一つの部屋に仏壇と神棚を祀ることはできないの?

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現在は、仏壇と神棚を一緒の部屋に置いているケースは多くはないと思いますが以前はかなりあったと思われます。仏壇と神棚という認識はあるものの、それ以上の明確な違いや安置場所については分からないという方も多いと思います。また、仏さまと神様が喧嘩をするから一緒においてはいけないのではとの考えもあります。一つの部屋に仏壇と神棚を祀ることはできないのかを切り口に、一緒に置く場合の考え方、配置の仕方、方角や背景となる神仏集合などについても紹介します。

仏壇と神棚について

(1) 仏壇と神棚の違い

  • ①仏壇とは

    仏壇は、亡くなって「仏」になったご先祖と本尊を家庭内で祀る場所です。お祀りしている目的は本尊やご先祖に感謝をし、尊び、敬うためとなります。仏壇の中心には、仏さま(故人)の位牌とともに、信仰の中心となる本尊を祀ります。本尊の種類は信仰する宗派によって異なりますが、木彫りの仏像あるいは仏さまの姿や曼荼羅を描いた掛け軸が多くあります。

    そのほか、香炉・鈴(りん)・灯籠・燭台・花立などの仏具を配置するのが基本です。

  • ②神棚とは

    神棚は、その名の通り神様を祀る場所です。お祀りしている目的は日頃の神様への感謝の気持ちを表しつつ、家族の繁栄や厄除けを願うことです。神棚には神社を模して作られた「宮形(みやがた)」を安置し、その中に伊勢神宮のお札や、地域の氏神様のお札を祀ります。家の中に小さな神社があると考えます。毎日新しい水と米(またはご飯)をお供えします。神棚の祀り方には完全に統一された形式はなく、地域や家庭によって様々な伝統があります。

    なお、一部神道を信仰するご家庭では、祖霊舎と呼ばれる祖先の霊を祀るための仏壇に相当するものがあります。

(2) 「神仏習合」とは何か
明治維新の時に、政府の方針で神仏分離令が出され、その時にむりやり仏教と神道を引き離したので、今はお寺と神社がほとんど別々に存在しています。お寺と神社は引き離されてしまいましたが、それぞれの家では、仏壇と神棚をならべてまつるという習慣が残りました。現代でも地方では、仏壇と神棚をならべてまつっている家は多いようです。「神仏習合」の考え方です。
「神仏習合」の考え方から仏壇と神棚を同じ部屋にまつることはいっこうに構わないと言えます。

なお、明治政府の神仏分離令は廃仏毀釈の政策によるものです。明治政府の祭政一致などの政治的な目的や徳川の時代の仏教重視の否定など様々な理由が複雑に混ざったものです。廃仏毀釈と神仏分離令によって、神社内の仏教に関わる建造物、仏像、祭祀に用いる道具、経典の破棄や、仏教寺院の持つ寺領の接収、神社で祀られるご祭神の中で仏教色のある神様の名称の変更など、明治政府はあらゆる面で仏教を攻撃する政策を行いました。結果として、日本の寺社にあった莫大な量の貴重な文化財がほんの数年で多くが失われ、仏像、建造物、経典等々、後世に蛮行と言われるような破壊が繰り返されました。これにより寺院の多くがなくなり、残った寺院でもその規模は大きく縮小したのです。

(3) 仏壇と神棚を同じ部屋に安置しても大丈夫か
神仏習合の考え方から仏壇と神棚を同じ部屋に安置してきた文化があります。最終的には自分自身の考え方です。仏教に深い信仰のある人は仏壇と神棚を同じ部屋に安置することはないでしょうし、逆もまたそうです。また、以下の仏壇と神棚の配置なども基本的には個人の考え方次第です。仏壇を中心に置きながらも神棚も置くという考え方もあるでしょうし逆もあるでしょう。

