はじめに
「大好きなハワイで最後は眠りたい」「日本のお墓を子どもに継がせるより、ハワイに自分のお墓を用意したい」と考える人もいるでしょう。
ハワイには日本人でも購入できる墓地や納骨堂があり、日本に住んだまま生前契約できる施設もあります。芝生の墓地や納骨堂だけでなく、遺灰を庭園へ散骨して名前を残す方法など、供養方法もさまざまです。
一方で、ハワイにお墓を持つ場合は、購入費用だけを見て決めるべきではありません。本人が亡くなった後、日本から誰が遺骨を運ぶのか、日本にある先祖代々のお墓をどうするのか、家族がお墓参りを続けられるのかといった問題もあります。
この記事では、日本人がハワイにお墓を持つ方法やお墓・納骨堂の種類、費用、日本から遺骨を運ぶ方法、墓じまいや分骨との関係まで詳しく解説します。
ハワイのお墓は日本人でも購入できる
日本に住んでいる日本人でも、外国人への販売を行っているハワイの民間霊園でお墓や納骨スペースを購入できます。
ただし、ハワイにあるすべての墓地を誰でも購入できるわけではありません。宗教団体の墓地や退役軍人墓地など、それぞれ利用条件が設定されている墓地もあるため、購入を検討するときは霊園ごとの条件を確認する必要があります。
日本に住んだまま購入できる霊園もある
ハワイのお墓を購入するために、必ずハワイへ移住する必要があるわけではありません。
たとえばオアフ島カネオヘにある「バレー・オブ・ザ・テンプルズ・メモリアルパーク」では、国籍、居住地、宗教を問わず購入できると案内しています。
ビザや永住権、ハワイの不動産を所有していることも購入条件にはなっていません。
購入時に必要な本人確認書類についても、パスポートや運転免許証などで手続きできるとされています。
現地へ行かず契約できる場合もある
「ハワイのお墓を買うなら、一度現地まで行かなければならない」と思うかもしれませんが、現在ではオンラインで見学や契約ができる霊園もあります。
バレー・オブ・ザ・テンプルズでは、現地見学のほか、自宅からビデオ通話を使ったオンライン霊園見学を行っています。
契約や支払いもオンラインで進められ、契約書は電子署名に対応しています。
ただし、写真や映像だけでは、墓地の広さ、周辺環境、移動距離などが分かりにくいこともあります。可能であれば旅行の機会などに現地を訪れ、自分や家族が納得できる場所か確認してから契約する方が安心です。
ハワイにはどんなお墓があるのか
日本では「お墓」と聞くと、石塔を建てた一般墓を思い浮かべる人が多いでしょう。
ハワイでは日本と異なる墓地文化があり、芝生墓地、納骨堂、火葬した遺骨を埋葬する区画、ガーデン散骨、海洋散骨などさまざまな選択肢があります。

芝生墓地
ハワイでよく見られるのが、芝生が広がる墓地に墓標を設置するスタイルです。
日本の一般墓のように大きな石塔を建てるのではなく、芝生とほぼ同じ高さにプレート状の墓標を置くタイプや、小型の墓石を設置するタイプがあります。
広々とした公園のような景観になるため、日本の墓地とは印象が大きく異なります。
納骨堂・コロンバリウム
火葬した遺骨を納める施設として「コロンバリウム(columbarium)」があります。
コロンバリウムは、骨壺を納めるための区画が集まった施設で、日本でいう納骨堂に近いものです。
屋内型だけでなく屋外型もあり、扉のある区画やガラス面から骨壺や写真などが見える区画もあります。
バレー・オブ・ザ・テンプルズでは屋内・屋外、ガラス扉など複数のコロンバリウムを用意しており、平等院内にはガラス張りの納骨堂もあります。

日本の納骨堂について、種類や費用、一般墓との違いを詳しく知りたい方は、納骨堂とは?費用・種類・メリットとデメリット、後悔しない選び方も参考にしてください。
火葬した遺骨を土中に納める方法
火葬した遺骨を骨壺のまま、または霊園が定める方法で墓地へ埋葬する選択肢もあります。
日本では火葬後の遺骨を墓石の下にある納骨室へ納める方法が一般的ですが、ハワイでは火葬した遺骨専用の墓地や庭園型の区画などもあります。
同じ「火葬後の納骨」でも、日本とハワイでは墓地の形や納め方が異なるため、契約前に具体的な方法を確認しておきましょう。
ガーデン散骨
墓石や納骨堂を持たず、霊園内の専用ガーデンへ遺灰を散骨する方法もあります。
海洋散骨とは違い、霊園として管理されている場所に散骨するため、家族が後から訪れて故人を偲ぶ場所を持てることが特徴です。
バレー・オブ・ザ・テンプルズでは、平等院裏手の散骨ガーデンへ遺灰を散骨し、ネームプレートを設置するプランも案内されています。
海洋散骨
