫

緑の多い公園の平坦な道を、前方を見ながら無理のない速さで歩く高齢男性 健康

認知症(にんちしょう)に備えて体を動かしたいと思っても、何をどれくらい行えばよいのか迷うことがあります。
運動は健康を支える大切な習慣ですが、決まった歩数や体操だけで認知症を確実に防げるわけではありません。
今の体力や体調に合わせ、安全に続けられる方法を選ぶことから始めましょう。

この記事では、歩く運動、筋力やバランスを保つ運動、日常生活で活動を増やす工夫を紹介します。
持病がある方、転倒を繰り返す方、医師から運動の制限を受けている方は、自分に合う内容を医師やリハビリテーションの専門職に相談してください。

運動と認知症予防の関係を知る

発症リスクを下げる取り組みの一つ

身体活動は、認知機能の低下や認知症のリスクを減らすために取り入れたい生活習慣の一つです。
ただし、研究で集団としての効果が示されることと、個人が必ず発症を避けられることは同じではありません。
運動を続けていて認知症になっても、本人の努力が足りなかったという意味にはなりません。

運動には、歩く力や体力を保ち、日々の外出や家事を続けやすくする役割もあります。
認知症予防だけを目標にすると成果が見えにくいため、「近所の店に行く」「好きな庭仕事を続ける」など、暮らしの中の目標も考えてみましょう。

診断後の運動は治療や支援と組み合わせる

すでに認知症や軽度認知障害(MCI)と診断されている方も、体調や能力に合った活動を相談できます。
ただし、運動だけで病気が治る、記憶が元に戻ると約束できるものではありません。
薬や通院を自己判断でやめず、本人が安心して参加できる環境を整えます。

痛みや麻痺がある場合の訓練、歩き方の調整などは、一般的な健康づくりの運動とは分けて考える必要があります。
他の人の体操をそのまままねるのではなく、医師や理学療法士などに動きを確認してもらいましょう。

まずは今より少し体を動かす

短い時間の積み重ねにも意味がある

運動は、まとまった時間が取れないと無意味というものではありません。
長時間座ったままの日が多いなら、家の中の用事に合わせて立つ、無理のない範囲で少し歩くなど、小さな変化から始められます。
十分快適に動けるか分からない場合は、最初から長い時間を設定しないようにします。

例えば、午前中に玄関先まで歩く、午後に室内で体を動かすなど、一日の中に分ける方法があります。
疲れや痛みが残らないかを確認しながら、できる範囲を探してください。
休んだ日の分を翌日にまとめて取り返す必要はありません。

歩数の数字を全員共通のノルマにしない

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に歩行などの身体活動を一日四十分以上、歩数にすると約六千歩以上という目安を示しています。
ただし、これは健康づくり全体の目安であり、その歩数なら認知症を防げるという境界線ではありません。

体力、持病、歩行の安定性によって適切な量は変わります。
今の活動量が少ない方が急に数字だけを目指すと、負担が大きくなることがあります。
達成できない日を責めず、自分の状態に合わせて少しでも活動を増やす考え方が大切です。

歩く運動を暮らしに取り入れる

道順と休憩場所を先に決める

散歩は特別な器具がなくても始めやすい活動です。
まずは段差が少なく、交通量が多すぎない道を選びます。
途中で休めるベンチや、短い距離で帰れる道順を確認し、行きに疲れ切って帰れなくならないようにしましょう。

歩く速さは、人と競わず、無理なく続けられる範囲にします。
息が苦しくて話しにくいほど頑張る必要はありません。
靴は足に合い、滑りにくいものを選び、杖などを使っている方は、普段の支えを省略せずに利用してください。

天候に合わせて室内の活動へ切り替える

暑さが厳しい日、雨で地面が滑りやすい日、体調が落ち着かない日は、屋外の散歩にこだわらないようにします。
室内の安全な場所で短く体を動かす方法もあります。
暑い時期は室内でも温度に注意し、冷房や休憩を取り入れましょう。

外出時は連絡手段や帰り道を確認します。
道に迷う心配がある場合は、一人で歩く距離を増やすより、家族や支援者と一緒に歩く方法を相談してください。
安全の工夫は本人の楽しみを守るためのもので、外出を一律に禁止するという意味ではありません。

筋力・バランス・柔軟性も組み合わせる

筋力を保つ運動は動作を確認してから

歩くだけでなく、日常動作を支える筋肉を使う活動も取り入れたいものです。
椅子から立ち座りする運動などが使われますが、膝や腰の痛み、ふらつきがある方には、そのまま適さない場合があります。
回数を決める前に、安定して行える動作かを確かめましょう。

