はじめに
葬儀社の広告や案内で「家族葬○万円から」「直葬○万円から」と書かれていても、実際の支払総額が表示金額と同じになるとは限りません。
葬儀プランには、棺や祭壇、葬儀スタッフなどの基本的なサービスが含まれています。しかし、遺体の安置日数、搬送距離、式場や火葬場、参列者数、料理、返礼品などは、葬儀の条件によって変わります。
当初の予定より火葬日が遅くなったり、参列者が増えたり、棺や祭壇を変更したりすれば、その分の費用が追加されることがあります。
追加料金が発生すること自体が、直ちに不適切というわけではありません。葬儀の内容や利用日数が変われば、必要な費用が変わるのは自然なことです。
問題になるのは、表示されたプランに何が含まれているか分からないまま契約し、葬儀後になって予想していなかった費用を請求されることです。
この記事では、葬儀で追加料金が発生しやすい項目、見積書の確認方法、契約後に葬儀内容を変更するときの注意点について説明します。
葬儀費用全体の相場や内訳、一般葬・家族葬・一日葬・直葬の費用差については、葬儀費用の相場はいくら?内訳と葬儀形式別の費用で詳しく説明しています。
葬儀の追加料金とは
葬儀の追加料金とは、最初に提示された基本プランや当初の見積額には含まれておらず、利用条件や内容の変更によって後から加わる費用です。
葬儀社が提示する基本プランには、葬儀に必要なものが一定の範囲でまとめられています。
しかし、葬儀を行う場所、安置期間、参列者数などは家族によって異なります。そのため、すべての葬儀を一律の料金だけで行うことは難しく、個別の条件に応じて費用が変わります。
たとえば、基本プランに寝台車での搬送が含まれていても、距離や回数に上限が設けられていることがあります。安置料やドライアイス代についても、含まれる日数が決まっている場合があります。
追加料金には、大きく分けて次の2種類があります。
葬儀の条件によって必要になる追加料金
火葬までの日数や搬送距離、参列者数などによって増える費用です。
家族の希望とは関係なく、火葬場の予約状況などによって必要になることもあります。
家族が内容を変更して発生する追加料金
棺、祭壇、料理、供花などを、基本プランに含まれる内容から変更した場合に発生する費用です。
変更前後の差額を理解して家族が選んだのであれば、必要な追加費用と考えられます。
この2種類を分けて考えると、避けられない費用と、家族の判断で調整できる費用が分かりやすくなります。
基本プランに含まれるものを確認する
葬儀社によって、基本プランに含まれるものは異なります。
同じ「家族葬プラン」でも、棺、骨壺、祭壇、遺影写真、搬送、安置、式場使用料などが、すべて同じ条件で含まれているわけではありません。
基本プランに含まれることが多いものには、次のようなものがあります。
・棺
・骨壺
・遺影写真
・祭壇や祭壇周辺の装飾
・納棺用品
・葬儀スタッフ
・受付用品
・役所手続きの代行
・寝台車や霊柩車
・安置に必要な用品
ただし、「含まれている」というだけでは十分ではありません。
寝台車は何回までか、搬送距離は何キロまでか、安置は何日分か、ドライアイスは何回分かなど、数量や利用条件まで確認する必要があります。
棺や骨壺についても、プラン内で選べる種類が決まっていることがあります。
葬儀社からパンフレットや見積書を受け取ったら、商品名や項目名だけでなく、次の点を確認しましょう。
・数量
・利用できる日数
・対応する距離
・利用できる時間帯
・選べる商品の種類
・上限を超えた場合の料金
「一式」とだけ書かれている項目は、具体的な内容を説明してもらうことが大切です。
搬送距離や回数による追加料金
病院や介護施設などで亡くなった場合は、遺体を自宅や葬儀社の安置施設へ搬送します。
その後、安置場所から葬儀式場、葬儀式場から火葬場へ移動することもあります。
葬儀プランに搬送費が含まれていても、次の条件によって追加料金が発生することがあります。
・基本プランの距離を超えた
・搬送回数が増えた
・高速道路を利用した
・有料道路を利用した
・深夜や早朝に搬送した
・遠方から遺体を搬送した
・特殊な車両や対応が必要になった
搬送費を確認するときは、「寝台車込み」という説明だけで判断してはいけません。
何キロまで含まれているか、超過した場合はどのように計算されるか、深夜や早朝の加算があるかを確認します。
病院から紹介された葬儀社に遺体の搬送を依頼しても、その葬儀社へ葬儀全体を依頼しなければならないわけではありません。