ハワイ沖での遺灰の海洋散骨は米国の制度上可能ですが、米国環境保護庁(EPA)は、火葬した遺骨について陸地から少なくとも3海里離れた海域で行うことを定めています。
また、実施後30日以内にEPAへの報告も必要です。
日本人に知られているハワイの霊園
ハワイには数多くの墓地がありますが、日本から購入する場合は、日本語で相談できるか、外国人でも契約できるか、遺骨を日本から持ち込めるかという点が重要です。
バレー・オブ・ザ・テンプルズ・メモリアルパーク
日本人にも知られている霊園の一つが、オアフ島カネオヘにあるバレー・オブ・ザ・テンプルズ・メモリアルパークです。
コオラウ山脈の麓に広がる霊園で、園内には京都府宇治市の平等院鳳凰堂を模した平等院テンプルがあります。
現在、20種類以上のお墓・納骨堂を扱っており、芝生墓地、納骨堂、火葬した遺骨の埋葬区画、ガーデン散骨などから選択できます。
日本語窓口が用意されていることや、日本からオンラインで見学・契約できることも、日本在住者にとって利用しやすい点です。
ただし、この記事でこの霊園を紹介しているのは一例です。ハワイのお墓を選ぶ際には、一つの霊園だけで決めず、立地、費用、管理方法、契約条件などを比較することが大切です。
ハワイのお墓にはいくらかかるのか
ハワイのお墓には「一律○万円」という相場はありません。
墓地の場所、区画、眺望、墓石、納骨人数、納骨堂の種類などによって価格が大きく変わります。
また、日本から購入する場合は為替の影響も無視できません。

数千ドルから高額な墓地まで幅がある
具体的な金額が現在公開されている例として、バレー・オブ・ザ・テンプルズでは、平等院裏手のガーデン散骨とネームプレートを合わせたプランを2,972.64ドルと案内しています。
一方、芝生墓地や納骨堂などは場所や仕様によって価格が異なり、同霊園では20種類以上を取り扱っています。
価格にはダイナミックプライシングが採用され、予告なく変更される場合があるため、最新価格は契約前の確認が必要です。
為替によって日本円の負担が変わる
ハワイのお墓を購入するときに見落としやすいのが為替です。
たとえば3,000ドルの商品を購入すると仮定すると、1ドル140円なら約42万円、1ドル150円なら約45万円、1ドル160円なら約48万円です。
同じ3,000ドルでも為替が20円変われば、日本円では約6万円の差になります。1万ドルなら約20万円の差になるため、高額なお墓ほど為替変動の影響が大きくなります。
モデルケースで考える
たとえば「夫婦のうち一人の遺灰をハワイのガーデンへ散骨し、名前を残したい」というケースを考えてみましょう。
公開されている2,972.64ドルのガーデン散骨プランを利用し、仮に1ドル150円で計算すると約44万6,000円です。
ただし実際には、このほかに日本からハワイへの航空運賃、宿泊費、現地での移動費、必要に応じた遺骨の準備費用などがかかります。
また、お墓や納骨堂を選択すれば金額は変わります。
ハワイのお墓の費用を考えるときは墓地代だけを見るのではなく、「契約から実際の納骨までに家族が負担する総額」で考えることが重要です。
※掲載している金額は2026年8月時点で確認できる公開情報をもとにした一例です。
価格、為替、サービス内容は変更されるため、契約時には必ず霊園へ最新情報を確認してください。
ハワイのお墓は年間管理費がかからないのか
日本ではお墓を購入すると、寺院や霊園へ毎年管理費を支払うケースが一般的です。
これに対してハワイには、購入時の費用に将来の管理費を含め、その後の年間管理費を必要としない「永久管理」の墓地があります。
永久管理の墓地では墓守を必要としない
バレー・オブ・ザ・テンプルズでは、初期費用に永久管理費が含まれており、購入後の年間管理費はかからないと案内しています。
霊園がお墓や納骨堂、園内を維持するため、後継者や墓守を必要としない仕組みです。
ハワイ州には永久管理墓地のための制度があり、対象となる墓地事業者には永久管理基金を設け、その基金を墓地の継続的な管理に利用する仕組みが定められています。
日本の永代供養とは同じではない
「管理してくれるなら、日本の永代供養と同じでは?」と思うかもしれません。
しかし、永久管理と日本の永代供養は同じ仕組みではありません。
日本の永代供養墓では、一定期間は個別に遺骨を安置し、その後ほかの人の遺骨と一緒に合祀(ごうし)する方式が多くあります。
一方、永久管理型の墓地は、墓地や区画を継続して管理することに重点があります。
