はじめに
家族葬を検討するとき、特に気になるのが葬儀にかかる費用です。
葬儀社の広告には「家族葬30万円から」などと表示されていることがありますが、実際には広告の金額だけで葬儀を行えるとは限りません。
遺体の搬送や安置、式場、火葬、料理、返礼品などが別料金になり、最終的な支払額が当初の想定を上回ることもあります。
また、家族葬は一般葬より小規模になりやすいものの、祭壇、棺、火葬など、参列人数にかかわらず必要になる費用があります。
家族葬では香典を辞退する場合もあるため、葬儀費用の総額だけでなく、遺族が実際に準備する金額も考えなければなりません。
この記事では、家族葬の費用相場、内訳、追加料金が発生する理由、一般葬との違い、自己負担を抑える方法を紹介します。
家族葬の費用相場
家族葬の費用には全国一律の金額があるわけではありません。
地域、参列人数、式場、祭壇、安置日数、宗教形式などによって大きく変わります。
2026年調査では家族葬の費用は96.39万円
鎌倉新書が2026年5月に発表した「第7回お葬式に関する全国調査」によると、家族葬にかかった費用の中央値は96.39万円でした。
同調査における葬儀形式別の費用は、一般葬が122.01万円、家族葬が96.39万円、一日葬が74.43万円、直葬・火葬式が49.56万円です。
この調査は、2024年3月から2026年3月までの間に喪主、または喪主に準ずる立場を経験した全国の40歳以上の男女2,000人を対象に行われています。
費用は平均値ではなく中央値で集計されています。
中央値とは、回答金額を低い順から並べたときに中央となる金額です。
一部の非常に高額な葬儀による影響を受けにくいため、一般的な費用感を判断する一つの目安になります。
ただし、96.39万円を用意すれば、どの地域でも同じ内容の家族葬を行えるという意味ではありません。
家族葬の実際の費用は、葬儀の内容と地域によって異なります。

費用相場だけで葬儀社を選ばない
全国調査の金額は、家族葬を検討する際の参考にはなりますが、個別の葬儀費用を保証するものではありません。
同じ参列人数でも、公営斎場を利用する場合と民営の葬儀会館を利用する場合では、式場使用料が異なります。
火葬料金も、住民料金を利用できる公営火葬場と民営火葬場では差が出ることがあります。
都市部では火葬場の混雑によって火葬までの日数が延び、安置施設の利用料やドライアイス代が増える場合もあります。
相場より安いか高いかだけで判断せず、自分たちが希望する内容を含めた見積もりを確認することが大切です。
家族葬の費用の内訳
葬儀費用は、主に葬儀の基本料金、飲食費、返礼品費に分けられます。
仏式など宗教者を招く葬儀では、これとは別にお布施なども必要になります。
葬儀の基本料金
葬儀の基本料金には、葬儀を行うために必要な物品やサービスが含まれます。
主な項目は、遺体の搬送、安置、棺、骨壺、祭壇、遺影写真、式場使用料、受付設備、霊柩車、葬儀スタッフ、火葬場の手配などです。
ただし、「基本料金」や「葬儀一式」という名称であっても、必要なものがすべて含まれているとは限りません。
火葬料金、式場使用料、搬送費、安置料などが別料金になっているプランもあります。
葬儀社によって含まれる項目が異なるため、プラン名や表示金額だけでは正確に比較できません。
飲食費
飲食費には、通夜振る舞い、葬儀後の精進落とし、飲み物などの費用が含まれます。
参列者一人あたりの単価に人数を掛けて計算することが多いため、参列者が増えるほど費用も高くなります。
家族葬では参列者が比較的少ないため、一般葬より飲食費を抑えやすくなります。
ただし、親族中心の葬儀でも料理の内容を充実させたり、持ち帰り用の弁当を用意したりすれば費用は増えます。
会食を行わない場合でも、そのことを家族や親族へ説明し、地域や家庭の習慣も考慮して決めましょう。
