はじめに
親が元気なうちに、預貯金や保険、介護、葬儀などについて確認しておきたいと思っていても、なかなか話を切り出せない人は多いでしょう。
「エンディングノートを書いておいて」と頼んでも、「まだそんな年じゃない」「縁起でもない」と嫌がられることもあります。
しかし、親が亡くなった後や、自分で意思を伝えることが難しくなってからでは、確認できないことがたくさんあります。
・どこの銀行を利用しているのか。
・どんな保険に入っているのか。
・親しい友人は誰なのか。
介護や医療についてどのような希望があるのか。
こうした情報は、子どもだからといってすべて知っているとは限りません。
大切なのは、親に無理やりエンディングノートを書かせることではありません。
親が話しやすいところから少しずつ聞き、一緒に整理していくことです。
この記事では、親がエンディングノートを嫌がる理由、自然な切り出し方、一緒に作る方法、親に確認しておきたいことを解説します。
エンディングノートに何を書くのか、遺言書との違いや基本的な書き方から確認したい方は、 エンディングノートとは?何を書く?書き方・遺言書との違いと家族で作るメリット で詳しく解説しています。
親にエンディングノートを書いてもらうのが難しい理由
子どもから見ると、「いざというときに困るから書いておいてほしい」と思うのは自然なことです。
しかし、親からすると、エンディングノートという言葉自体に抵抗を感じることがあります。
まずは、なぜ嫌がるのかを考えてみることが大切です。
死ぬ準備を求められているように感じる
エンディングノートという名前から、「自分が死ぬことを前提にしたノート」と受け取る人は少なくありません。
本人がまだ元気であれば、
「もう死ぬと思っているのか」
「そんな縁起でもない話はしたくない」
と感じることもあります。
そのため、最初から「死後のため」「葬儀のため」と強調すると、話そのものを避けられる場合があります。
エンディングノートは、亡くなった後の希望だけを書くものではありません。
普段利用している銀行、保険、医療機関、連絡先などを整理する備忘録としても使えます。
まずは「今の生活を整理するためのノート」として話す方が受け入れてもらいやすいことがあります。
項目が多くて面倒に感じる
市販のエンディングノートには、多くの項目があります。
最初からすべて埋めようとすると、それだけで負担に感じる人もいます。
特に、書類を書くことが苦手な人や、細かな作業を面倒に感じる人にとっては、一冊渡されただけでやる気をなくしてしまうことがあります。
最初から完成を目指す必要はありません。
一つだけ書く。
一緒に確認する。
子どもが代わりにメモする。
その程度から始めても十分です。
財産を聞き出されるように感じる
親子でも、預貯金や財産について話すことに抵抗がある家庭は珍しくありません。
いきなり、
「預金はいくらあるの?」
「通帳はどこ?」
「家は誰に相続させるの?」
と聞けば、親が警戒するのも無理はありません。
エンディングノートの目的は、親の財産を子どもが把握することだけではありません。
親自身の希望や人間関係、生活に必要な情報を整理することも大切です。
財産の話ばかりを先にしないことが重要です。
親にエンディングノートを勧めるきっかけ
「終活の話をしよう」と改まって切り出す必要はありません。
日常生活の中には、自然に話を始められるきっかけがあります。

パソコンやスマートフォンの話から始める
親がスマートフォンやパソコンを使っているなら、それをきっかけにできます。
例えば、
「このサービスは毎月お金がかかっているの?」
「スマホが壊れたら、どこに連絡すればいい?」
「写真はどこに保存しているの?」
といった話です。
こうした会話から、利用しているサービスや契約を一緒に確認できます。
親がデジタル機器を苦手としている場合は、子どもが整理を手伝うこと自体がエンディングノート作りのきっかけになります。
入院や介護の話から始める
親自身や身近な人が入院したときも、話を始めるきっかけになります。
「もし入院することになったら、誰に連絡してほしい?」
「介護が必要になったら、自宅と施設のどちらがいい?」
といった聞き方なら、死後の話だけをするより自然です。
親の希望を聞いておけば、将来家族が判断しなければならない場面でも参考になります。
写真や思い出の話から始める
昔のアルバムを見ることもよいきっかけです。
写真に写っている人について聞いたり、昔住んでいた場所や仕事の話を聞いたりすると、親自身も話しやすくなります。
そこから、
「この人には何かあったら知らせてほしい?」
「この写真は残しておきたい?」
といった話へ自然に広げることができます。
