はじめに
親のことなら、子どもはよく知っていると思いがちです。
ところが、エンディングノートを一緒に作ってみると、これまで聞いたことがなかった話が次々と出てくることがあります。
・昔から付き合っている友人。
・子どもが知らなかった保険や預貯金。
・介護や医療についての考え。
・葬儀やお墓についての希望。
・そして、家族に対してどのような思いを持っているのか。
長く親子として暮らしていても、改めて聞かなければ知らないことは意外に多いものです。
また、親が亡くなった後にエンディングノートを読むことで、生前には聞けなかった親の気持ちに気づくこともあります。
エンディングノートは、必要な情報を書き残すためだけのものではありません。
親が元気なうちに一緒に作ることで会話が生まれ、親の人生や考えを知るきっかけにもなります。
この記事では、親のエンディングノートを家族で作る意味と、そこから家族が知ることについて考えます。
親のことを子どもは意外と知らない
毎日のように顔を合わせている親子でも、お互いについてすべてを知っているわけではありません。
特に親が高齢になるころには、子ども自身も家庭や仕事を持ち、親とゆっくり昔の話をする機会が減っていることがあります。
例えば、子どもは親が利用している銀行を一つは知っていても、ほかにも口座があることを知らないかもしれません。
生命保険に加入していることは知っていても、どの会社のどのような保険なのかまでは知らないことがあります。
さらに、親が昔どんな仕事をしていたのか、誰と親しく付き合っていたのか、人生で何を大切にしてきたのかとなると、聞いたことがない人もいるでしょう。
親にとっては当たり前のことなので、わざわざ子どもへ話していないこともあります。
エンディングノートを作る作業は、こうした「知っているつもりだった親」について、改めて知る機会になります。
エンディングノートに何を書くのか、遺言書との違いや保管・更新方法など基本から確認したい方は、 エンディングノートとは?何を書く?書き方・遺言書との違いと家族で作るメリット で詳しく解説しています。
父のエンディングノートを一緒に作って初めてわかること
エンディングノートを親に渡して、「書いておいて」と頼む方法もあります。
しかし、家族が一緒に作ると、単に空欄を埋めるだけでは終わりません。
「この人は誰?」
「この保険はまだ入っているの?」
「お墓についてどう考えているの?」
と一つずつ確認することで、そこから会話が広がっていきます。
例えば、友人の名前を書こうとしたことをきっかけに、学生時代や仕事をしていたころの話が始まるかもしれません。
葬儀の希望を聞いたことで、本人がどんな人に見送ってほしいと思っているのかがわかることもあります。
介護や医療について聞けば、普段は話さない本人の考えを初めて知る可能性もあります。
こうしたことは、完成したエンディングノートだけを受け取った場合にはわからないことがあります。
一緒に作る過程そのものに意味があるのです。
エンディングノートから家族が知ること
親のエンディングノートからわかるのは、財産や契約などの事務的な情報だけではありません。
例えば、次のようなことがあります。
・親が大切にしている友人や人間関係
・これまで家族に話していなかった人生の出来事
・介護や医療についての本人の考え
・葬儀やお墓についての希望
・大切にしている物や写真
・家族に伝えておきたい気持ち
どれも、親子だから当然知っているとは限りません。
むしろ「そんなふうに考えていたの?」と初めて気づくことの方があるかもしれません。
エンディングノートは、親の情報を整理するだけでなく、親がどのような人生を歩み、何を大切にしているのかを知る手がかりにもなります。
親が元気なうちに一緒に作る意味
親が元気なうちにエンディングノートを一緒に作る大きなメリットは、その場で本人に聞けることです。
亡くなった後に通帳が見つかっても、その口座を何のために使っていたのか本人には確認できません。
知らない人の名前と電話番号が残っていても、どのような関係だったのかわからないことがあります。
古い写真が大量に残っていても、誰が写っているのかわからなくなります。
一緒にエンディングノートを作っていれば、その場で聞くことができます。
「これは誰?」
「これは残しておきたい?」
「この人には何かあったら知らせてほしい?」
という何気ない質問が、親の人生を聞くきっかけになります。
エンディングノートを完成させることだけを目的にせず、親と話す時間として考えてみてもよいでしょう。

書く作業を手伝うことにも意味がある
高齢になると、長い文章を書くことを負担に感じる人もいます。
細かな文字を読みにくくなったり、書類の項目が多いだけで面倒に感じたりすることもあります。
その場合は、子どもが質問しながら書いても構いません。
「ここはどうする?」
と聞いて、親が答えた内容を子どもが記入します。
わからない項目があれば一緒に書類を確認します。
