はじめに
日本では、亡くなられた人のために位牌を用意します。位牌は仏壇の中に置かれ、故人の象徴とも言うことができます。故人の代わりとして供養の対象になる存在です。
しかし、位牌にもいくつかの種類があり、選び方にも配慮が必要です。位牌の意味に立ち返りながら、位牌の種類と選び方などを紹介します。
位牌とは
位牌とは、仏壇や祭壇などに安置される故人の戒名などを記載した牌のことです。日本では古来より故人の魂が位牌に宿ると考えられており、先祖の魂を大切に祀るために用いられています。
仏壇は先祖がこの世に帰ってきたときの仮の家のようなもので、位牌は故人や先祖の霊が宿るものとして依代の役割を持っています。また礼拝の対象としてもされ、位牌に戒名を刻んだ故人の霊に香(線香)・華(お花)・灯明(ロウソクの火)などをお供えし、僧侶による読経で供養することが慣習となっています。
ただし、仏壇は自宅の中の寺院の役割を持ち、仏壇の中心はあくまでも本尊であり、本尊を祀るところです。位牌=故人の霊は本尊の下で浄土にあるという捉え方になります。
また浄土真宗では、浄土門の念仏を唱えることで阿弥陀仏により誰でも極楽浄土へ導かれることが宗旨です。そのため亡くなった人の魂は現世にはとどまらず、極楽浄土へそのまま導かれると考えられていることから基本的に位牌は用意しません。
位牌の種類
位牌には「白木位牌」「本位牌」「寺位牌」という3種類があります。それぞれ使用される目的や安置される場所なども異なります。
白木位牌(仮位牌)
白木位牌は、故人が亡くなり葬儀から四十九日の法要が明けるまで使用する仮位牌です。法要後に本位牌と取り替えます。
仮位牌を使う理由は、人は亡くなってから四十九日は魂がさまよっている状態で、成仏していないと考えられているためです。位牌は魂が宿る場所なので、さまよっている間に正式な位牌を用意するわけにはいかないのです。
白木位牌に書かれる項目は、表に戒名や命日(死亡年月日)が書かれ、裏面に俗名や享年(亡くなった年齢)などです。
白木位牌は、本位牌の完成後、僧侶から読経を頂き、白木位牌から本位牌へ魂を移し替えます。白木位牌の魂を抜く儀式で、「魂抜き」・「お性根抜き」・「閉眼供養」とも言われています。
本位牌
本位牌は、四十九日の法要が明けた後に白木位牌と取り替えて使用するものです。自宅の仏壇や祭壇に安置し供養することになります。
本位牌に刻字する項目は、宗派によって多少異なりますが、戒名、命日、俗名、享年(行年)などです。宗派により梵字が加わる場合もあります。
本位牌は形態により「札位牌(ふだいはい)」と「繰出位牌(くりだしいはい)」に分けることができます。札位牌とは亡くなった人一人ひとりの名前を記した通常のものです。繰り出し位牌とは多くなった先祖の位牌を1つにまとめて収納できるタイプのものです。
寺位牌
寺位牌は、その名の通り自宅ではなくお寺に安置してもらうためのものです。
自宅に仏壇が無くて安置する場所が無かったり、仏壇を受け継ぐ子孫がいなかったりする場合でも永代供養してもらえるので安心です。
位牌の仕様・材質
位牌の仕様として、表面に漆や金を施した「塗り位牌」や、黒檀(こくたん)や紫檀(したん)などの堅固で希少な木材を使った「唐木位牌」があります。
漆塗りの仕様は光沢がしっかりと出るので、美しい状態で落ち着いた雰囲気が出ます。金粉で飾られているデザインも多く、漆黒が綺麗に映えます。また漆塗りは紫外線に強い一面もあります。
黒壇の位牌は高級感のある質感で、長年にわたり故人の霊位の形を表すのにふさわしいとされています。唐木を使ったデザインは美しい木目が出やすく、美しさを持っているとされています。
材質では最近ではこれら以外に、さくらなどを使った天然木の位牌や、美しい蒔絵が施されたもの、ガラスを使ったモダン位牌などもあります。
木目を生かした天然木の位牌は、伝統的な位牌のイメージを変えようとして作られた現代的な仕様です。特徴としてはリビングになじむようなデザインに作られているものが多くあります。
位牌と仏壇とのサイズ
位牌は仏壇の中に置かれるので、仏壇全体の大きさとのバランスも考える必要があります。
位牌の大きさには、「寸」や「号」の単位が使われていますが、戒名が記された板の部分の大きさを示す「札丈」「札寸」があります。また、上下の装飾部も含めた部分は「総丈」「全長」と呼びます。この「総丈」「全長」が全体の大きさの判断となります。上置型の仏壇なら4寸~4.5寸、台付型の仏壇に置くなら4.5寸~5寸を目安に選ぶと良いでしょう。
また、すでに仏壇の中に先祖の位牌がある場合には、それらの位牌と大きさを揃えることが大切です。
位牌の値段相場
約1万円から5万円が位牌の相場です。
塗り位牌では、合成漆なら約1万円、本漆を使ったものなら3万円以上するものが多いです。唐木位牌では、使用する木材の品質によって価格に幅がありますが、相場は約2万円から5万円となっています。またモダン位牌では、自由度が高いのでデザインによって価格がかなり違いますが、約3万円の価格帯のものが多いです。
まとめ
位牌の種類は「白木位牌」「本位牌」「寺位牌」の3種類です。四十九日の法要の時に白木位牌から本位牌へ代わります。
なかなか馴染みがないものではありますが、日本では古来より故人の魂が位牌に宿ると考えられており、先祖の魂を大切に祀るために用いられてきました。そのため、この機会に位牌について知識を深め、適切に準備しましょう。