はじめに
テレビや雑誌でサプリメントのCMを見ない日はないほど、私たちにとってサプリメントは身近なものになっています。そもそもサプリメントって何なのでしょうか? 安全性は担保されているのでしょうか? 選び方や購入する時の注意点などについてわかりやすく解説します。
サプリメントとは
サプリメントとは、ビタミンやミネラルなどを健康の維持・増進のために摂取する健康食品のひとつです。ただし、「健康食品」には、法律上の明確な定義はありません。
アメリカでは「Dietary Supplement」と呼ばれ、「従来の食品・医薬品とは異なるカテゴリーの食品で、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブ等の成分を含み、通常の食品と紛らわしくない形状(錠剤やカプセルなど)のもの」と定義されています。しかし日本では、形状についても細かい定義がなく、錠剤やカプセル、ドリンク、スナック菓子状などさまざまです。
「健康に良い」とされる根拠は?
サプリメントは、一般的に、通常の食品と比べて「健康に良い」、「健康の保持・増進に役立つ」などの表現で販売されています。ただし、その科学的根拠については、必ずしも十分ではありません。
生活習慣病やアレルギーのある人には、処方薬とサプリメントを併用するケースが多いようですが、サプリメントは治療が目的ではなく、あくまで栄養を補うための食品です。サプリメントは、くすりの代わりではないことをしっかり理解しておきましょう。
サプリメントの3つのタイプ
世の中には多種多様なサプリメントが出回っていますが、基本的に飲む目的によって3つのタイプに分類されます。
ベースサプリメント
ふだんの食事で不足しがちなもの(ビタミン、ミネラルなど)を補給する
ヘルスサプリメント
免疫力アップや抗酸化作用など健康増進を期待するもの(青汁、黒酢など)
オプショナルサプリメント
特定の部位や症状に焦点をあてて補給するもの(膝や腰の痛みにコンドロイチン、歩く・座るなどスムーズな日常生活を送るためにグルコサミン、中性脂肪を減らして血液をサラサラにする働きのあるDHAやEPAなど)
サプリメントをおすすめするのは?
サプリメントは、健康の維持・増進のために服用するほか、偏った食生活をしている人や妊娠中の人、減量のため食事量を減らしている人など、バランスのとれた栄養補給が難しい人におすすめです。
すでに栄養バランスのとれた食生活を送っている人が摂取しても、健康増進の大きな変化は望めません。
消費者がサプリメントに期待すること
インターネットで約10000件の消費者の声を集めたマイボイスコムによると、 サプリメントを買うときにもっとも重視するのは「効果・効能」と70%近くが答えています。
とはいえ、効き目がわかる期間には個人差があるうえ、種類や目的によっても異なります。サプリメントに対して過剰な期待は持たないほうが賢明です。
サプリメントの安全性
サプリメントには、成分を濃縮していたり、医薬品の成分を含んでいたりするものも、数多くあります。効果を期待して摂り過ぎると、リスクがあります。日本医師会は、ホームページで「あなたはサプリメントを摂りすぎてはいませんか?」と呼び掛けています。
また、服用しているくすりとの飲み合わせで、思わぬ健康被害が発生する可能性もまったくないとは言えません。「食品だから安心」、「天然成分だから安全」とするのは誤解です。天然成分由来のサプリメントでも、アレルギー症状などを起こすこともあります。
特に、高齢者や病気を患っている人、アレルギー体質の人などは、要注意です。からだに変調を感じたら、すぐにかかりつけの医師に相談し、サプリメントを摂っていることもきちんと伝えましょう。
サプリメントによる健康被害に関して
サプリメントで起こる健康被害の多くは軽症で、そのときの体調や個々人の体質によるものがほとんどです。しかし、なかには素材の安全性が問題視されるものや、くすりの成分を含むものなどがあり、注意が必要です。
こうしたサプリメントによる健康被害をめぐっては、2020年に食品衛生法の一部が改正されて新しい制度ができました。
それによると、「摂取量や製造・品質管理について特別の注意を必要とする成分(厚労大臣が指定)等を含む」サプリメントについては、表示の義務付けのほか、健康被害が発生した場合、行政へ被害情報の届出が義務化されることになりました。健康被害の発生・拡大の防止により厳しい目が向けられたといってよさそうです。
サプリメントを選ぶポイント
サプリメントを正しく選ぶために、押さえておきたいポイントを挙げます。
サプリメントの形状
サプリメントはその見た目からは、くすりとの違いがわかりにくいこともあります。
サプリメントには、錠剤、丸剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、粉末、顆粒、液状などさまざまな形状がありますが、「食品」と記載されています。
