はじめに
世界経済の停滞や少子高齢化などから、年金制度崩壊の不安が国内で高まっています。
たとえば大手メディアの世論調査では、現役世代の72%が「公的年金制度に大きな不安を感じる」と答えており、不足する老後資金をどのように確保するかが課題になっています。
そこでこの記事では比較的安全性の高い債券投資に焦点を当て、債券の種類や格付けのほか、債券投資のメリットやデメリットを詳しくご紹介していきます。
債券とは?
債券とは、国や民間企業が資金調達のために発行する有価証券の一種で、銀行や証券会社で口座を開けば購入することができます。
多くの債券は事前に利回りが設定され、半年~1年後に利息(クーポン)を継続的に受け取れるほか、3年~10年で設定した償還日(満期日)に元本が支払われます。
一般的に債券投資は、株式や投資信託などと比べ安全性が高いとされ、老後資金を手堅く確保したい人には、おすすめの金融商品です。
債券の主な種類
取引される債券にはさまざまな種類があり、正しい知識で投資を行わないと思わぬ損失を出すことがあります。
ここからは代表的な債券を4つ取り上げ、その特徴を詳しくご紹介します。
国債
国債とは国が発行する債券を指す言葉で、政府や中央銀行の保証が付いているため、破綻のリスクが少ない債券の代表格です。
たとえば個人向けの日本国債は月々1万円から始められ、購入金額に上限はなく、全国の銀行や証券会社で口座を作ればすぐに購入できます。
償還期間も3年、5年、10年の3つから選択可能で、期間が長いほど利回りがよく、利息の受け取りは半年ごとにできます。
3年と5年国債は固定金利のため受け取る利息は変わりませんが、10年国債は変動金利のため、市場金利に応じて受けとる利息が変わります。
また日本国債は購入から1年が過ぎれば、いつでも中途売却が可能です。
地方債
地方債は地方自治体が資金調達のために発行する債券で、国債よりも利回りが高く設定されることが多いです。
地方債には幾つかの種類がありますが、たとえば複数の地方自治体が共同で発行する「共同発行市場公募地方債」は毎月1回の公募があり、誰でも10万円から購入できます。
また全ての地方債には国の財源保障があらかじめ付加されているため、債務不履行は極めて少なく、一般的に国債と同等程度の安全性があると考えられています。
社債
社債は民間企業が資金調達のために発行する債券の総称で、償還日は3年~5年の銘柄が多く、国債や地方債と比べて利回りが高く設定されています。
たとえば個人向けの社債は、銀行や証券会社で100万円単位から購入でき、一定期間を過ぎれば債券市場で中途売却できます。
社債には普通社債(SB)のほか、転換社債(CB)やワラント債など、さまざまな種類があります。
たとえばCBは通常の社債としての権利のほか、事前に決めた価格で発行元の株式に転換できる権利が付与されています。
そのためCBは株式市場との連動性が高く、株価が大きく上昇した時に株式へ転換して売却すれば元本以上の利益が生まれ、逆に株価が下落してもそのまま社債として保有し利息を受け取れば損益は発生しません。
ただしCBはSBと比べ、最初から利回りが低く設定されることが多いため、SBと一緒に購入することをおすすめします。
外国債
外国債はドルやユーロなど、円以外の外貨建て債券の総称で、外国政府や国際機関のほか、外国法人が資金調達の目的で債券を発行します。
一般的に外国債は大手証券会社で口座を開けば購入することができ、その多くは日本の債券より高く利率が設定され、利息を年1回~2回受け取れます。
外国債の大きな特徴は償還日に支払われる償還金が外貨建てになり、為替市場の影響を受けやすいため注意しましょう。
債券の「格付け」とは?
債券銘柄には発行元の信用力に応じ、最高ランクのAAA(トリプルエー)から、最低のD(シングルディー)まで、最大で24段階の格付けが行われます。
また一般的に債券の利回りは格付けランクが高いほど低くなり、ランクが低いほど高くなります。
なぜなら格付けランクの高い債券は安全性が高く、低い利回りでも購入して保有する投資家が多くなるからです。
対してランクが低い債券は安全性が低く買い手が少なくなり、投資家の購買意欲を上げる目的で利回りが高く設定されます。
これらの点から投資目的で債券を購入する場合は、格付けがBBB(トリプルビー)以上の銘柄を選ぶのがよいとされています。
「格付け」はどこが決めている?
