高齢者の目の病気は要注意!
近くにあるものや細かい字が見えづらくなる老眼は、中高年になると避けられない老化現象の1つです。
しかし、高齢者の場合は老眼以外にも注意しないといけない目の病気は他にもたくさんありますし、うっかり放置していると失明する恐れもあります。
そこで今回は、高齢者がかかりやすい目の病気の種類や、今日から始められる効果的な予防について解説していきます。
高齢者がかかりやすい目の病気
高齢者がかかりやすい目の病気としては白内障・緑内障・加齢黄斑変性の3つが挙げられます。
中でも緑内障は最も一般的な失明原因であり、近年患者数も増加傾向にありますが、その根本的な原因は特定されていません。
ここからは高齢者が注意しないといけない目の病気をいくつかご紹介していきます。
白内障
白内障は目の中心でレンズの役割を果たしている水晶体が白く濁ってしまう病気で、段階的に視力低下や視野のかすれが発症していきます。
最も大きな原因は加齢であり、特に40代を境として発症確率が上昇していき、80代になるとほぼ100%の確率で白内障を発症するとされています。
白内障は点眼薬などで進行を遅らせることはできますが、根本的な治療方法は水晶体を人口レンズに交換する手術しか存在しません。
手術自体は日帰りで行えますし、保険も適用されるので費用負担は少ないですが、ある程度のリスクはあるので具体的な治療方針については担当医と相談して決定しましょう。
緑内障
緑内障は視覚情報を脳に伝達する視神経に異常が発生する病気のことです。
主に眼圧が上昇することで視神経が圧迫され発症することが多いので、初期段階での自覚症状は乏しいという特徴があります。
また、眼痛や頭痛を伴いますが、疲労によるものと勘違いしやすく、自覚症状があったとしても緑内障を疑うことは難しいです。
60代以降の方に多く見られ、70代になると10人に1人の割合で発症しますが、視神経を根本的に治療することはできないので、あくまで点眼薬などを用いた対処療法がメインになります。
飛蚊症
飛蚊症は視野に小さなゴミや糸くずのようなものが見える病気で、眼球内の硝子体が変化することで発症するとされています。
一般的に飛蚊症の多くは加齢や先天的なものに由来しており、治療を受けなくても大きな問題はありません。
しかし、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症によって硝子体が出血することでも発症するため、そのようなケースでは専門医による適切な治療が必要になります。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性症は網膜の中心にある黄斑が、加齢によって変化する病気を指します。
黄斑は視神経につながっているため、この部位が変化すると、視力低下や中心暗点などさまざまな視力障害を引き起こします。
特に年齢との相関が強く、日本全体での推定患者数は69万人以上にも上ります。
また、喫煙習慣や過剰なストレス、バランスの悪い食生活なども加齢黄斑変性症を引き起こす原因となるので、若いうちから生活習慣を見直すようにしましょう。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は糖尿病が悪化することで引き起こされる合併症の1つで、通常は数年程度の時間をかけながら緩やかに進行していきます。
糖尿病を発症すると粘性を増した血液によって網膜下の血管が詰まるため、次第に網膜を構成する細胞も死滅することになります。
網膜細胞は再生能力がないため、一度死滅すると復活することはないですし、それによる視力低下も自然治癒は望めません。
そのため、糖尿病網膜症の進行を止めるためには糖尿病自体の治療が必須です。
注意が必要な目の症状
白内障や緑内障など目の病気は、そのほとんどが何かしらの症状を伴います。
しかし、ものによっては自覚症状が乏しい場合もあるので、手遅れにならないようにしっかりと事前知識を身につけましょう。
視野狭窄
視野狭窄とは視野が狭まる症状の総称であり、狭まる範囲によって狭窄・半盲・暗転の3種類に大別されます。
視野狭窄を引き起こす病気としては、緑内障や糖尿病網膜症が挙げられますが、脳卒中など脳機能に異常が発生した場合にも症状が現れることがあります。
ただし、視野狭窄の原因が目の病気によるケースでは、緩やかに眼圧が上昇していくため、初期段階では自覚しにくいとされています。
色覚異常
色覚異常は実際の色とは異なる色が見える症状を指します。
一般的に色覚異常は遺伝の影響によって発症することが多いですが、白内障や糖尿病網膜症などの影響で後天的に症状が現れることもあります。
先天的な色覚異常については日本人男性であれば20人に1人の割合で発症するので、後天的なものと見分けが難しいですが、大人になってから色覚異常を感じた場合は医療機関に相談しましょう。
変視症
変視症は視界が歪んでしまう症状のことであり、一本線が曲がって見えたり、文字が潰れてしまうので、比較的自覚しやすいとされています。
変視症が発症した場合、その原因としては加齢黄斑変性症や網膜剥離が考えられますが、他にも黄斑上膜や黄斑円孔の可能性もあります。
もし日常生活を送る中で、上記のような問題に悩んでいる方がいれば専門的な治療が必要になるので、早い段階で眼科医に診てもらうことをおすすめします。
中心暗点
中心暗点とは視野の中心が見えなくなったり、ぼやけたりする症状のことです。
鏡に顔を写すことで自己診断できるため、心配な方は手持ちの鏡で試してみましょう。
中心暗点を伴う病気は、過剰なストレスによって発症する中心性網膜炎が代表的ですが、滲出型加齢黄斑変性も原因として考えられます。
滲出型加齢黄斑変性は加齢黄斑変性症の一種であり、網膜直下の血管から漏れ出た血液によって網膜や黄斑が損傷することで発症します。
自然治癒することはなく、治療が遅れると失明する可能性が非常に高いため、特に高齢者は注意が必要です。
目の病気の予防方法
目の病気の予防には発症確率を高める危険因子を早い段階から取り除くことが大切です。
この章では個人が実行できる効果的な予防法について紹介していきます。
紫外線やブルーライトのカット
太陽光に含まれる紫外線や液晶画面から発せられるブルーライトは、眼球の内側にある網膜へ直接届き、ダメージを与えます。
特に、黄斑に過剰な紫外線やブルーライトが集中すると、加齢黄斑変性症を引き起こす危険性があります。
PCやスマホを頻繁に利用する方や思い当たりがある方は、ブルーライトカットに対応している眼鏡を利用しましょう。
生活習慣の改善
目の病気を予防するためには生活習慣の改善も欠かせません。
というのも、暴飲暴食からくる2型糖尿病は糖尿病網膜症を併発する可能性がありますし、高脂肪食中心の食習慣は加齢黄斑変性症の原因となります。
どちらも個人差はありますが、乱れた生活習慣は目の病気以外にも悪影響を与えるため、食生活など可能な範囲から改善していきましょう。
特に、アジやサバなどの青魚は高タンパク低カロリーですし、目の健康維持に役立つDHAやEPAを多く含むため、積極的に摂取することをおすすめします。
禁煙
タバコにはニコチンやタールなど、人体に有害な化学物質が多く含まれており、長期的な喫煙習慣は目の病気の発症確率を大きく上昇させます。
また、タバコを吸う人は吸わない人に比べ、白内障や加齢黄斑変性症にかかる確率が3倍以上高いという医学統計も複数発表されています。
そのため、目の病気の予防には禁煙が必須になります。
現在は禁煙ガムなど有効な市販薬が数多く販売されていますし、禁煙専門の外来医療もあるため、自分の意思だけでは禁煙が難しい人は利用を検討してみましょう。