エンディングノートは事務的な情報だけを書くものではありません。
親の人生や思い出を知ることも大切な目的の一つです。
自分が先に書いてみる
親にだけエンディングノートを書いてもらおうとすると、「なぜ自分だけなのか」と感じる人もいます。
そこで、子ども自身が先に書いてみる方法があります。
「自分も銀行や保険を整理してみた」
「スマホの契約を書き出したら意外とたくさんあった」
と話せば、親だけに終活を求めている印象が弱くなります。
年齢に関係なく、自分の情報を整理しておくことは役立ちます。
親子で一緒に始めるという形にすれば、話しやすくなることがあります。
「書いておいて」ではなく一緒に作る
エンディングノートは、本人が一人で書かなければならないものではありません。
親が書くことを面倒に感じるなら、子どもが質問して内容を記録してもよいでしょう。
親が話した内容を子どもがメモし、後で一緒に確認する方法もあります。
一度に一冊を完成させようとせず、今日は連絡先、次は保険というように少しずつ進めます。
子どもが聞きながら書く
親に質問し、子どもが代わりに書けば負担を減らせます。
例えば、
「かかりつけの病院はここでいい?」
「この保険会社は今も契約している?」
「学生時代の友人で連絡してほしい人はいる?」
と確認します。
質問形式で進めると、親も答えやすくなります。
ただし、尋問のようにならないよう注意しましょう。
答えたくないことがあれば、その場では聞かないという姿勢も必要です。
一緒に書くことで親との会話が生まれる
親子でエンディングノートを作る価値は、情報が整理できることだけではありません。
一つずつ話を聞いていくと、これまで知らなかったことが出てくることがあります。
例えば、
・昔から付き合いのある友人がいる
・子どもの知らない保険に加入している
・お墓について具体的な希望を持っている
・延命治療について考えがある
・家族には話していなかった思い出がある
こうした話は、何かきっかけがなければ親子でも話さないことがあります。
エンディングノートを作ることが、親の考え方や人生を知る時間になることもあります。
親に確認しておきたいこと
すべてを一度に確認する必要はありません。
将来家族が困りやすいことから、少しずつ整理していきましょう。
特に確認しておきたいのは次のような内容です。
・預貯金を利用している金融機関
・加入している生命保険や医療保険
・不動産や借入金などの財産・負債
・クレジットカードや定期契約
・スマートフォンやインターネット上のサービス
・親しい友人や親族の連絡先
・かかりつけ医や服用している薬
・介護が必要になった場合の希望
・医療や終末期についての希望
・葬儀についての希望
・お墓や供養についての希望
・大切な書類の保管場所
ただし、暗証番号やパスワードなど、知られると危険な情報を一冊のノートにすべて書く必要はありません。
「何を利用しているか」「必要な情報がどこにあるか」がわかるだけでも役立ちます。

親の考えを尊重する
子どもが将来困らないために情報を整理することは大切です。
しかし、親には親の考えがあります。
書きたくないことや、まだ決めたくないことがあるかもしれません。
無理に答えを求めると、かえって終活の話を避けるようになることがあります。
「今日はここまで」
「これはまた今度考えよう」
と切り上げても構いません。
親自身が納得しながら進めることを優先しましょう。
一度で完成させる必要はない
エンディングノートは、一度書いたら完成というものではありません。
銀行口座や保険、契約しているサービスは変わります。
介護、医療、葬儀、お墓についての考えも変わることがあります。
最初は数項目だけでも構いません。
時間をかけて少しずつ追加し、内容が変われば書き直します。
年に一度、親子で見直す日を決めておく方法もあります。
エンディングノートを作ること自体より、家族が必要な情報や親の希望を少しずつ共有している状態を作ることの方が大切です。
まとめ
親にエンディングノートを書いてもらいたいと思っても、「書いておいて」と頼むだけではうまくいかないことがあります。
死ぬ準備を求められているように感じたり、面倒に思ったり、財産を聞き出されるように感じたりする人もいるからです。
無理に一冊を完成させようとせず、スマートフォンや契約、写真、介護など、話しやすいことから始めてみましょう。
親が書くことを負担に感じるなら、子どもが聞きながら書く方法もあります。
一緒に作ることで、これまで知らなかった親の友人関係、希望、考え方、人生の思い出を知ることもあります。
エンディングノートを親に書かせることだけを目的にするのではなく、親子でこれからのことを話すきっかけとして活用することが大切です。