椅子を使う場合は、キャスター付きや倒れやすいものを避けます。
息を止めて強くいきんだり、反動をつけて無理に動いたりしないようにしてください。
初めて行う方や自信のない方は、地域の教室や専門職の指導で、自分に合う方法を教わると安心です。

バランス運動は転ばない環境で

バランスを使う体操は、姿勢を保つ力を支える活動の一つです。
しかし、片足立ちや複雑なステップを、支えのない場所でいきなり行うのは避けます。
転ぶことが心配な方は、見守りや安定した支えが必要かを専門職に相談してください。

室内では床のコード、めくれた敷物、足元の物などを片付けます。
靴下で滑りやすい床にも注意が必要です。
動画の指導者と同じ速さでできなくても問題はなく、途中で座る、動きを小さくするなどの調整を優先します。

ストレッチは痛みのない範囲で

ゆっくり体を伸ばすストレッチは、体を動かすきっかけにもなります。
柔らかさを人と比べたり、痛みを我慢して深く曲げたりする必要はありません。
反動をつけず、楽に呼吸できる範囲で行いましょう。

関節を手術した方や、骨や関節の病気がある方では、避けた方がよい動きがある場合があります。
一般向けの動画でも誰にでも安全とは限りません。
運動の種類を増やしたいときは、今受けている治療や指示を確認してください。

コグニサイズは楽しめる範囲で取り入れる

運動と考える課題を組み合わせる方法

コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが開発した、運動と計算や言葉などの認知課題を組み合わせる取り組みです。
体を動かしながら考える点が特徴ですが、難しい課題をこなせば必ず認知症を防げるというものではありません。

取り入れる際は、まず運動自体を安全に行えることを確認します。
慣れない方は教室や専門職の案内を利用し、動作と課題の難しさを調整しましょう。
数え間違えたことを責めたり、正解の数で参加者を順位付けしたりしないようにします。

歩行の安全が下がるなら課題を減らす

考えることに集中すると足元への注意がそれる場合があります。
車や自転車が通る場所、階段、段差のある道で、歩きながら複雑な計算を行うことは避けてください。
ふらつきや強い疲れが出る場合は、課題をやめて休みます。

本人が苦手に感じる課題を続ける必要はありません。
運動だけを楽しむ日があってもよく、好きな音楽や会話を取り入れる場合も、安全に注意を向けられることを優先します。
家族は正解を試す役ではなく、一緒に安心して過ごす相手になることを意識しましょう。

続ける計画と体調確認

生活の予定に小さく組み込む

最初は「週に何回も長時間」と決めるより、買い物や家事など普段の予定に結び付けると取り組みやすくなります。
例えば、体調のよい日に近所を短く歩き、別の日は教わった体操を行う、といった組み合わせを考えます。
階段が危ない方に階段利用を勧めるなど、活動量だけを優先しないことが大切です。

カレンダーに行った活動と、その後の疲れや痛みを短く記録すると、自分に合う量を考える材料になります。
歩数計を使う場合も、数字の増減だけで評価しないようにしましょう。
機器の操作が負担なら、紙に丸を付けるだけでも十分です。

体調が悪い日は休み、必要なら相談する

発熱、強いだるさ、普段と違う痛みがある日は無理に運動しません。
運動中に胸の痛み、強い息苦しさ、めまいなどが出たら中止し、症状に応じて医療機関や救急に相談してください。
水分補給や休憩も取り入れますが、水分量に治療上の指示がある方はその指示に従います。

翌日まで強い疲れや痛みが残る場合は、時間や内容が合っているか見直しましょう。
体力が落ちたと感じるときも、気合いで回数を増やすのではなく、体調や栄養状態などを含めて相談することが大切です。

仲間や地域の支援を利用する

一人では続けにくい方は、自治体の介護予防教室や通いの場などを探せます。
地域包括支援センターに相談すると、地域の活動を案内してもらえる場合があります。
参加費、移動手段、休憩の取りやすさ、体力に合った内容かを確認して選びましょう。

大勢での活動が苦手なら、一人で落ち着いて行う方法や家族と少人数で歩く方法もあります。
参加を断ったことを意欲のなさと決めつけず、本人の好みを聞いてください。
運動だけに頼らず、食事、睡眠、持病の管理なども合わせて暮らしを整えます。

生活全体の取り組みは、認知症予防には何が効果的?今日から始められる予防法についてで解説しています。
食事については、認知症予防の食事はどう考える?低栄養を避けて無理なく整える食生活も参考にしてください。

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