葬儀社をまだ決めていない場合は、搬送だけを依頼できるか、その後に別の葬儀社へ変更した場合はいくらかかるかも確認しておきましょう。
安置日数が延びた場合の追加料金

亡くなった人は、火葬まで自宅や葬儀社の施設などに安置します。
法律上、原則として死亡後24時間を経過するまでは火葬できません。また、火葬場の予約状況によっては、火葬まで数日待つことがあります。
基本プランに含まれる安置料やドライアイス代には、日数や回数の上限が設定されている場合があります。
たとえば、安置料が2日分まで含まれているプランで、火葬まで5日かかれば、超過した3日分が追加されます。
安置に関係する主な費用は次のとおりです。
・安置施設の使用料
・ドライアイス代
・遺体の保全処置
・面会室や個室の使用料
・付き添い安置のための施設使用料
同じ葬儀社の安置施設でも、面会できない安置室と、家族が面会できる個室では料金が異なる場合があります。
写真や広告の印象だけで判断せず、安置中の面会方法と料金を確認する必要があります。
安置費用については、次の質問を葬儀社へ伝えましょう。
・基本プランには何日分の安置料が含まれていますか
・ドライアイスは何日分または何回分含まれていますか
・火葬日が延びた場合、1日いくら追加されますか
・安置中に面会できますか
・面会には別料金が必要ですか
・自宅安置へ変更できますか
火葬場の予約状況は、家族や葬儀社だけでは決められません。最初の見積もりでは、火葬までの日数が延びた場合の金額も示してもらうと安心です。
式場使用料が別に必要になる場合
葬儀社の基本プランに、式場使用料が含まれているとは限りません。
葬儀社の自社ホールを利用する場合でも、プラン料金とは別に式場使用料が設定されていることがあります。
式場に関係する費用としては、次のものが考えられます。
・葬儀式場の使用料
・親族控室の使用料
・宗教者控室の使用料
・霊安室の使用料
・夜間の付き添いに必要な費用
・延長使用料
・清掃費
・駐車場代
一日葬は通夜を行いませんが、葬儀の準備のために前日から式場を使用することがあります。
そのため、通夜を行わないからといって、式場使用料が必ず半額になるわけではありません。
公営式場は住民向けの料金が設定されていることがありますが、利用条件や予約方法は施設によって異なります。
公営式場を利用する場合は、葬儀社へ支払う費用とは別に、施設へ直接支払うのかも確認しましょう。
火葬料金がプランに含まれていない場合
火葬料金は、葬儀社へ支払う基本プランとは別になっていることがあります。
火葬場は自治体や民間事業者が運営しており、葬儀社とは別の施設だからです。
火葬に関連して必要になる可能性がある費用には、次のものがあります。
・火葬料金
・待合室や休憩室の使用料
・火葬場で使用する骨壺
・火葬場までの霊柩車
・親族が移動するための車両
・火葬場での飲食
公営火葬場では、その自治体の住民と住民以外で料金が異なる場合があります。
見積書では、火葬料金が含まれているかだけでなく、どの火葬場を利用する予定なのか、住民料金が適用されるのかを確認しましょう。
骨壺は葬儀社の基本プランに含まれる場合と、火葬場などで別に用意する場合があるため、二重に計上されていないかも確認しましょう。
火葬場がまだ決まっていない段階では、候補となる火葬場ごとの料金を示してもらう方法もあります。
料理と飲み物の追加料金

通夜振る舞いや精進落としなどの料理は、参列者や親族の人数によって費用が変わります。
最初の見積もりでは予定人数をもとに計算しますが、実際の人数が増えれば、その分の料理や飲み物を追加します。
飲食に関係する費用として確認したいのは、次の項目です。
・料理1人分の単価
・飲み物代
・配膳料
・サービス料
・子ども用料理
・持ち帰り用の弁当
・料理の追加期限
・キャンセル期限
・持ち込み料
人数を少なく見積もりすぎると料理が不足し、多く見積もりすぎると余分な費用がかかります。
一般葬のように参列者数が読みづらい葬儀では、何人分まで当日に追加できるかを確認しておきましょう。
家族葬でも、参列者とは別に、僧侶の食事や持ち帰り用の弁当を用意する場合があります。
親族や参列者だけでなく、僧侶の分を含めて何人分が必要なのかを確認し、葬儀社の見積もりに計上された人数と照合することが大切です。
返礼品の追加料金
葬儀では、参列者へ渡す会葬御礼や、香典を受け取った人へ渡す香典返しを用意します。
返礼品は、実際に使用した数で精算する場合と、事前に注文した数を買い取る場合があります。
確認したいポイントは次のとおりです。