債券の格付けは主にアメリカに本拠を置くS&P(スタンダード&プアーズ)やムーディーズのほか、フィッチ・レーティングスによって決定されます。
この3社は格付け市場の9割を独占し、格付けの方法も企業秘密として一切公開しないため、疑問の声を投げかける専門家が多いです。
とはいえ、この格付けが債券市場において、大きな権威性を発揮しているのは事実です。
そのため格付けデータを全て鵜呑みにせず、あくまで指標の1つとして考えながら慎重に投資することが大切です。
債券投資のメリット
債券投資にはさまざまメリットがあり、よい銘柄へ継続的に投資できれば老後資金の捻出にも大きく役立ちます。
ここからは債券投資の代表的なメリットを3つ取り上げ、具体的にご紹介します。
比較的リスクが低い
一般的に債券投資は株式投資や投資信託より、保有リスクが低いとされています。
なぜなら株式投資は経済状況が悪化すると株価が下落し、大きな損失が発生することがあります。
また投資信託の多くは株式投資で得た利益を投資家に分配することが多く、やはり損失が発生しやすくなります。
対して固定金利型の債券投資では、発行元が破綻しない限り、購入時に決められた利息を償還日まで安定的に受け取ることができるため、長期保有のリスクが低くなります。
中途売却で売却益も狙える
債券は利息を受け取るだけではなく、証券会社や銀行に申請すれば中途売却できます。
たとえば株価が下落すると、株式市場から引き上げられた投資資金が債券市場に再投資され、購入した値段よりも債券価格が上昇することがあります。
そこを狙って手持ちの債券を売り払えば、元本を超える大きな利益を得ることができます。
キャッシュフローが計算しやすい
債券投資はキャッシュフロー(現金の流れ)が計算しやすいとされています。
たとえば株式投資の場合はさまざまな景気動向により、株価が常に上下するため、キャッシュフローが分かりづらくなります。
対して固定金利型の債券は、毎年受け取れる利息が購入前に決まっています。
また債券は発行元の信用度や格付けにより価格が維持されやすく、償還日まで債券を保有し続ける限り、価格の下落はそれほど気にする必要がありません。
そのため債券投資は初心者でもキャッシュフローが計算しやすく、将来受け取れる利益の総額が簡単に導き出せます。
債券投資のデメリット
一見するとメリットばかりの債券投資にも、幾つかのデメリットがあるため注意が必要です。
ここからは債券投資で発生しやすいデメリットのほか、対処法も合わせてご紹介します。
利回りと信用度がトレードオフの関係にある
債券は格付けランクや企業の信用度の高さにより価格が上昇し、同時に債券の利回りが下落するトレードオフ(相反)の関係にあります。
そのため債券投資では、利回りと信用度のバランスをよく考え、慎重に投資を行うことが大切です。
たとえば信用度が高くなった債券は価格が上昇するため、早めに中途売却すれば利回り分の損失を未然に防ぐことができます。
市場金利の影響を受けやすい
債券の利回りは市場金利を基準にして決められるため、市場金利が変更されると債券価格に影響が出やすくなります。
たとえば市場金利が5%に上がると、年率3%の利回り販売されている債券は価格が下落します。
なぜなら新たに発行される債券の利率が「5%になるだろう」と投資家の多くが考え、人気がなくなるからです。
このような場合は利率のよい債券を買い増し、利回りの低くなった債券は安易に売却せず、そのまま保有して利息を受け取りましょう。
そして債券価格が上昇に転じた時点で中途売却すれば、損失を防ぐことができます。
外国債は為替変動・カントリーリスクがある
前章でも少しご紹介しましたが、外国債は満期の償還金が外貨建で支払われるため、為替変動の影響を受けやすくなります。
たとえばドル建て債券は円に対してドルが安くなれば、償還日に支払われる元本が少なくなり、逆に高くなれば元本が多くなります。
また発行国の経済状況が著しく悪化した場合は、債券の信用度が大幅に低下して中途売却が困難になる、カントリーリスクが発生することがあります。
このような事態を回避するためにも、外国債はできるだけ信用度が高い銘柄を選び、分散投資するのがおすすめです。