生前葬とは
生前葬とは、生きているうちに自分の葬儀を行うことで、喪主は本人が務めます。
「お別れの会」や「感謝の会」などの名称で行われることも多く、明るく賑やかな式が中心となっています。
生前葬の歴史
生前葬の記録としてもっとも古いものは江戸時代といわれており、肥前国平戸藩の第九代藩主・松浦清(松浦静山)が記した「甲子夜話」に記録されています。
「甲子夜話」によれば、肥後国の家老が「命のあるうちに葬礼をしてほしい」と城下に住む住職へ願い出たとされます。当時の形式で葬儀が執り行われたあと、埋葬の直前で棺から出たそうです。
生前葬の目的
死後に執り行う葬儀は弔いの場ですが、生前葬は本人から参列者へ感謝の気持ちを伝える場です。元気なうちに、家族や友人などお世話になっている方へお礼をすることが目的です。
生前葬を行うタイミング
生前葬は還暦や古希、喜寿などの節目や、定年退職時などに行う方が多いようです。また、重い病気が判明し、自身の死期を悟ったタイミングで生前葬を行うケースもあります。
生前葬の内容
生前葬に決まったスタイルはなく、多くの生前葬はパーティ形式で、参列者とともに食事を楽しみます。ビンゴゲームなどの余興を行う場合も少なくありません。
生前葬は自分が主催することから、内容も自身の思う通りにできます。
生前葬にかかる費用
生前葬の費用は内容や規模によって変わるため、明確な相場はありません。30~100万円以上など様々です。
生前葬の費用内訳として、以下のようなものがあります。予算に応じて、グレードなどを調整しましょう。
会場
生前葬は、宴会施設やホテルで行われることがほとんどです。施設のグレードや広さによって、費用は大きく変動します。また、招待客が遠方の場合、交通費や宿泊費の一部または全部を負担することもあります。
飾りつけや付帯設備
会場を生花などで飾りつける場合、花屋やレンタル業者への支払いが発生します。内容に応じて、プロジェクターやスクリーン、マイクなどの付帯設備を利用する場合も、多くは別料金として加算されます。
参列者の人数
生前葬の費用に大きく影響するのが、参列者の人数です。会場の広さや食事、記念品の数なども人数次第で変わり、大きく費用を変動させます。
専門業者の利用
会場の様子を撮影するためにカメラマンへ依頼したり、進行を務める司会者を立てたりする場合があります。また、式全体をプロデュースする業者を利用する場合もあるようです。
いずれも費用が高額となるため、予算と自身の希望から検討するとよいでしょう。
生前葬の流れ
パーティ形式の生前葬は、主に以下のような流れで行われます。
- ①喪主(主催者)の挨拶
- ②参列者のスピーチ
- ③乾杯・食事
- ④花束などの贈呈
- ⑤自分史ムービー、ビンゴゲームなどの余興
- ⑥閉会挨拶、招待者のお見送り
余興では喪主にちなんだクイズなどもよく行われ、招待者を見送る際には会葬品に代わるプレゼントを渡すことが多くなっています。
生前葬へ参列する際の服装
生前葬では平服が一般的で、喪服を着用することはまずありません。生前葬自体がまだ一般的ではないため、参列者が困ることのないよう、招待状では服装についても案内すべきでしょう。
生前葬における香典
生前葬は決まったマナーがあるわけではないので、香典を包まなくてもマナー違反とはなりません。香典について特に案内がない場合、会費として1~2万円程度を包んでおくとよいでしょう。
還暦や古希、病気や怪我からの復帰など、お祝いの要素が強い生前葬であれば、香典に祝儀袋を使うこともあるようです。白無地の封筒などを用いて、表書きは御香典や御霊前ではなく、御礼や御花料にしておけば無難でしょう。
生前葬を行ったあとの葬儀
生前葬を行った場合、葬儀を不要として、直葬を希望する方が多いようです。ただ、遺族の希望が尊重され、従来どおりに葬儀が執り行われることも少なくありません。全体的に生前葬後の葬儀は、小規模化する傾向があるようです。
生前葬と葬儀を行うと、参列者には二回分の時間を取ってもらい、香典も2回包んでもらうことになりかねません。生前葬の際は、あらかじめ本葬儀は行わないことを明確にしたほうがよいでしょう。
生前葬のメリット
葬儀とは異なる生前葬ならではのメリットがあります。
感謝の言葉を直接伝えられる
お世話になった方へ直接お礼を伝えられ、家族などにも生前葬をきっかけに本音を伝えられます。
明るく賑やかな式にできる
厳粛な形式の葬儀と異なり、終始明るい雰囲気で式を行えます。
自分で演出できる
生前葬は従来の葬儀のような形式にとらわれることなく、会場の飾りつけや内容を自分で演出できます。
計画的に執り行える
生前葬は本人が元気なうちに行うことから、日程も無理なく調整でき、計画的に執り行えます。
生前葬のデメリット
生前葬のデメリットの多くは、文化としてまだ馴染んでいないことが原因で起こることがほとんどです。
費用が高額になる
生前葬と本葬儀を行うことで、葬儀費用が単純に2倍かかります。本人が「生前葬を済ませたので、本葬儀は不要」と考えていても、遺族や参列者の希望から葬儀が行われることが多いようです。
意図を理解してもらいにくい
生前葬はまだ一般的ではなく、意図や目的を理解してもらいにくい面があります。なかには「不謹慎」「縁起が悪い」と考える人もおり、家族から反対される場合もあります。
まとめ
生前葬はまだ一般的ではありませんが、生前葬でなければ実現できないこともあり、注目されています。
ただ、本人が希望しても周囲に理解してもらえない場合もあり、まずは周囲の理解を得ることが大切です。