・返礼品1個の価格
・使用した分だけ精算できるか
・未使用分を返品できるか
・返品期限
・追加注文の方法
・配送料
・後返しの手配料
・高額な香典に対する追加返礼の費用
参列者数が確定していない段階で、多数の返礼品を買い取る契約にすると、未使用分が残る可能性があります。
使用分だけ精算できるか、余った品を返品できるかを契約前に確認しましょう。
また、葬儀当日に一定額の香典返しを渡しても、高額な香典を受け取った場合は、後日追加の品物を送ることがあります。
葬儀当日の見積額だけでなく、葬儀後の返礼費用も考えておく必要があります。
棺や祭壇などを変更した場合の差額

葬儀プランには、標準的な棺、骨壺、祭壇などが含まれていることがあります。
打ち合わせでは、標準品以外の商品を紹介されることもあります。
たとえば、次の内容を変更すると差額が発生する可能性があります。
・棺の素材や装飾
・骨壺の種類
・祭壇の大きさや花の量
・遺影写真の額や加工
・仏衣や納棺用品
・供花
・湯灌(ゆかん)
・納棺師による納棺
・化粧や身支度
・思い出の品を飾るコーナー
・看板や案内表示
標準品から変更するときは、商品全体の価格ではなく、基本プランとの差額を確認しましょう。
たとえば、標準の棺から別の棺へ変更する場合は、標準の棺はいくらとして計算されているか、変更後の棺はいくらか、実際に追加される差額はいくらかの3点を確認します。
家族が内容と差額を確認し、納得して選んだ追加であれば、説明のない想定外の請求とは分けて考えられます。
その場の雰囲気だけで決めず、変更によって総額がいくらになるかを見積書へ反映してもらいましょう。
葬儀スタッフや車両の追加料金
参列者数や式場の規模によっては、葬儀スタッフや車両を追加することがあります。
次のような場合です。
・受付や案内を行うスタッフを増やした
・警備員や駐車場係が必要になった
・マイクロバスを手配した
・ハイヤーやタクシーを手配した
・霊柩車の種類を変更した
・想定より葬儀時間が延びた
基本プランに含まれるスタッフ数と対応できる参列者数を確認しましょう。
参列者が増えた場合に、追加スタッフが何人必要になり、いくら加算されるのかを聞いておくと安心です。
車両についても、基本プランに含まれるのが霊柩車だけなのか、家族の移動用車両まで含まれるのかを確認します。
宗教者への費用は葬儀社の見積もりと分けて考える
仏式の葬儀では、僧侶へ読経を依頼し、お布施を渡します。
お布施は一般的に、葬儀社へ支払う見積額には含まれていません。
お布施のほかに、お車代や御膳料を渡すことがあります。
ただし、お布施は葬儀社の追加料金というより、宗教者へ直接渡す費用です。
葬儀社の見積書だけを見て「葬儀に必要な総額」と考えると、お布施の準備が抜ける可能性があります。
菩提寺(ぼだいじ)がある場合は、葬儀社から僧侶を紹介してもらう前に菩提寺へ連絡しましょう。
葬儀社から僧侶の紹介を受ける場合は、次の点を確認します。
・読経を行う場面
・戒名の有無
・お布施の金額
・お車代や御膳料
・葬儀社へ支払う紹介関係の費用があるか
・納骨や法要まで依頼できるか
寺院や僧侶によって対応が異なるため、推測せずに確認することが大切です。
葬儀や法要で渡すお布施の相場、包み方、表書き、渡すタイミングについては、お布施とは?金額相場・包み方・渡し方・表書きを詳しく解説をご覧ください。
見積書で確認する項目
葬儀の見積書を受け取ったら、最初に合計金額だけを見るのではなく、費用を次のように分けて確認します。
葬儀社へ支払う費用
棺、祭壇、スタッフ、搬送、安置など、葬儀社が提供する商品やサービスの費用です。
式場や火葬場に支払う費用
式場使用料、火葬料金、待合室使用料などです。
葬儀社を通して支払うのか、施設へ直接支払うのかも確認します。
人数によって変わる費用
料理、飲み物、返礼品などです。
見積もりでは何人分が計算されているかを確認します。
葬儀社以外へ支払う費用
お布施、お車代、御膳料などです。
見積書に含まれていなくても、葬儀全体では必要になることがあります。
これらを分けたうえで、次の内容を葬儀社へ質問しましょう。
・現在の見積額に含まれていない費用は何ですか
・火葬料金と式場使用料は含まれていますか
・搬送は何回、何キロまで含まれていますか
・安置料とドライアイスは何日分ですか
・火葬日が延びた場合、1日いくら追加されますか
・料理と返礼品は何人分ですか
・人数が増えた場合の単価はいくらですか
・棺や祭壇はどの商品が含まれていますか
・内容を変更した場合の差額はいくらですか