バレー・オブ・ザ・テンプルズでは、埋葬権利は無期限で、墓じまいや合祀を必要としないと案内しています。
したがって「永代供養だから将来安心」「永久管理だから何も考えなくてよい」と言葉だけで判断せず、遺骨が将来どのように扱われるのかを契約書で確認することが大切です。
日本の永代供養では、一定期間後に合祀されるものなどさまざまな仕組みがあります。詳しくは永代供養とは?費用や種類、メリット・デメリットを解説を参考にしてください。
日本からハワイへ遺骨を持って行けるのか
日本で火葬した遺骨をハワイのお墓や納骨堂へ納める場合、最も気になるのが「遺骨を飛行機で運べるのか」という問題でしょう。
結論として、一定の条件を満たせば日本からハワイへ火葬後の遺骨を持って行くことは可能です。
ただし、利用する航空会社、空港の保安検査、受け入れる霊園それぞれの条件を事前に確認しておく必要があります。
遺骨を機内へ持ち込める航空会社もある
航空会社によって規定は異なりますが、遺骨・遺灰を機内へ持ち込める航空会社があります。
たとえばJALは国際線について、遺骨・遺灰を安定した容器に納め、風呂敷や袋などで包んだ状態で機内へ持ち込めると案内しています。
一方、米国の空港で保安検査を担当するTSAは、遺灰の容器がX線検査で内容を確認できる材質であることを求めています。
また、航空会社によっては預け入れ荷物として遺灰を受け付けない場合があるため、事前に航空会社へ確認するよう案内しています。
そのため、重い石材や金属など保安検査で中身を確認しにくい骨壺は避け、航空輸送に適した容器について葬儀社や航空会社へ確認すると安心です。
書類を事前に準備する
遺骨だけを骨壺に入れて持って行けばよいわけではありません。
受け入れる霊園から求められる書類も確認する必要があります。
「バレー・オブ・ザ・テンプルズ」では、日本から遺灰を持ち込む際に、埋葬許可書や死亡証明書、霊園が発行する埋葬権利書などを用意するよう案内しています。
必要書類は利用する霊園や航空会社、遺骨の状況によって異なる可能性があります。
実際に渡航する前に、「航空会社」「受け入れ先の霊園」の双方へ必要書類を確認しておきましょう。
日本のお墓からハワイへ遺骨を移せるのか
すでに日本のお墓へ納骨されている遺骨を取り出し、ハワイのお墓へ移したいと考える人もいるでしょう。
この場合は、火葬直後の遺骨をハワイへ持って行く場合とは異なり、現在のお墓から遺骨を取り出すための手続きも必要になります。
日本のお墓を墓じまいしてハワイへ移す
先祖代々のお墓そのものを今後維持しない場合は、墓石を撤去して墓地を返還する「墓じまい」を行う方法があります。
墓じまいでは、遺骨の行き先を先に決め、墓地管理者や石材店などと調整しながら進めます。
海外へ遺骨を移す場合は国内の墓地間で行う通常の改葬とは手続きの扱いが異なる場合があるため、現在のお墓がある市区町村と受け入れ先の霊園の双方へ事前に確認することが重要です。
具体的な流れや費用は墓じまいとは?費用・手続き・流れと後悔しないための注意点で詳しく解説しています。
日本国内で遺骨を別のお墓や納骨堂へ移す場合の手続きについては、改葬とは?必要な手続き・書類・費用とお墓を移す流れを参考にしてください。
日本のお墓とハワイに分けて納めることもできる
すべての遺骨をハワイへ移さなければならないわけではありません。
一部の遺骨を日本のお墓へ残し、一部をハワイへ納める「分骨」という方法もあります。
たとえば「先祖代々のお墓は日本に残すが、自分の遺骨の一部だけハワイへ」「夫婦でハワイを愛していたので、一部をハワイへ納め、残りは子どもが参りやすい日本のお墓へ」という選択も可能です。
分骨する場合は、どの段階で遺骨を分けるかによって必要な証明書や手続きが異なります。
必要な証明書や分けるタイミングについては、分骨とは?方法・手続き・費用と後悔しないための注意点で詳しく解説しています。
ハワイにお墓を持つメリット
ハワイのお墓は、日本のお墓にはない魅力があります。
ただし「ハワイだから良い」というものではなく、自分の希望と家族の事情に合っているかを考えることが大切です。
好きな場所を自分の永眠の地にできる
何度も旅行した思い出の場所、結婚式を挙げた場所、長期間暮らした場所など、ハワイに特別な思いを持つ人は少なくありません。
生前から「最後はハワイで眠りたい」という希望が明確なら、自分自身で場所を選んで準備できることは大きなメリットです。
墓守を必要としない選択肢がある
永久管理型の墓地を選べば、子どもや孫が定期的に草取りや墓石の清掃をする必要はありません。
