終活のお金の管理は、「老後に一律いくら必要か」を探すより、自分の収入・支出・資産を見える形にすることから始まります。
財産を増やす話と、家族が困らず手続きできるようにする話を分けると、必要な作業がはっきりします。
まずは一覧を作り、無理のない範囲で更新していきましょう。
手順1 財産と負債を同じ一覧にまとめる
預貯金だけでなく、契約先や保管場所が分かる情報を残します。
金額は確認日とセットで記録し、評価額が変動する資産はそのことも書いておきます。
- 預貯金:金融機関・支店・口座の種類・残高確認日
- 証券:証券会社・保有商品・評価額と確認日
- 保険:保険会社・証券番号・保障内容・受取人
- 不動産:所在地・名義・権利関係・関連書類の保管場所
- 借入れ:住宅ローン・カードローンなどの残高、返済日、連絡先
- 保証:他人の借入れなどの保証人になっている場合の契約内容
- デジタル契約:ネット銀行、定期購入、有料サービスなどの契約先
解約返戻金(かいやくへんれいきん)と死亡保険金を、同時に使える資産として二重に数えないようにします。
不動産や有価証券も、評価額どおりにすぐ現金化できるとは限りません。
手順2 年金は自分の加入記録で確認する
年金額は加入期間や報酬、受給開始時期などにより異なります。
「共働き夫婦なら月いくら」「自営業なら必ずいくら」という固定額を家計の前提にするのは避けましょう。
日本年金機構の「ねんきんネット」では、自分の年金記録を確認し、条件を変えて年金見込額を試算できます。
年金定期便や年金相談も活用し、夫婦それぞれの見込額を確認します。
税金や社会保険料などを考慮し、生活に使える手取り額を見積もることが大切です。
手順3 毎月の不足と臨時支出を分けて計算する
毎月の収支を確認する
直近の家計から、食費、住居費、光熱費、通信費、交通費、保険料などを書き出します。
退職後に減る支出と増える支出を分け、固定費だけでなく交際費や趣味の費用も残しましょう。
仮に毎月の支出が25万円、手取り収入が22万円なら、月の不足は3万円、1年間で36万円です。
同じ不足が20年間続く単純計算では720万円になります。
これは説明用の仮定であり、物価変動や運用損益、臨時支出を含む必要資金額ではありません。
一度にかかるお金を別枠で用意する
- 住宅の修繕、家電の買替え、引越し
- 医療・介護で公的制度の対象外となる支出
- 葬儀、納骨、遺品整理など希望する内容に応じた費用
- 予期しない支出に対応する生活予備費
「老後は最低2,000万円必要」と一律に結論づけることはできません。
収入や住まい、生活期間によって必要額は変わるため、複数の条件で試算し、毎年見直します。
手順4 使っていない口座や契約を確認する
管理する口座を減らすと把握しやすくなりますが、すべてを急いで一つの金融機関に集める必要はありません。
公共料金や年金の入出金先、預金保険制度の保護範囲、家族が手続きする際の負担を確認して整理します。
長期間取引のない預金が休眠預金となっても、直ちに自分のお金を受け取れなくなるわけではありません。
金融庁は、休眠預金等活用制度の対象となった後も取引金融機関で払戻しを受けられると案内しています。
必要書類や所要日数は金融機関に確認してください。
手順5 家族が探せる情報を残す
エンディングノートには、資産一覧、契約先、書類の保管場所、連絡してほしい専門家などを記録します。
共有用のノートに暗証番号やパスワードを平文でまとめることは避け、認証情報は安全な方法で管理します。
家族が情報を知っていても、本人名義の口座を自由に操作できるわけではありません。
判断能力の低下への備えや相続手続きは、金融機関や専門家に相談しておきましょう。
財産の分け方を法的に指定したい場合は、エンディングノートとは別に、方式に沿った遺言を検討します。
借金がある場合は相続の期限にも注意する
相続では、預貯金などの財産だけでなく債務も確認する必要があります。
相続放棄(そうぞくほうき)は、借金だけを放棄して財産を受け取る手続きではありません。
相続放棄などを検討する熟慮期間は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月です。
単純に死亡日から必ず3か月と決めつけず、調査に時間がかかる場合の期間伸長も含めて、家庭裁判所や弁護士などへ早めに相談してください。
財産の処分などが判断に影響する場合もあるため、手続きの前に確認しましょう。
年に一度、変わった情報を更新する
- 年金見込額と生活費を更新する
- 借入れ残高、口座、保険契約の変更を反映する
- 家族が一覧の保管場所を把握しているか確認する
- 大きな病気、退職、転居、家族構成の変化があれば見直す
最初から完璧な資料を作る必要はありません。
分かる契約先を一つずつ記録し、「今の暮らしに使うお金」と「将来・引継ぎのためのお金」を整理しましょう。



