「お盆って、何から始めたらいいんだろう?」 「毎年、なんとなくやっているけど、これで合っているのかな?」
お盆は、ご先祖様が家に帰ってこられる期間とされ、家族や親族が集い、故人を偲ぶ大切な日本の伝統行事です。
しかし、核家族化が進み、昔ながらの慣習を知る機会が減った現代において、お盆の準備に戸惑う方も少なくありません。
お盆は、ただ故人を偲ぶだけでなく、ご先祖様への感謝を改めて心に刻むための大切な時間です。
お盆にやるべきことには、それぞれ意味があり、その意味を理解することで、より丁寧な気持ちでご先祖様をお迎えすることができます。
この記事では、お盆を心穏やかに迎えるために、忘れずにやるべきことを、具体的な準備と手順に分けて詳しく解説します。
これから初めてお盆を迎える方から、毎年のお盆をより丁寧に過ごしたい方まで、お盆の準備を安心して進められるよう、ぜひご活用ください。
1. お盆の基本:「迎え火」と「送り火」の準備
お盆の行事は、ご先祖様を家に「お迎え」し、再びあの世へ「お送り」するという流れが基本です。
【迎え火(むかえび)】
- いつやる?: 8月13日(地域によっては7月13日)
- 目的: ご先祖様が迷わずに家に帰ってこられるよう、道しるべとして焚く火。
- 準備するもの:
- 焙烙(ほうろく): 素焼きの平たいお皿。火を焚くために使います。
- おがら: 麻の茎を乾燥させたもの。燃えやすいため、迎え火に使われます。
- やり方: 玄関先や庭先で焙烙の上におがらを積み、火をつけます。マンションなど火を焚けない場合は、提灯やロウソクを灯すだけでも問題ありません。
【送り火(おくりび)】
- いつやる?: 8月16日(地域によっては7月16日)
- 目的: ご先祖様を無事にあの世へお送りするための火。
- 準備するもの: 迎え火と同じ。
- やり方: 迎え火と同じ場所で火を焚きます。燃え残ったおがらは、そのまま放置せず、きちんと消火・片付けを行いましょう。
迎え火と送り火は、ご先祖様との再会と別れを象徴する大切な儀式です。
それぞれの意味を理解することで、より深く故人を偲ぶことができます。
2. お盆の祭壇「盆棚(ぼんだな)」の設営
お盆の期間中、ご先祖様をお迎えする場所として「盆棚(精霊棚とも)」を設営します。
これは、仏壇とは別に用意する特別な祭壇です。
【準備するもの】
- 精霊馬・精霊牛(しょうりょううま・しょうりょううし): きゅうりとなすに割り箸を刺して作ります。ご先祖様が馬に乗って早く帰ってこられ、牛に乗ってゆっくりと帰っていかれるように、との願いが込められています。
- お供え物: 故人が好きだった食べ物や飲み物。果物やお菓子、お茶などを用意しましょう。
- ほおずき: 提灯に見立てて飾ります。
- 水の子: 洗った米とさいの目に切ったきゅうりやなすを混ぜたものです。餓鬼(がき)に供えるという意味もあります。
- みそはぎ: 仏壇の周りや水の子に添えます。
【設営の手順】
- 仏壇の前に小さな机を置き、真菰(まこも)でできたゴザを敷きます。
- その上に、ご先祖様をお迎えするための位牌や仏具を並べます。
- 精霊馬と精霊牛を飾り、ご先祖様が好きだったお供え物を置きます。
- ロウソクやお線香を立て、提灯を灯します。
盆棚の設営は、ご先祖様を家に迎えるための「おもてなし」です。
心を込めて設営することで、故人とのつながりをより強く感じられるでしょう。
3. お盆の期間中に忘れずやるべきこと
お盆の期間中には、いくつかの大切な行事や習慣があります。
【期間中の日課】
- 朝夕の食事を供える: お盆の期間中は、ご先祖様にも食事を供えます。家族が食べるものと同じものを小さな器に盛り、盆棚に供えましょう。
- 毎日のお線香: 盆棚に毎日お線香をあげ、故人を偲びます。
- お墓参り: お盆期間中に、お墓参りをするのが一般的です。お墓をきれいに掃除し、花を供え、お線香をあげて、ご先祖様に感謝の気持ちを伝えましょう。
【お盆の法要】
- 新盆法要(にいぼんほうよう): 故人が亡くなってから初めて迎えるお盆のこと。通常のお盆よりも丁重に供養を行います。
- 棚経(たなぎょう): 僧侶にお経をあげてもらうこと。菩提寺に依頼し、日程を調整しましょう。
これらの日課や法要を丁寧に行うことで、ご先祖様との絆を深めることができます。
4. お盆の準備を始めるタイミング
「いつからお盆の準備を始めればいいの?」という疑問を持つ方もいるでしょう。
一般的には、お盆の約1週間前、遅くともお盆の入りである8月13日までに盆棚の設営や買い物などを済ませておくと安心です。
【準備のチェックリスト】
- お墓の掃除: お盆の少し前に、お墓の掃除を済ませておきましょう。
- 提灯や盆棚の購入: 仏壇店などで早めに購入しておきましょう。
- お供え物の買い物: お盆に入る直前に、故人の好きだったものや日持ちのするものを買いに行きましょう。
- 僧侶への連絡: 法要をお願いする場合は、早めに連絡して日程を調整しましょう。
直前に慌てて準備をするのではなく、計画的に進めることで、心に余裕を持ってご先祖様をお迎えすることができます。
5. まとめ:お盆は「心」の準備が一番大切
お盆は、ご先祖様をお迎えし、ともに過ごすための大切な時間です。
今回挙げたように、準備すべきことや作法はたくさんありますが、最も重要なのは「心を込めてご先祖様をお迎えしたい」という気持ちです。
お盆の準備を通して、故人との思い出を振り返り、ご先祖様への感謝の気持ちを心に刻む。
そして、家族や親族と故人を偲びながら語り合う。
そうした心の交流こそが、お盆という伝統行事の本当の意味なのではないでしょうか。
形ばかりにとらわれず、ご自身の心の赴くままにご先祖様への感謝を伝え、温かいお盆をお過ごしください。