(4) 仏壇と神棚を自宅に配置する場合の一般的な注意点
仏壇と神棚を一緒の部屋に配置する場合、気を付けなければならないのは「位置関係」と言われています。それぞれを尊重する立場から配置を心がけることが大切です。

  • ①上下の位置関係

    一軒家の場合であれば、神棚を設置する部屋とお仏壇を設置する部屋は、別々にするのが望ましいですが、どうしても一部屋に置かなければならない場合は、位置関係に配慮します。配置の位置でどちらかを上にすれば上下関係を設けていることになり、失礼にあたります。

  • ②仏壇と神棚を向かい合わせで配置しない。

    どちらかにお祈りする際に、片方にお尻を向けるかっこうになり、それが失礼になると考えられています。

(5) 仏壇を配置する位置
仏壇は東向きあるいは南向きに安置することが多いです。ただ、仏壇の向きについては諸説あり、どの方角を向けても大きな問題はないとされています。仏壇の位置や方角にこだわりすぎるよりも、毎日のお参りのしやすさを考えることがおすすめです。
仏壇を配置する位置については、大きく分けて次の説があります。

  • ①南面北座説

    仏壇の背が北側になるように安置する考え方です。直射日光が当たりにくいため、お仏壇の風合いが守られます。安置する部屋が北窓でない限りは風通しを良くすることに難儀せず、日本家屋の中でも最適な仏壇の安置場所の一つです。

    宗派によっては、釈迦が説法する際に、南向きに座っていたことにあやかり、仏壇を南向きすべきであると説明している場合があります。禅宗の曹洞宗・臨済宗に多くあります。

  • ②本山中心説

    自分が拝む方向の延長線上に、宗派の総本山があるように、方位を調整して仏壇を配置するという考え方です。

    言い換えれば、仏壇を通して本山に向き合い礼拝する形になります。真言宗で唱えられることが多い説です。

  • ③西方浄土説(東面西座説)

    仏壇を東向きに安置して、西方浄土(極楽浄土)である西の方位に向かって礼拝することを想定した配置になります。仏壇を通して、西方の御仏を拝む格好になります。

    阿弥陀如来を本尊とする宗派は、西の方位を重要視する傾向があります。浄土真宗、浄土宗、天台宗の3つの宗派がこの説に基づいて配置する例が多いようです。

  • ④春夏秋冬説

    東西南北を春夏秋冬になぞらえ、太陽が昇る東(春)が万物のはじまりとなり、太陽が昇る南(夏)に結実し、西(秋)に収穫の時期を迎え、北(冬)に収めるという思想に基づいています。

    方角を季節になぞらえ、どの方向に向けても良いとされています。

    春(東):万物のはじまり

    夏(南):実を結び

    秋(西):収穫の時期を迎え

    冬(北):収める

(6) 神棚を配置する位置
神棚の向きは南もしくは東向きです。神棚から見て、昇陽の光が取り入れられる向きを選ぶことが、神棚の配置とっては重要です。朝日が昇る東や、一日で一番まぶしい光が注ぐ南を選ぶことで、神々を仰ぐという敬意を示す意味があります。
また、神棚は清浄で明るい場所に配置するのが望ましいとされています。これは、神は不浄を嫌うという性質から言われていることです。

仏壇と神棚を祀る部屋の現状

現在の都市部の住宅では部屋数が少なく、一緒の部屋に仏壇と神棚を祀る場合もあるでしょう。また、配置の注意もそのとおり行えない場合も多くあるでしょう。
しかし、現実には難しくても仏壇・神棚それぞれを配置する理想の部屋については知っておく必要もあります。

  • ①仏壇は仏間・和室・居間など

    仏壇を配置する際に基本となるのは、仏間や和室などの落ち着いた雰囲気の場所になります。家族が毎日お祈りをするわけですから、荘厳な雰囲気を保っておきたいものです。

    しかし、現代ではモダン仏壇、家具調仏壇のような、インテリアとしてリビングなどに違和感無く配置できるタイプのお仏壇も数多く存在します。そのため、設置場所としてあえて居間を選ぶという方法も増えてきています。

