残された人が困った3つの忘れ物〜終活で防ぐ「もしも」の悲劇

相続

人生の終活は、自分自身のためだけにするものじゃない。
実は、残された家族が「あの時、もっと話しておけば…」と後悔しないために、何より重要なのが準備だ。
特に、いざという時に家族が困ってしまう「忘れ物」が3つある。
これらの「忘れ物」がなぜ問題になるのか、そしてどうすれば解決できるのかを具体的に見ていこう。

1. デジタル遺品:故人のパスワードは「開かずの扉」

スマートフォン、パソコン、タブレット。
そして、オンライン銀行、証券口座、SNS、サブスクリプションサービス。
現代を生きる私たちの生活は、デジタルデータで溢れている。
故人がこれらのデジタル資産を残した場合、そのパスワードが分からなければ、残された家族は文字通り「開かずの扉」の前に立ち尽くすことになる。

例えば、故人がオンライン銀行で資産運用をしていたとして、パスワードが分からなければ、その口座の存在すら確認できない。
毎月引き落とされているサブスクリプションサービスも、解約できずに無駄な費用が発生し続ける可能性がある。
SNSアカウントは、個人情報や過去のやり取りが詰まっており、放置しておくとプライバシー侵害のリスクも生じる。

さらに深刻なのが、写真や動画といった思い出のデータだ。
クラウドサービスに保存されている場合、パスワードがなければ二度とアクセスできず、大切な家族の記憶が永遠に失われてしまう。
故人がブログやSNSで発信していた場合、そのアカウントをどうするか、家族で方針を決める必要もあるだろう。

これらを防ぐためには、デジタル遺品に関する情報をまとめたリストを作成することが不可欠だ。
サービス名、ID、パスワード、登録しているメールアドレス、そして各アカウントの取り扱いに関する希望(例:「SNSは削除してほしい」「写真は残してほしい」など)を明確に記しておく。
紙媒体で保管し、信頼できる家族にその存在を伝えておくのが最も確実な方法だ。

2. 口座情報と契約書類:お金の流れは「ブラックボックス」

「お父さん、どこの銀行に口座があったの?」「どの保険に入ってたっけ?」

故人が亡くなった後、残された家族が最も困るのが、故人の銀行口座や証券口座、生命保険、年金、クレジットカードといった金融関連の情報だ。
生前にこれらの情報を共有していないと、遺産相続の手続きはもちろん、日々の支払い管理や名義変更すら滞ってしまう。

例えば、故人のメインバンクが分からなければ、預貯金の存在を確認するだけでも一苦労だ。
複数の銀行に口座を持っていた場合、一つ一つ確認する作業は膨大な手間と時間がかかる。
生命保険に加入していたとしても、保険証券が見つからなければ、保険会社に連絡することすらできないだろう。
年金の手続きも煩雑で、必要な書類や連絡先が不明だと、受給が遅れる可能性もある。

また、賃貸契約書や住宅ローンの契約書、公共料金の契約状況なども重要な情報だ。
これらがどこに保管されているか、あるいはどんな契約内容になっているか分からなければ、残された家族が生活を継続する上で大きな支障となる。
携帯電話の契約やインターネット回線の契約も同様だ。

これらの「忘れ物」を防ぐためには、預貯金口座、保険契約、年金、クレジットカード、ローン、公共料金などの情報を一覧にした「金融資産リスト」を作成することが重要だ。
口座番号、銀行名、支店名、保険の種類と証券番号、連絡先などをまとめておく。
また、重要な契約書類は一か所にまとめて保管し、その場所を家族に伝えておくべきだ。
エンディングノートを活用するのも良い方法だろう。

3. 思い出の品と形見分け:故人の「好き」が分からない

故人が生きていた証である思い出の品々。
写真、手紙、日記、コレクション、愛用品など、一つ一つに故人の人生が詰まっている。
しかし、故人が「これは誰に渡したい」「これはどうしてほしい」という意思を伝えていなかった場合、これらの品々が残された家族にとって大きな負担となることがある。

例えば、価値があるのかないのか分からない骨董品や絵画、膨大な量の蔵書やレコード。
これらをどう処分するか、家族だけで判断するのは難しい。
特に、故人が大切にしていた品であればあるほど、捨てるに忍びなく、かといって保管し続けるにも限界がある。
誰かに譲りたいと思っても、故人が誰に何をあげたかったのかが分からなければ、関係者全員が納得する形での形見分けは困難になる。

また、写真や手紙、日記なども、故人のプライバシーに関わるため、残された家族が勝手に処分して良いものか悩むことが多いだろう。
故人の「好き」や「こだわり」が分からなければ、本当に故人が喜ぶような形で送り出してあげることも難しい。

これを防ぐためには、生前に「形見分けリスト」を作成し、誰に何を渡したいか、あるいは処分してほしいものを明確に記しておくのが良い。
写真や手紙についても、残すものと処分して良いものを分けておくなど、具体的な指示があれば、家族は迷うことなく対応できる。
故人の趣味やコレクションについても、その価値や保管方法に関するメモを残しておくと、残された家族の助けになるだろう。

まとめ:終活は「残された人への最後の思いやり」

今回挙げた3つの「忘れ物」は、単なる情報の欠落ではない。
それは、残された家族が故人の死後もスムーズに生活を送り、故人との思い出を大切に守っていくための「道しるべ」が失われることを意味する。
そして、その結果として、家族間に不要な混乱や、時には争いすら生んでしまうことがあるのだ。

終活とは、自分の人生の終わりを準備するだけでなく、残される家族への究極の思いやりだと言えるだろう。
元気なうちに、これらの「忘れ物」がないかを確認し、家族と話し合い、必要な情報を整理しておくこと。
それは、悲しい別れの時にも、家族が故人との絆を再確認し、前向きに生きていくための「希望の光」となるはずだ。

「もしも」の時に「困った」とならないよう、今日から少しずつでも終活を始めてみよう。

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