# はじめに
近年、大きく変動している世界経済を背景に、守りの資産と言われる金投資が大きな注目を集めています。
そこで今回は金投資の特徴や種類、メリット・デメリットについて詳しく紹介していきます。
金投資とは?
金は古代より、価値が変わらない物として珍重されてきました。
一方で、近年では顕在化してきた気候変動や世界規模の疫病などが、グローバル経済に大きな影響を与えるリスクを考慮して、金投資に世界中のリアルマネーが流れ込んでいます。
金の年間採掘量はごく少量に限定されており、常に供給量を上回る需要があるため、株や債券などと比べると安定した価格が見込めます。
従来の金投資はゴールドバーや各種の金貨を購入し、現物を所有するのが一般的でしたが、最近では金積立や金を証券化した金ETFなど、多様な投資方法が登場しています。
金は「守りの資産」に最適
リーマンショックのような世界規模の金融危機は、今後も20年から30年程度のスパンで起こると言われています。
こういう非常事態では株式や債券相場は乱高下しやすく、何かのきっかけで大暴落し、大きな損失を抱える可能性があります。
実際に過去の例を見ても、このような非常事態には数多くの個人投資家が、資産の大半を失っています。
一方で、常に価値が安定している金に投資する場合は、大暴落するリスクが少ないですし、一時的に価格が下がっても時間が経てば一般的な水準に戻ります。
「有事の金」という言葉があるように、グローバル経済が不安定化するほど、金は守りの資産として価値を増していくことになります。
金投資の種類
金投資には多額の現金が必要と思っている人も多いですが、実は少額から手軽に始めることができます。
そこで以下では、代表的な金投資の方法についてご紹介していきます。
金地金・金貨
地金や金貨の売買は一番オーソドックスな投資方法であり、1万円程度から取引可能になります。
地金商や一般商社、デパートなどが幅広く取り扱っており、インターネットや電話でも注文できます。
金地金は溶かした純金を型に流し込んで固めるだけなので、特別な料金は必要ないですが、金貨はデザイン料込みの価格なので若干高額になります。
中でもオーストラリア・パースの造幣局が発行しているカンガルー金貨は30年以上の歴史があり、年間の発行枚数が限られる上に、毎年金貨のデザインが変わるため、古物市場ではプレミア価格で取引されています。
他にも、1979年からカナダの王室造幣局が発行しているメイプルリーフ金貨も人気があり、発行枚数では世界一を誇っています。
純金積立
純金積立は月々3000円から積立が可能で、主に大手銀行や証券会社が取り扱っています。
毎月の積立額を設定し、その範囲内で金価格が高かった場合は買付を少なくし、安い時は買付を多くして利益を増やしていきます。
一般的な積立型の金融商品と同じく、取引の際には手数料がかかりますが、取引を行う金の量に比例して、手数料は少なくなります。
投資信託
金の投資信託は証券会社のファンドマネージャーが、顧客から集めた資金を用いて金関連の金融商品に投資を行います。
顧客は自身の投資額に応じて利益を受け取れるだけでなく、プロの投資家に任せることができるので、専門的な知識がなくても問題ありません。
一方で、市場動向による元本割れのリスクや手数料の問題もあるので、全てを任せっきりにすることはおすすめしません。
金ETF
ETFとは上場投資信託のことであり、一般的な投資信託とは違い、資産や純金などの現物も証券化し、金価格や金先物と連動する形で運用を行います。
そのため、金を対象にしたETFは純金上場投資信託や金ETFと呼ばれています。
金ETFは証券会社に口座を開設することで、1口5,000円ほどから運用を始められます。
金先物・CFD
金先物や金CFDはハイリスク・ハイリターンを希望する人におすすめの投資方法です。
金の先物取引は未来に取引される金の売買価格をあらかじめ予測して売買価格を設定し、その差益を得る取引方法です。
金先物を取り扱う取引会社に口座を開設し、証拠金と呼ばれる担保を取引会社に預けることで、取引を開始できます。
また、金先物では証拠金にレバレッジを効かせることで、手持ち資金よりも多額の金額を運用することも可能です。
例えば、20万の証拠金を取引会社に預け、20倍のレバレッジを設定すれば、400万円分の金を売買できるようになります。
ただし、大きな損失が出た場合は、追証と呼ばれる追加の証拠金を入れる必要があるため注意しましょう。