返礼品費
返礼品費には、会葬御礼品や香典返しの費用が含まれます。
返礼品も人数によって変わる費用です。
家族葬では参列者が少ないため、葬儀当日に必要な返礼品の数は抑えられます。
一方、葬儀後に香典が郵送されたり、自宅への弔問時に香典を受け取ったりすると、後から返礼品を用意する必要があります。
その場合は、品物の代金だけでなく、送料や挨拶状の費用もかかります。
火葬料金
火葬料金は、基本プランに含まれている場合と別料金になる場合があります。
公営火葬場では、その自治体の住民に低い料金が設定されていることがあります。
故人または申請者の住所が利用条件に当てはまらない場合は、市外料金になることもあります。
民営火葬場を利用する地域では、公営火葬場より高くなる場合があります。
火葬料金だけでなく、待合室、収骨容器、火葬場までの車両などの費用も確認しましょう。
お布施など宗教者へ渡す費用
仏式の家族葬では、僧侶へ読経や戒名のお礼としてお布施を渡します。
必要に応じて、お車代や御膳料も用意します。
家族葬だからといって、お布施が必ず一般葬より安くなるわけではありません。
お布施は参列人数ではなく、寺院との関係、地域、宗派、依頼する内容などによって異なります。
菩提寺(ぼだいじ)がある場合は、葬儀社から僧侶を紹介してもらう前に菩提寺へ連絡しましょう。
菩提寺へ相談せずに葬儀や戒名の依頼を進めると、納骨の際に問題になる可能性があります。
家族葬で追加料金が発生しやすい項目
広告や基本プランの金額と、最終的な支払額が異なる主な理由は、プランに含まれない費用や利用条件を超えた費用が追加されるためです。
遺体の搬送距離
搬送費には、病院や施設から自宅、安置施設などへ遺体を運ぶ費用が含まれます。
基本プランに含まれる距離が決められており、それを超えると距離に応じた料金が加算されることがあります。
深夜や早朝の搬送には、時間外料金が発生する場合もあります。
最初の搬送だけでなく、安置場所から式場、式場から火葬場までの移動が別料金になっていないか確認が必要です。
安置日数とドライアイス
亡くなってから火葬までの間は、遺体を適切な状態で安置しなければなりません。
基本プランには、一定日数分の安置料やドライアイス代だけが含まれていることがあります。
火葬場や式場の予約が取れず、予定より安置期間が長くなると、1日ごとに追加料金が発生します。
自宅に安置できない場合は、安置施設の利用料や面会料が必要になることもあります。
式場使用料
家族葬プランに式場使用料が含まれていない場合や、利用できる式場が限定されている場合があります。
希望する場所や日程によって別の式場を選ぶと、追加料金が必要になることがあります。
家族葬であっても、親族が多ければ小さな式場では収容できません。
参列予定人数に合った式場を選び、控室や宿泊設備の利用料も確認しましょう。
祭壇や棺の変更
低価格のプランでは、選べる祭壇や棺の種類が限られていることがあります。
花の量を増やす、祭壇を大きくする、棺の素材や内装を変更するなどの希望を加えると費用が上がります。
遺影写真の加工、湯灌(ゆかん)、死化粧、故人の衣装なども、プランによっては別料金です。
その場で勧められて判断に迷わないように、標準内容の写真や見本を事前に確認しておきましょう。
料理と返礼品の追加
予定より参列者が増えると、料理、飲み物、返礼品などの数量も増えます。
家族葬の日時や会場が、参列をお願いしていない人へ伝わり、当日に訪れることもあります。
追加分を用意する場合の単価や、余った料理・返礼品を返品できるかも確認しておくと安心です。
車両や宿泊にかかる費用
霊柩車のほか、火葬場へ移動するためのマイクロバスやタクシーが必要になることがあります。
遠方から参列する親族がいる場合は、宿泊費や交通費の負担についても話し合いが必要です。