・葬儀終了後に追加される可能性がある費用はありますか
質問への回答は口頭だけで済ませず、できるだけ見積書へ記載してもらいましょう。
「一式」と書かれた項目を確認する
見積書に「葬儀用品一式」「設営費一式」「人件費一式」などと書かれている場合があります。
一式という表記自体が問題なのではありません。
ただし、中に含まれているものと含まれていないものが分からなければ、他社の見積もりと比較できません。
一式の項目については、次を確認します。
・具体的に何が含まれているか
・数量はいくつか
・利用できる日数や回数
・商品を変更した場合の差額
・不要なものを外した場合に減額されるか
複数の見積もりを比較する場合は、総額だけでなく、同じ条件で作成されているかを確認します。
片方の見積もりには火葬料や料理が含まれ、もう片方には含まれていなければ、表示された総額だけでは比較できません。
追加料金が発生したらその都度総額を確認する
葬儀の打ち合わせでは、短時間で多くの内容を決めます。
最初の見積もりを受け取った後に、参列者数、料理、祭壇、棺などを変更することもあります。
変更するたびに個別の金額だけを聞いていると、最終的な総額が分からなくなることがあります。
何かを追加または変更したときは、次の3点を確認しましょう。
・変更前の総額
・今回追加される金額
・変更後の総額
できれば変更後の見積書を再発行してもらいます。
見積書の再発行が難しい場合でも、変更内容と追加金額を書面や電子メールなどで残してもらうと確認しやすくなります。
家族のうち一人だけで打ち合わせを行うと、説明を聞きながらすべての金額を確認するのが難しいことがあります。
可能であれば二人以上で参加し、一人が葬儀内容を確認し、もう一人が見積書と金額を確認するとよいでしょう。
追加料金を完全になくすことは難しい
葬儀の追加料金を、すべて事前になくすことは難しい場合があります。
火葬日、参列者数、料理や返礼品の使用数などは、契約時点では確定しないことがあるからです。
重要なのは、最終金額を完全に固定することではなく、金額が変わる条件と計算方法を事前に把握することです。
たとえば、安置日数が確定していなくても、基本プランに2日分を含む、3日目から1日ごとに追加、ドライアイス代は1回ごとに追加という条件が分かっていれば、火葬日が遅れた場合の費用を予測できます。
料理や返礼品も、人数が確定していなくても、1人または1個当たりの単価が分かれば概算できます。
「追加料金なし」という言葉だけで判断するのではなく、どの条件まで表示料金で利用できるかを確認することが大切です。
葬儀社を選ぶ前に確認すること
家族が亡くなった直後は、時間的にも精神的にも余裕がなく、複数の葬儀社を詳しく比較することが難しくなります。
それでも、契約前に最低限確認したいのは次の点です。
・希望する葬儀形式での見込み総額
・基本プランに含まれるもの
・別料金になるもの
・火葬料金と式場使用料
・安置日数が延びた場合の料金
・搬送距離や時間帯による加算
・料理と返礼品の単価
・支払期限と支払方法
・内容の変更やキャンセルに関する条件
広告やウェブサイトの表示価格だけでは、自分たちの葬儀に必要な総額を判断できません。
希望する人数、式場、宗教儀礼などを伝えたうえで、具体的な見積もりを作成してもらいましょう。
生前に葬儀社へ相談できる場合は、同じ条件を伝えて複数社から見積もりを取ると、費用とサービス内容を比較しやすくなります。
ただし、金額が最も安いという理由だけで決めるのではなく、質問への説明が明確か、変更時の料金を示してくれるかも確認する必要があります。
まとめ
葬儀の追加料金は、基本プランに含まれる範囲を超えた場合や、葬儀内容を変更した場合に発生します。
特に追加料金が発生しやすいのは、搬送距離、安置日数、ドライアイス、式場使用料、火葬料金、料理、返礼品、棺や祭壇の変更などです。
追加料金が発生すること自体が問題なのではありません。
大切なのは、基本プランに含まれる内容、追加料金が発生する条件、単価や計算方法を契約前に確認することです。
見積書に「一式」と書かれた項目は、具体的な内容や数量を説明してもらいましょう。
葬儀内容を変更した場合は、追加される金額だけでなく、変更後の総額も確認します。
火葬日や参列者数など、契約時点で確定しないものについては、条件が変わった場合の金額を事前に示してもらうことが重要です。
広告の表示価格だけで判断せず、自分たちが希望する葬儀の条件を伝え、必要な費用を含めた見積もりを確認しましょう。