金のCFD取引は金価格を指標とした「Contract for Difference」の略称で、差金決済取引のことを指します。
CFDの大きな特徴は早朝の2~3時間を除き、ほぼ24時間365日、いつでも売買できる点にあります。
証拠金は数百円単位から設定可能ですし、レバレッジもかけることができるので、取引回数が多い人には最適な投資方法と言えます。
金投資のメリット
金投資は価格の安定性以外にも、色々なメリットがあります。
そこで以下では、金投資の大きなメリットについてご紹介していきます。
価値基準が世界共通
金の現物の基準価格はイギリスのロンドン市場で決定され、その取引価格が、そのまま金の国際価格となります。
つまり、金の価値は世界共通であり、どの国でもほぼ同じ価格で取引できるというという点が金投資の大きなメリットと言えます。
また、金に対する需要も国ごとに大きな違いはないので、換金性が高く売却先に困らないのも非常に魅力的です。
インフレに強い
ほぼ全ての国は経済対策として、緩やかなインフレを目標としています。
仮にインフレが発生すると、現金や国債などは価値が目減りしますが、金は物価の上昇に伴って取引価格も上がるのでインフレに強い資産と言えます。
現在の日本経済はインフレ目標を達成できていませんが、どのタイミングでインフレが発生するか分からない以上、その対策として金投資は有力な選択肢になります。
信用リスクがない
信用リスクとは貸したお金が返ってこない、つまり債務不履行の度合いを示すリスクのことです。
金の現物や金ETF、CFDは絶対的な金の価値基準を元に取引を行うため、投資した元本が失われる危険性は株式や債券と比較して非常に低いです。
また、金の価値を担保しているのは世界経済であり、特定の組織や国に依存している訳ではないので、金の取引が行われなくなる心配もありません。
常に一定の需要がある
金は宝飾品や電化製品の回路基板などの生産に必要なため、年中通して一定の需要があります。
特に近年では、IT産業の急成長やIoTの台頭によって回路基板の需要が急増しているので、それらの素材となる金の需要も年々増加しています。
このような流れは、今後さらに加速していくと思われるので、金投資を始めるには良いタイミングと言えます。
金投資のデメリット
金はメリットが多い一方で、もちろんデメリットも幾つかあります。
金投資を始める前に、デメリットについてもしっかりと把握しておきましょう。
利息や配当を生まない
金は現金や株式と違い利息や配当を生みません。
そのため高値掴みをしてしまうと、相場の動きによっては損失額が大きくなるリスクがあります。
また、短期間で大きな利益を発生させるためには、複数回の売買を行う必要があるので、それだけ手数料もかかってきます。
為替の影響を受けやすい
金はドル建ての国際取引価格が決まっているため、円安に振れると国内の金価格は上がり、円高に振れると価格が下がります。
このように金投資は為替の影響を受けやすく、全てのリスクを自分でコントロールできる訳ではありません。
そのため、金投資を行う場合は、為替についてもある程度勉強する必要があります。
現物には盗難のリスクがある
民家に忍び込む泥棒は現金と共に、価値の高い貴金属を好んでターゲットにします。
そのため自宅に大量の貴金属を金庫などに保管していると、それがいつの間にか近所の噂になり、防犯上好ましくない事態に陥る可能性があります。
このような盗難リスクを避けるためにも、金の現物はできるだけ自宅に置かず、金の取引会社に保管を依頼しましょう。
保管方法は「消費寄託」と「混蔵寄託」の2種類があり、消費寄託は取引会社に金の所有権が移り、自由に運用できる代わりに保管に掛かる手数料が一切無料になります。
混蔵寄託は所有権が持ち主にある代わりに、保管量に応じた保管手数料を取引会社に支払います。
ちなみにどちらの場合も金の返還請求は即時に可能ですが、消費寄託は取引会社が破綻した場合、金が戻らないリスクもあるので注意しましょう。
まとめ
一昔前は金は安全な資産というイメージが強く、お金持ちが非常時に持ち出す資産として認識されていました。
しかし、現在では誰でも手軽に金投資を行うことができますし、専門的な知識がなくても投資信託を活用することで安全資産を築けます。
このように金の運用をうまく継続できれば、将来の資産形成に大きく役立ち、幸せな老後を送るための道標になるでしょう。