葬儀会館に宿泊できても、布団、浴室、付き添い人数などによって料金が加算される場合があります。
家族葬と一般葬の費用の違い
家族葬と一般葬では、費用の仕組みそのものが大きく異なるわけではありません。
どちらも、棺、祭壇、搬送、安置、式場、火葬などが必要です。
主な違いは、参列人数によって変わる費用と香典の金額です。
家族葬の特徴や一般葬との違い、葬儀の流れについては「家族葬とは?一般葬との違い・流れ・呼ぶ範囲・注意点」で詳しく紹介しています。
家族葬は飲食費や返礼品を抑えやすい
家族葬では参列者を限定するため、一般葬より小さな式場を選びやすく、料理や返礼品の数も少なくできます。
このような人数によって変動する費用を抑えられることが、家族葬の総額が一般葬より低くなりやすい主な理由です。
家族葬という名称だけで料金が安くなるのではなく、参列人数と選ぶ内容によって費用が抑えられます。
参列人数にかかわらず必要な費用がある
遺体の搬送や安置、棺、火葬などは、参列者が10人でも50人でも必要です。
僧侶へ渡すお布施も、参列人数に比例して安くなるものではありません。
祭壇や棺を一般葬と同じ内容にすれば、家族葬でも基本料金が大きく下がらないことがあります。
「人数が半分なら、葬儀費用も半分になる」とは限りません。
家族葬の自己負担はいくらになるのか
家族葬では、参列者からの香典を受け取る場合と、遺族の意向で辞退する場合があります。
香典を辞退する場合、返礼品の準備は減らせますが、葬儀費用は基本的に遺族が負担します。
そのため、家族葬の費用を考える際は、香典を受け取ることを前提にせず、必要な金額を準備しておくことが大切です。
家族葬では香典が少なくなる可能性がある
家族葬では参列者が少ないため、一般葬より受け取る香典の総額も少なくなる傾向があります。
香典を辞退すれば返礼品の準備は減らせますが、葬儀費用に充てられるお金もなくなります。
親族からの香典は一人あたりの金額が比較的大きくなることもあるため、参列者数だけで正確な金額を予測することはできません。
葬儀後の弔問対応にも費用がかかる
家族葬を終えた後で訃報を知った人が、自宅へ弔問に訪れることがあります。
香典や供物を受け取れば、返礼品や礼状を用意する必要があります。
個別の対応が長期間続くと、一般葬で一度に対応する場合より、遺族の時間的な負担が大きくなることもあります。
故人の交友関係が広い場合は、葬儀後の対応も見込んで葬儀形式を決めましょう。
家族葬の見積書で確認すること
見積書を確認するときは、合計金額だけを見るのではなく、含まれる項目と追加料金が発生する条件を確認します。
基本プランに含まれる項目を確認する
棺、骨壺、祭壇、遺影、搬送、安置、ドライアイス、式場、火葬、霊柩車、スタッフなどが含まれているか、一つずつ確認します。
「葬儀一式」とまとめて記載されている場合は、詳しい内訳を出してもらいましょう。
数量や利用日数、搬送距離などの上限も確認が必要です。
追加料金が発生する条件を確認する
火葬までの日数が延びた場合、参列者が増えた場合、搬送距離を超えた場合など、どのような条件で追加料金が発生するのかを聞きます。
祭壇や棺を変更した場合の差額も確認しましょう。
「状況により追加」とだけ記載されている項目は、想定される金額や計算方法まで説明してもらうことが大切です。
お布施を含む総額を考える
葬儀社の見積書には、僧侶へ渡すお布施が含まれていないことが一般的です。
葬儀社へ支払う金額だけで予算を決めると、実際に必要な総額との差が生じます。
お布施、お車代、御膳料、遠方から来る親族の交通費や宿泊費なども含めて資金を準備しましょう。
家族葬の費用を抑える方法
必要な儀式や家族の希望まで削るのではなく、不要な追加料金を避けることが重要です。
事前に複数社へ相談する
