お葬式で失敗した5つのこと〜後悔しないために知っておきたいリアルな落とし穴

葬儀・仏事

大切な人を亡くした時、悲しみの中で執り行うお葬式。
多くの人にとって、慣れないことばかりで、手探りの中で進んでいくものだ。
そんな中で、「あの時こうしておけばよかった」「まさかこんなことになるなんて」と、後になって後悔する「失敗談」は少なくない。

今回は、私がこれまで見てきた、あるいは実際に聞いた「お葬式で失敗した5つのこと」を具体的な事例を交えて紹介する。
これは、あなた自身が後悔しないため、そして残された家族が困らないために、ぜひ知っておいてほしいリアルな落とし穴だ。

1. 「家族葬だから」と親族に連絡しなかった

「家族葬」という言葉が浸透し、少人数で故人を送る選択肢が増えた。
しかし、「家族葬だから」という理由で、故人と関係性の深かった親族にすら連絡しなかった結果、大きなトラブルに発展するケースが非常に多い。

ある事例では、故人の甥・姪たちが、叔父(故人)の死と葬儀が終わったことを人づてに聞いて激怒したという。
「なぜ一言も連絡をくれなかったのか」「最後に顔を見ることもできなかった」と、遺族への不信感を募らせ、その後の親族関係に深刻な亀裂が入ってしまったのだ。
彼らは、たとえ参列できなくても、せめて訃報だけでも知らせてほしかったと強く願っていた。

家族葬は、その名の通り「家族だけで」執り行うものだが、その「家族」の範囲が、核家族のみを指すのか、それとも親族全体を指すのかで認識のずれが生じやすい。
特に、故人が高齢で、遠方にも親族が多くいる場合、普段から連絡を取り合っていないと、このような事態に陥りやすい。

対策:

  • 「家族葬」の定義を、遺族内で明確にする。
  • たとえ参列を辞退してもらう場合でも、故人と縁のあった親族には必ず訃報だけでも連絡する。その際に、「家族葬のため、ご参列はご遠慮いただいております」と明確に伝え、後日改めて弔問の機会を設ける意向も示せると良いだろう。
  • 故人の交友関係を把握し、連絡すべき範囲を事前にリストアップしておく。

2. 葬儀費用を「言い値」で契約してしまった

悲しみの中、冷静な判断ができない状態で葬儀社との打ち合わせに臨むと、提示された費用をそのまま「言い値」で契約してしまうことがある。
結果的に、予想以上に高額な請求に直面し、後から「なぜもっと確認しなかったのか」と後悔するケースは少なくない。

ある遺族は、故人の希望を叶えたい一心で、複数のオプションを勧められるがままに追加した結果、当初想定していた金額の1.5倍もの請求が来て困惑したという。
内訳も細かく確認せず、「全てお任せします」と答えてしまったことが原因だった。

葬儀費用は、祭壇の種類、棺のグレード、返礼品、飲食代、車両費、人件費、そして僧侶へのお布施など、多岐にわたる項目で構成されている。
葬儀社によっては、基本プランの費用が安く見えても、追加オプションで費用が膨れ上がることもある。

対策:

  • 複数の葬儀社から見積もりを取り、比較検討する
    相見積もりを取ることで、費用だけでなくサービス内容や対応も比較できる。
  • 見積もりの内訳を細かく確認し、不明な点は遠慮なく質問する
    「一式」と書かれている場合は、その内容を具体的に尋ねる。
  • 故人の希望を尊重しつつも、予算の上限を事前に決めておく。
  • 可能であれば、冷静に判断できる家族や友人に同席してもらう。
  • 生前に、葬儀費用について家族と話し合い、予算の目安を共有しておく。

3. 宗派を理解せずマナーを間違えてしまった

日本の葬儀は仏式が一般的だが、仏教には様々な宗派があり、それぞれに独特のマナーや作法が存在する。
それを理解せずに参列してしまい、後から「しまった!」と後悔する失敗談は後を絶たない。

最も典型的なのは、香典の表書きだ。
例えば、浄土真宗では故人はすぐに成仏するという教えのため、「御霊前」ではなく「御仏前」を使うのが正しい。
しかし、それを知らずに「御霊前」と書いて出してしまい、遺族に「この人、何も知らないな」と思われてしまうことがある。

また、焼香の回数も宗派によって異なる。
曹洞宗は一般的に2回、真言宗は3回、浄土真宗は1回(額に押しいただかない)が作法だ。
自分の宗派の習慣で、つい3回焼香してしまったり、逆に1回で済ませてしまったりと、周りから浮いてしまう経験をした人もいるだろう。
喪主側も、参列者が宗派を知らないことを考慮して説明すべきだが、多忙の中でそこまで気が回らないことも多い。