昔の写真を見ながら、名前や場所を書き加えることもできます。
こうして作業を手伝うことで、親にとっての負担を減らせるだけでなく、親子が一緒に考える時間になります。
ただし、子どもが自分の考えを押しつけないことは大切です。
親のエンディングノートですから、最終的に書く内容や希望を決めるのは親本人です。
親の希望を聞いて驚くこともある
親子でも、葬儀やお墓、介護などについて具体的に話していない家庭は多いでしょう。
子どもは、
「当然、先祖代々のお墓に入るだろう」
「介護が必要になったら家で暮らしたいだろう」
と考えていても、本人はまったく違う希望を持っているかもしれません。
親が元気なうちに話しておけば、その違いに気づくことができます。
希望をすべて実現できるとは限りませんが、少なくとも家族が本人の考えを知っているかどうかは大きな違いです。
もし親が自分で意思を伝えられなくなったときにも、「本人ならどう考えるだろう」と家族が判断する手がかりになります。
母が残したエンディングノートからわかることもある
エンディングノートは、親と一緒に作れる場合ばかりではありません。
親が自分で書いたノートを、亡くなった後に家族が初めて読むこともあります。
そこに書かれているのは、銀行や保険などの情報だけとは限りません。
家族への気持ちや、本人がこれまで言葉にしてこなかった思いが残されていることがあります。
親子やきょうだいは、長い年月を一緒に過ごす中で、すれ違ったり距離ができたりすることもあります。
本人が直接言えなかった気持ちをノートに残していれば、それを読んだ家族が親の本当の思いに初めて気づくことがあります。
それによって、家族同士が相手の立場や気持ちを見直すきっかけになることもあるでしょう。
エンディングノートは、亡くなった後の手続きを助ける資料であると同時に、本人の言葉を家族へ残すものでもあります。
家族へのメッセージは短くてもよい
家族への思いを書こうとすると、「何を書けばいいのかわからない」と感じる人もいます。
立派な文章を書く必要はありません。
「ありがとう」
「みんなで仲良くしてほしい」
「楽しい人生だった」
という短い言葉でも構いません。
普段は照れくさくて口にできないことほど、文字なら残せる場合があります。
子どもから親にエンディングノートを書いてもらう場合も、財産や葬儀の項目だけで終わらせず、
「最後に家族へ何か書いておく?」
と聞いてみてもよいでしょう。
その短い言葉が、将来家族にとって大切なものになるかもしれません。
一緒に作るときは財産の確認だけにしない
エンディングノートを作ると聞くと、預貯金、保険、不動産などの確認を優先したくなるかもしれません。
もちろん、こうした情報は家族が将来困らないために重要です。
しかし、最初から財産についての質問ばかりすると、親が「相続のために聞かれている」と感じる可能性があります。
まずは、
「昔の写真を整理しよう」
「友達の連絡先を書いておこう」
「かかりつけの病院を確認しておこう」
など、話しやすいことから始めても構いません。
エンディングノートは財産目録ではありません。
親の生活や希望、人生の思い出まで含めて整理できるものです。
家族で作るのであれば、情報を集めることだけではなく、親の話を聞くことも大切にしましょう。
親にエンディングノートを勧めたいものの、嫌がられそうで話を切り出せない場合は、 親にエンディングノートを書いてもらうには?嫌がるときの切り出し方と進め方 で、自然な話の始め方や一緒に進める方法を紹介しています。
完成させることより話せたことを大切にする
エンディングノートは、すべてのページを埋めなければ意味がないものではありません。
親が答えたくない項目があれば空欄でも構いません。
その日に決められないことは、後から考えてもよいでしょう。
一度で完成させようとすると、親にも子どもにも負担になります。
今日は友人のこと。
次は昔の写真。
別の日には介護について。
そのように少しずつ進めても十分です。
エンディングノートが完成したかどうか以上に、親子でこれまで話してこなかったことを話せたことに意味があります。
まとめ
親のエンディングノートを家族で一緒に作ると、子どもがこれまで知らなかったことに気づくことがあります。
友人関係、財産、介護や医療についての考え、葬儀やお墓の希望だけではありません。
親の昔の出来事や家族への思いなど、普段の生活では聞く機会がなかった話が出てくることもあります。
また、親が残したエンディングノートを後から読むことで、生前にはわからなかった気持ちを知ることもあります。
エンディングノートの価値は、必要事項がきれいに書き込まれていることだけではありません。
一緒に作る過程で親子の会話が生まれ、親について知ることにも意味があります。
エンディングノートを「亡くなった後のためのノート」だけにせず、親が元気な今だからこそできる家族の会話に活用してみてはいかがでしょうか。