2026年の全国調査では、葬儀社を自分で決めた人の87.1%が、他社との比較をせずに葬儀社を決めていました。
家族が亡くなった直後は、複数社を比較する時間も精神的な余裕も限られます。
可能であれば生前に複数の葬儀社へ相談し、同じ条件で見積もりを依頼しましょう。
価格だけでなく、連絡時の対応、式場の場所、安置施設、追加料金の説明も比較します。
公営斎場や公営火葬場を検討する
自治体が運営する斎場や火葬場は、住民向けの料金が設定されていることがあります。
式場と火葬場が同じ敷地にあれば、移動用の車両費を抑えられる場合もあります。
ただし、希望する日程に予約できるとは限らないため、待機日数が長くなった場合の安置費用も含めて比較しましょう。
参列人数をできるだけ正確に伝える
人数が曖昧なまま契約すると、会場の変更や料理・返礼品の追加が必要になることがあります。
呼ぶ人の範囲を家族で話し合い、想定される人数を葬儀社へ伝えます。
少し多めの人数で見積もりを作ってもらい、人数が減った場合に料金を変更できるか確認する方法もあります。
親戚をどこまで呼ぶか迷う場合は「家族葬で親戚を呼ばないとどうなる?呼ぶ範囲とトラブルを防ぐ伝え方」も参考にしてください。
不要なオプションを整理する
祭壇の装飾、棺の変更、湯灌、会葬礼状、車両、供花などは、希望によって追加できる一方、必ずしもすべての家庭に必要とは限りません。
標準プランの内容を確認し、故人や家族にとって必要なものを選びます。
単に安くすることを優先するのではなく、残したい内容と省略できる内容を家族で分けておきましょう。
葬祭費や埋葬料を申請する
故人が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、葬儀を行った人へ葬祭費が支給されることがあります。
会社員などが加入する健康保険では、埋葬料または埋葬費が支給される制度があります。
支給額、申請期限、必要書類は加入していた制度や自治体によって異なります。
自動的に振り込まれるものではないため、故人が加入していた健康保険へ確認して申請しましょう。
家族葬の費用を準備するときの注意点
自分の葬儀を家族葬にしてほしい場合は、希望する内容と費用の準備を家族へ伝えておく必要があります。
預貯金はすぐに引き出せない場合がある
金融機関が口座名義人の死亡を知ると、口座が凍結され、通常どおりには引き出せなくなることがあります。
遺産分割前でも一定の範囲で相続預金の払い戻しを受けられる制度はありますが、戸籍謄本などの書類が必要です。
葬儀直後の支払いに間に合わない可能性もあるため、支払い方法や費用の準備について家族で話し合っておきましょう。
生前契約は契約内容を確認する
葬儀社と生前契約を結ぶ場合は、契約金額だけでなく、含まれるサービス、追加料金、解約条件などを確認します。
契約から実際の葬儀まで長い期間が空くこともあります。
希望する内容や連絡先に変更がないか定期的に見直し、契約書の保管場所を家族へ伝えておきましょう。
まとめ
2026年に発表された全国調査では、家族葬にかかった費用の中央値は96.39万円でした。
ただし、実際の費用は、地域、参列人数、式場、安置日数、祭壇、料理、返礼品などによって変わります。
家族葬は参列者が少ないため、飲食費や返礼品を抑えやすい一方、搬送、安置、棺、火葬など、人数にかかわらず必要な費用があります。
香典も少なくなる可能性があるため、家族葬が必ず一般葬より安くなるとは限りません。
広告や基本プランの金額だけで判断せず、含まれる項目と追加料金が発生する条件を確認することが大切です。
可能であれば事前に複数の葬儀社から見積もりを取り、同じ条件で内容と総額を比較しましょう。
家族葬を選ぶときは、費用だけでなく、誰に参列してもらい、どのように故人を見送りたいのかを家族で話し合うことが重要です。