年間管理費が不要な契約であれば、毎年管理料を支払い続ける負担も抑えられます。
「子どもにお墓を継がせたくない」という人にとっては、一つの選択肢になります。
宗教や家制度にとらわれにくい
国籍や宗教を問わず購入できる霊園であれば、特定の宗派の檀家になる必要はありません。
家単位で代々継承するお墓ではなく、自分自身や夫婦、パートナーなどを単位として墓所を選びやすいことも特徴です。
ハワイにお墓を持つデメリット
ハワイで眠ることに憧れがあっても、残された家族の立場から考えると問題が生じる可能性があります。
特に重要なのは、「墓地の管理」と「家族の負担」は別だということです。
家族がお墓参りしにくい
日本からハワイへお墓参りに行くには、航空券、宿泊費、現地交通費がかかります。
高齢になれば長時間の飛行機移動そのものが難しくなる可能性もあります。
日本のお墓なら日帰りで参れる家族でも、ハワイでは数日間の日程が必要になるでしょう。
遺骨を運ぶ家族に負担がかかる
本人が生前にハワイのお墓を購入していても、亡くなった後に自分で遺骨を運ぶことはできません。
実際に航空会社へ確認し、書類を準備し、遺骨を持ってハワイへ渡るのは家族など残された人です。
お墓の維持管理が不要でも、納骨までの負担がなくなるわけではありません。
為替の影響を受ける
契約価格が米ドルで設定されている場合、円安になれば日本円での購入価格が高くなります。
納骨時の航空券や現地費用についても、為替の影響を受けます。
契約時だけでなく、将来家族がハワイへ行く費用まで考えておく必要があります。
ハワイのお墓を生前購入するときの注意点
ハワイのお墓は本人が気に入っただけで決めず、亡くなった後のことまで具体的に決めておくことが重要です。
誰が遺骨をハワイへ運ぶのか決めておく
最も重要なのが、実際に遺骨を運んでくれる人です。
配偶者、子ども、兄弟姉妹などに「自分はハワイのお墓を買ったから、亡くなったらよろしく」と伝えるだけでは不十分です。
本人が亡くなった後、誰が霊園へ連絡し、誰が書類を集め、誰がハワイまで遺骨を運ぶのかを家族と話し合っておきましょう。
契約内容を家族に伝えておく
海外のお墓では、家族が契約の存在そのものを知らなければ手続きを進められません。
霊園名、所在地、契約した区画、契約書や埋葬権利書の保管場所、連絡先、支払い状況などをまとめておきましょう。
エンディングノートなどへ記録しておく方法もあります。
費用に何が含まれているか確認する
「お墓代○ドル」という金額だけで判断してはいけません。
墓地の使用権、墓標や墓石、文字彫刻、永久管理費、納骨作業、将来の埋葬式など、どこまで価格に含まれているのか確認しましょう。
「永久管理」と書かれていても、追加サービスまですべて無料になるとは限りません。
契約時には料金の内訳と、将来発生する可能性のある費用を書面で確認することが大切です。
日本のお墓をどうするかも決めておく
すでに先祖代々のお墓がある場合、自分だけハワイのお墓を買っても日本のお墓の問題は残ります。
そのまま子どもに継承してもらうのか、将来墓じまいするのか、一部だけ分骨するのかを考えておきましょう。
お墓には一般墓、永代供養墓、納骨堂、樹木葬などさまざまな選択肢があります。ハワイのお墓もその一つとして比較して考えることが大切です。
ハワイのお墓だけでなく、一般墓・永代供養墓・納骨堂・樹木葬なども含めて比較したい方は、お墓とは?種類・費用・選び方、納骨から墓じまいまでわかる基礎知識をご覧ください。
ハワイで眠りたいなら家族と生前に話しておく
ハワイのお墓は、日本に住んでいる人でも購入でき、生前に自分で永眠する場所を選べる選択肢の一つです。
芝生墓地や納骨堂、ガーデン散骨など、日本とは異なる供養方法があり、永久管理型の墓地なら後継者や墓守を必要としない場合もあります。
一方、「墓守がいらない」ということと、「家族に負担をかけない」ということは同じではありません。
亡くなった後には遺骨をハワイへ運び、必要な書類を準備し、現地で納骨を行う人が必要です。家族がお墓参りをする場合にも、時間と費用がかかります。
そのため、ハワイのお墓を生前購入するなら、「ハワイで眠りたい」という本人の希望だけで決めるのではなく、家族にもその理由を伝えておきましょう。
どこの霊園を契約したのか、誰に遺骨を運んでもらうのか、日本のお墓はどうするのか、契約書や権利書をどこに保管しているのかまで共有しておくことが重要です。
本人にとって憧れの場所であり、残された家族にとっても納得できる場所であること。それが、後悔しないハワイのお墓選びにつながります。