購入前にまず必要性を考える
サプリメントの情報は、テレビや雑誌、インターネットなどあらゆるメディアに氾濫しています。購入する前に、まずは自分に本当に必要か冷静に考えてみましょう。
サプリメントを利用する前に、日々の食事の内容や栄養バランスを見直してみるのもひとつです。
購入時に注意したい表示
実際に購入するとなると、似たようなサプリメントがたくさんあって、選ぶのに迷ってしまうことがあるかもしれません。
自分に最適なサプリメントを選ぶには、パッケージに記載された表示に注意することです。原材料・成分表示、有用成分の含有量、摂取方法、お客様相談窓口の有無をチェックしましょう。
原材料・成分表示
どのようなものが使われているか、原材料や成分を確認します。天然成分か合成成分か、添加物の有無などもしっかりチェックします。
有用成分の含有量
原材料には、含有量が多いものから順番に記載されています。健康面の安全性や有効性を判断するためには、この含有量が重要になります。たとえばビタミンCのサプリメントでも、含有量が100ミリグラムのものから1000ミリグラムのものまで、いろいろです。
1度に多くの種類のサプリメントを摂取すると、健康被害のリスクが高くなり、被害の原因究明も難しくなります。何種類か摂取している場合、同じ成分が重複していることもあり、過剰摂取による問題が起こることもあります。自分に必要な含有量のものを選ぶことが大切です。
摂取方法
摂取方法には、用法、1日に飲む量、飲む際の注意事項などが書かれています。1日何回、どのくらい飲むのか、自分の目的に合っているか、妊娠中や特定の疾患があっても飲めるかなどをチェックして、選びます。
お客様相談窓口の有無
メーカーまたは販売元のお客様相談窓口の情報は重要です。不明な点がある場合やサプリメントを服用して体調を崩したときなどに問い合わせてアドバイスを受けられます。
あやしい表現には要注意
「天然成分だからからだにやさしい」、「1日でマイナス○kg」といった、安全性や品質について誇大広告やあやしい表現がある商品は要注意です。
疑問に思ったら、それらの商品は避けたほうがよいでしょう。
サプリメントを摂取する時間帯
サプリメントは食事と一緒に吸収されるため、食後30分以内に飲むのが一般的です。鉄分などは、空腹時に摂取すると吐き気を催すこともあります。
摂取する時間帯は、サプリメントの種類によってより効果が期待できる時間帯に変更することもできます。たとえば、ビタミンやミネラルなどは、㏠の活動が始まる朝の時間帯に、美肌を目指すサプリメントは、肌の新陳代謝が高まる夜の時間帯にといった具合です。不安のある人は、薬剤師さんに相談するのが良いでしょう。
必要以上の摂取は逆効果
サプリメントがからだに必要な栄養素だといっても、必要な量を超えると体内から排出できず、かえって負担になる場合があります。パッケージに書かれた用量を超えないことが大切です。
サプリメントの量を減らすのは問題ありません。摂取しても手応えを感じないときには、思い切って止めてみるのもひとつです。
開封後は早めに飲みきる
サプリメントはくすりと違い、長期保管による品質の劣化など詳細なデータがありません。賞味期限内でも、開封したらなるべく早めに飲みきりましょう。
「健康食品手帳」の活用
サプリメントを安全に利用するためには、摂取している健康食品の製品名や利用期間、体調変化の状況などを記録することが重要です。
健康情報を記録するため、東京都などの行政機関が作成している「健康食品手帳」をダウンロードして活用するのをおすすめします。
サプリメントは食品ではありますが、副作用がないわけではありません。サプリメントの利用で病気の治癒が遅れたり、症状が悪化したりすることもあります。
もしも具合が悪くなったら、まずは摂取をやめて症状が改善するか様子をみます。軽い症状ならばメーカーのお客様相談窓口で相談できますが、症状が続くようであれば医師の診断を受けましょう。
「おくすり手帳」と一緒に「健康食品手帳」を活用することで、サプリメントとくすりとの飲み合わせや摂取後の体調変化について、医師や薬剤師への相談がスムーズに行うことができます。
まとめ
サプリメントの情報はメディアにあふれていますが、「食品だからたくさん摂取しても大丈夫」、「高価だから効き目があるはず」など、勝手に誤った認識は持たないようにしましょう。もしも具合が悪くなったら、すぐに摂取をやめて、症状が改善しなければ医師の診断を仰ぎましょう。
サプリメントの利用は、日常の食事をきちんとバランスよく食べることが前提です。サプリメントを利用しながら生活習慣や食生活も一緒に見直していくことが、上手な活用法だといえます。サプリメントを正しく安全に摂りながら、より良い健康管理に役立てていきましょう。