対策:

  • 参列する葬儀の宗派を事前に確認する
    訃報連絡や葬儀社のウェブサイトに記載されていることが多い。
  • 宗派が分かれば、その宗派の基本的なマナー(香典の表書き、焼香の回数、数珠の使い方など)を簡単に調べておく。
  • 迷った場合は、香典の表書きは「御香典」と書いておけば、どの宗派でも無難だ。
    焼香は、前の人に合わせておくのが最も失敗が少ない方法だ。
  • 喪主側は、受付などで宗派ごとの簡単なマナーの案内を置くなど、参列者への配慮を検討する。

4. 遺影写真選びを後回しにしてしまった

お葬式で故人の顔となる遺影写真。
故人の人柄を偲ぶ大切な一枚だが、これを「まだ元気だから大丈夫」「そのうちでいいや」と後回しにしてしまい、結果的に後悔するケースが多い。

ある遺族は、急な訃報で時間がない中、故人の遺影に使える写真がほとんど見つからず、仕方なく普段着の集合写真から故人の顔を切り抜いて使用したという。
結果、故人らしからぬ不自然な写真となり、参列者からも「なんでこの写真?」という声が聞こえ、遺族は非常に心を痛めたそうだ。

遺影は、葬儀後も仏壇やリビングに飾られることが多いため、家族にとっても長く記憶に残るものとなる。
故人が一番輝いていた時、一番自然な表情の写真を選ぶことが理想だが、時間がない中でそれを探すのは至難の業だ。

対策:

  • 生前に、故人自身が「遺影に使ってほしい」と思う写真を選んでおく
    それがなければ、家族が「この写真なら故人らしい」と思う数枚を選んでおく。
  • できれば、故人らしい表情で、ピントが合っており、背景がすっきりしている、明るめの写真を選ぶ。
  • デジタルデータであれば、データ形式や保存場所を明確にしておく。
  • 定期的に写真を見返し、古すぎるものや画質の悪いものは差し替える。

5. 弔問客への対応で疲弊しきってしまった

葬儀は、遺族にとって心身ともに大きな負担がかかる。
その上、慣れない弔問客への対応に追われ、本来故人を偲ぶ時間が取れなかったり、疲労困憊してしまったりする失敗談もよく聞かれる。

特に、家族葬で身内だけで済ませたいと思っていたにもかかわらず、故人の知人や近所の人が突然弔問に訪れてしまい、急な対応に追われたというケースがある。
また、葬儀後も連日弔問客が途切れず、遺族が休む間もなかった、という声も聞く。
悲しみが癒えない中で、形式的な挨拶や接待に追われるのは、想像以上に辛いものだ。

弔問客の中には、故人への思いから、長時間話し込んだり、形式にとらわれず行動したりする人もいる。
それらを一つ一つ丁寧に受け止めるのは、多大な精神力が必要とされる。

対策:

  • 訃報連絡の際に、弔問を辞退する旨や、香典・供花を辞退する旨を明確に記載する
    これにより、事前に不要な負担を減らせる。
  • 家族葬の場合、葬儀社と相談し、弔問客への対応方針を事前に決めておく。
    例えば、葬儀会場での弔問は時間帯を区切る、または自宅への弔問は遠慮してもらうなど。
  • 葬儀後、体調が優れない場合は、無理せず弔問を断る勇気も必要だ。
    弔問客には、後日改めて連絡する旨を伝えてもらうなど、周囲の協力を仰ぐ。
  • 葬儀社に、弔問客への対応サポートを依頼することも検討する。

まとめ:失敗は「備え」と「情報」で避けられる

お葬式は、人生で何度も経験するものではない。
だからこそ、多くの人が不安を感じ、失敗を恐れるのは当然だ。
しかし、今回挙げた「失敗」の多くは、少しの「備え」と「情報共有」によって避けることができるものばかりだ。

「まだ先のこと」と思わずに、元気なうちに自分自身の終活と向き合い、家族と話し合う時間を持つこと。
エンディングノートを活用し、大切な情報を整理しておくこと。
そして、お葬式のマナーや慣習について基本的な知識を持っておくこと。
それが、あなたが「後悔しないお葬式」を実現し、そして残される家族が安心して、穏やかに故人を見送れるようにするための、何よりの「贈り物」となるだろう。

「もしも」の時に「困った」とならないよう、今日からできることから少しずつ始めてみよう。

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