はじめに
皆さんはご自身の宗派についてどのくらい把握してますか?菩提寺について親に聞いたことはあるけれど、それがどんな宗派でどんな決まり事があるか、知っていらっしゃる方は多くないと思います。
仏教と一口に言っても、日本における仏教の考え方は宗派によって大きく異なります。今回は日本でも代表的な宗派や宗教を取り上げて、それぞれの違いを見ていきましょう。
宗派が違うと何が違うのか
実は宗派によっては、お葬式の内容や法事の行い方などに違いがあります。では、この違いはどこから生まれてくるのでしょう。
それは宗派によって解釈が異なったり、教典が異なっていたりするところから生まれています。解釈や教典が異なれば、必然的に重要になってくる儀式のやり方やそれぞれの名称も異なってくるということなのです。
今回は日本において主に信仰されている7つの宗派について解説していきます。
日本の主な7つの宗派に見る違い
日本において最もよく見られる仏教の宗派として以下の7つがあります。
・天台宗
・真言宗
・浄土宗
・浄土真宗
・臨済宗
・曹洞宗
・日蓮宗
それぞれの宗派の違いを確認していきましょう。
天台宗
最澄が比叡山延暦寺を本山として開いた宗派です。大きな特徴は「他の宗派との違いが少ないこと」です。
どうして天台宗が他の宗派との違いが少ないかというと、その成り立ちに起源があります。
日本における仏教諸派の開祖たちは、この延暦寺で学んだ人々が多いのです。従って必然的に他との違いが少なくなりました。
お焼香の回数も特に決まりがあるわけではありませんが、一般的な額に押しいただいて3回焼香するという方法で行います。
また天台宗では、念珠が異なります。天台宗において使われる念珠は、一般的によく使われる「丸型」の数珠がついた念珠ではなく、楕円形をした「平型」の数珠がついた特徴的な念珠を用います。
この念珠は左手の親指と人差し指にかけて使います。ご自身のお家が天台宗である方は、念珠選びと掛け方に注意をしましょう。
真言宗
空海が金剛峯寺を本山に構え開いたのが真言宗です。御本尊は大日如来。宗派としての特徴は「密教」であることです。
あまり聴き慣れない言葉かもしれませんが、密教とは師から弟子へと口伝によって教えが伝えられていく宗教の形態を指します。つまり広く教えが一般には知らされず、修行を修めたものだけが行う宗教のスタイルなのです。
真言宗は16の宗派を内包していますが、真言宗16宗派それぞれに大きな違いはありません。式中の特徴として「灌注」と「土砂加持」という儀式が行われます。
「灌注」とは亡くなった方の頭に水を注ぐ儀式です。お墓に水をかけることを示す意味でもあります。
「土砂加持」とは、土砂の前で護摩を焚き、土砂を清めてそれを亡くなった方にかけることによって祈祷するものです。
お焼香の回数は、「額に押しいただいて3回」と決められています。天台宗同様、真言宗も数珠の扱い方を重視する宗派です。
真言宗は振分数珠と呼ばれる長い数珠を使用します。数珠の掛け方は両手の中指にかけて、内側に垂らします。そのまま合掌させて、数珠を擦り合わせて音を立てるのが特徴です。
浄土宗
法然上人によって開かれた浄土宗は鎌倉仏教の一つに数えられ、それまで貴族のものであった仏教を大衆に広めた意味でも大きな役割を果たしています。
浄土宗は次に紹介する浄土真宗とよく似ているので混同されがちです。大きな違いは浄土真宗が念仏を唱える「気持ちが大切」であるのに対して、浄土宗は「念仏を唱える」ことに重きを置いている点です。
浄土宗は多くの仏教諸派の中でも、戒律が厳しいことで知られます。食肉と妻帯を禁止し、一年を通して行事がとても多いです。
葬儀では、参列者が導師と共に「南無阿弥陀仏」を唱えます。お焼香の回数は特に決められていないので、一般的な3回の焼香で問題ありません。
浄土宗の念珠は、男性用女性用と分けられており、それぞれ「三万浄土」「六万浄土」と呼ばれます。これは男性は三万回念仏を、女性は六万回念仏を唱えることで極楽往生が叶うというものです。掛け方は、両手の親指にそれぞれの輪をかけて自分の方に向かって垂らします。
浄土真宗
浄土宗からより大衆向けに広がったのが、親鸞の開いた浄土真宗です。浄土真宗も浄土宗と同じく、他の宗派と異なる決まり事が多い宗派です。
浄土真宗では死者は「亡くなってすぐに極楽浄土へと往生することが出来る」と考えられています。つまり、死者の冥福を祈る必要がないのです。
そのため、他の宗派では当然あるはずのものが、浄土真宗ではありません。代表的なものをいくつか挙げます。
・「戒名」を付けずに「法名」をつける
・位牌を作らない
・仏壇に故人の写真を入れない
・お盆は行わず、迎え火送り火も行わない
なぜこのように他との違いが大きいかというと、浄土真宗が他の宗派や、個人の介入を好まない傾向が強いからです。
臨済宗
宗教に特に詳しくなくても、「座禅」を組んで修行を行う「禅宗」についてはご存知の方も多いかもしれません。臨済宗はその中でも、有名な宗派の一つです。
座禅を組み、身・息・心の調和をとることによって悟りを得られるとしています。臨済宗は宗派が多く14に分かれています。
また各地にそれぞれの宗派の本山があります。式中のお焼香は額に押しいただかずに一回がスタンダードな方法です。複数回入れることは「添え香」と呼ばれ、より丁寧なお焼香とされています。
曹洞宗
曹洞宗も臨済宗と並んで「座禅」で修行を行うことで有名な宗派の一つです。特徴としては式中の行事が多いことが挙げられます。
中でも特等的なのは「御詠歌」が歌われることが多いです。御詠歌とは仏の教えを和歌の形にして、旋律に乗せて歌われるものです。
お焼香は一度目は額におしいただいて、二度目は押しいただかずに一度目の傍に置くというやり方が一般的とされています。
日蓮宗
日蓮宗は日蓮聖人が開いた宗派です。最大の特徴は法華経のお題目を唱えることです。
「南無妙法蓮華経」の7文字を唱え続けることによって、悟りを開くことができるとされているため、葬儀の場面においても参列者が共に南無妙法蓮華経を唱えます。
こうした場面は他の宗派の葬儀においてはあまり見られないため、戸惑うかもしれませんが事前に知っておけば問題ありません。
まとめ
宗派ごとの決まり事の裏には、それぞれの宗派ごとの仏典の解釈や重きを置いているポイントがあります。それぞれの宗派のポイントをよく把握した上で、適切な行動を取りましょう。
またこれを機会にご自身の宗派について詳しく調べてみるのもおすすめです。ご自身の宗派についてよく知ることで、他の宗派に対する相違点もよく見えてくるでしょう。