  • ②神棚は玄関や居間など

    神棚を配置する場合、基本的には多くの人が集まる場所や、人を迎え入れる場所に配置するのが望ましいとされています。ただし、配置したすぐ下に家具を置くことや、家内で人の出入りが特に激しい場所・騒々しい場所は避ける必要があります。廊下の近くや、すぐ上に子供部屋がある場合などは、設置するのを避けます。また、トイレと背中合わせになる場所、暗くじめじめした場所なども避けます。

    2階建ての一戸建てで下の階に神棚を安置する場合は、廊下や居室などの人が踏みつける場所の下は避けます。

都市部の住宅事情ではマンションなどの小スペースな住宅が中心です。また、お墓を継ぐ立場でない人では自宅に仏壇を設けることも少なくなってきているのではないでしょうか。また、神棚を置くことも会社などではあっても個人の住宅では少なくなってきているのではないでしょうか。
親や亡くなった家族の写真などをたて故人を偲ぶことなど、宗教的な要素や形態は別として行われていくように思われます。

仏壇と神棚を祀る部屋の準備

(1) 仏壇と神棚をどうするかについて考えておくこと。
まず仏壇と神棚の現状について確認し今後について考えてみます。仏壇だけあって神棚も置くことを考えているのか、神棚だけあって仏壇も置くことをかんがえているのか、仏壇も神棚もない状況で両方を置くことを考えているのか、仏壇も神棚も置いていてその配置を考えているのかの状況が考えられます。

(2) もし一緒の部屋で仏壇と神棚を祀ることになったらどうするかについて知っておくこと。

もし一緒の部屋で仏壇と神棚を祀ることになったらその配置関係を考えておきます。

まとめ

(1) 仏壇と神棚の違い
仏壇は、亡くなって「仏」になったご先祖様を家庭内で祀る場所です。お祀りしている目的はご本尊やご先祖様に感謝をし、尊び、敬うためとなります。仏壇の中心には、仏さま(故人)の位牌とともに、信仰の中心となる「ご本尊」を祀ります。
神棚は、その名の通り神様を祀る場所です。お祀りしている目的は日頃の感謝の気持ちを表しつつ、家族の繁栄や厄除けを願うことです。

(3) 仏壇と神棚を同じ部屋に安置しても大丈夫か
神仏習合の考え方から仏壇と神棚を同じ部屋に安置してきた文化があります。仏壇と神棚を同じ部屋に安置しても構いません。また、歴史的に神仏習合の考え方も背景にあります。

(4) 信仰についての考え方は自分次第
仏教を中心に考えるか神道を中心に考えるか、そしてその形としての仏壇を中心に置くか、神棚を中心に置くかは、個人の信仰心、価値観次第です。

(5) 仏壇と神棚を同じ部屋に安置した場合の配置の仕方
仏壇と神棚の双方に配慮する場合は、上下の位置関係ではどちらかを上にすれば上下関係を設けていることになり良くなく、また、仏壇と神棚を向かい合わせで配置するとどちらかにお尻を向けることになり良くないことに配慮します。

一つの部屋に仏壇と神棚を祀るときの3つのポイント

(1) 一つの部屋に仏壇と神棚を祀っても構わない。

(2) 仏壇と神棚を同じ部屋に安置した場合は、上下の位置関係を作らないこと、向かい合わせで配置しないこと。

(3) 仏壇、神棚双方の望ましい場所や方角について知っておくこと。

一つの部屋に仏壇と神棚を祀る場合に、仏教の僧侶と神道の宮司に聞けば、どちらも表面的にはそのことを否定はしないでしょう。構わないと答えるでしょう。しかし、その配置などについては僧侶であれば仏教を上位に、宮司であれば神道を上位に置くことを主張するでしょう。これは宗教の立場の問題ですが、最終的には個人の信仰、価値観の問題になります。