葬儀の時に揉める7つのこと

葬儀・仏事

人生の終着点である葬儀。
故人を偲び、遺族が心を一つにする場であるはずが、残念ながら、この時ほど人間関係の亀裂が露呈しやすい場面はない。
悲しみに暮れる暇もなく、親族間で激しい感情がぶつかり合うことは珍しくないのだ。
葬儀の時に特に揉めやすい7つのポイントについて解説する。

1. 葬儀の形式・規模

「盛大に送ってあげたい」「故人は質素な葬儀を望んでいたはずだ」。
葬儀の形式や規模は、遺族の考え方や故人との関係性によって大きく異なる。
昔ながらの一般葬を望む声もあれば、家族葬、一日葬、直葬といったシンプルな形式を選ぶケースも増えている。
しかし、この選択一つで揉めることは非常に多い。

特に、故人の配偶者や子供たちは「自分たちのやり方で」と考えがちだが、遠方の親戚や、故人との付き合いが長かった友人知人からは、「なぜ知らせてくれなかったのか」「ちゃんとした葬儀をしてほしかった」といった不満が出る場合がある。
規模が小さくなればなるほど、呼ばれなかった人からの反発は大きくなる傾向にあるのだ。

また、宗派の問題も絡む。
例えば、浄土真宗のように特定の教えが深く根付いている場合、家族葬であっても読経や戒名(法名)に対する考え方が厳格で、親族間で意見が食い違うこともある。
故人が生前に特定の宗派に帰依していた場合、その教えを尊重すべきか、あるいは現代的な価値観を優先すべきか、といった議論になることも珍しくない。

2. 喪主の決定

「誰が喪主を務めるか」は、一見すると明確なように見えて、実は最も感情的な対立を生みやすいポイントだ。
一般的には故人の配偶者や長男が務めることが多いが、配偶者が高齢で体力的に難しい場合や、長男が遠方に住んでいる場合など、様々な事情が絡むと複雑になる。

例えば、故人の妻が喪主を務めたいと願っても、故人の兄弟姉妹から「やはり長男がやるべきだ」といった意見が出ることもある。
あるいは、同居していなかった長男が喪主の座に固執し、故人の介護を長年担ってきた次男夫婦が不満を募らせる、といったケースもあるだろう。

喪主は葬儀の決定権を持つだけでなく、経済的な負担や、その後の法要、遺産相続などにも深く関わるため、単なる「役割」以上の意味を持つ。
故人との関係性、これまでの介護への関わり方、そして今後の親族間の力関係など、様々な要素が絡み合い、泥沼の争いへと発展することもあるのだ。

3. 葬儀費用と分担

葬儀費用は数百万円に及ぶこともあり、その負担は決して軽くない。
誰が、どのくらい費用を出すのかは、必ずと言っていいほど問題になる点だ。

故人の遺産から捻出するのか、喪主が全額負担するのか、あるいは兄弟姉妹で均等に分担するのか。
遺産が十分にあれば良いが、そうでない場合、喪主の負担が大きくなることへの不満が噴出することは避けられない。

特に、生前の故人への仕送りを巡ってトラブルがあった場合や、兄弟姉妹間で経済状況に大きな差がある場合などは、費用分担の話し合いは難航しやすい。
「なぜ自分だけが負担を強いられるのか」「あの兄弟は何もしていないのに」といった感情が交錯し、長年の鬱積が爆発する引き金となることもある。

4. 故人の財産(遺産)

葬儀の最中に、あるいは直後に「遺産の話」を持ち出すのは不謹慎だと考える人もいるが、実際にはこのタイミングで財産の話題が出て揉めることは非常に多い。
故人が遺言を残していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるが、その話し合いは往々にして難航する。

例えば、生前に特定の相続人への多額の生前贈与があった場合や、親の介護を献身的に行ってきた子供がいた場合など、法定相続分通りに分割することへの不満が噴出する。
また、自宅の売却や、預貯金の引き出し、株式の管理など、具体的な手続きに入る段階で、遺産を巡る親族間の争いが表面化することもあるのだ。

故人が大切にしていた形見分け一つでも揉めることがある。
「あれは私がもらうはずだった」「なぜあの子にばかり」といった感情が絡み、遺品整理が進まないケースも少なくない。

5. 宗教・宗派に関する問題

故人の信仰と遺族の信仰が異なる場合や、親族間で宗派に対する考え方が違う場合に、葬儀の宗教・宗派を巡って揉めることがある。

例えば、故人が特定の宗教を信仰していたが、残された配偶者や子供はその宗教に馴染みがなく、自分たちの慣れ親しんだ宗派で葬儀を行いたいと考えるケース。
あるいは、故人は無宗教だったが、親族の中に特定の宗派にこだわる人がいる場合などだ。

特に、寺院との付き合いがある菩提寺を持つ家系では、その寺院の宗派で葬儀を行うのが当然と考える傾向が強い。
しかし、現代では、故人の意思や遺族の意向を尊重し、無宗教葬や特定の宗派にこだわらない葬儀を選ぶ人も増えているため、伝統と現代の価値観の衝突が起こりやすい。

6. 葬儀後の供養方法・墓地

葬儀が終われば全てが解決するわけではない。
その後の供養方法や墓地に関する問題も、親族間の揉め事の火種となる。

納骨堂を選ぶのか、樹木葬にするのか、永代供養にするのか、あるいは代々受け継がれてきたお墓に入るのか。

これらは、遺族の経済状況、居住地、そして何より故人の生前の希望によって異なる選択肢となる。

しかし、長男夫婦が実家を離れて遠方に住んでいる場合、実家のお墓を管理する負担が大きくなるため、永代供養を検討するが、故人の兄弟姉妹や実家に住む親族からは「先祖代々のお墓を無碍にするのか」といった反発が出ることもある。

また、遺骨の分骨を巡って揉めることもある。
「お墓に入るのは故人の全てであるべきだ」「一部は手元供養にしたい」など、故人への思い入れや供養に対する考え方の違いから、対立が生じるのだ。

7. 故人の友人・知人への対応

葬儀に際して、故人の友人や知人への対応を巡って揉めることもある。

例えば、故人が生前に親しくしていた友人が葬儀への参列を強く希望しているにもかかわらず、遺族が「家族葬だから」という理由で参列を断ってしまうケース。
友人側は故人への最後の別れができないことに不満を覚え、遺族との間に溝が生じる可能性がある。

また、葬儀後に弔問客が自宅に多数訪れることに対して、遺族側が対応に疲弊し、それが不満につながることもある。
特に、一日葬や直葬を選んだ場合、葬儀に参列できなかった故人の関係者が、後日弔問に訪れることが多く、その対応に追われることになる。
弔問を断ることが失礼にあたると考える遺族と、プライバシーを重視したい遺族との間で意見の相違が生じることもあるのだ。

揉め事を避けるために

葬儀の時に揉め事を避けるには、やはり生前の準備が最も重要である。
エンディングノートや遺言書で、葬儀の形式、費用負担、財産分与、そして何より「故人の意思」を明確にしておくことが、残された家族の負担を軽減し、争いを防ぐ最善策だ。

また、故人が生きていた頃から、家族や親族間でコミュニケーションを密にとり、お互いの価値観や考え方を理解しておくことも大切だろう。
いざという時に、悲しみの中で冷静な判断を下すのは非常に難しい。
だからこそ、事前に話し合い、それぞれの立場や思いを尊重する姿勢が求められるのだ。

葬儀は、故人との最後の別れの場であり、遺族が悲しみを共有し、絆を深めるための大切な儀式だ。
それが争いの場となることは、故人も望まないはずである。

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