シニアの収入源である年金ですが、物価が上がる一方で徐々に年金額は減少しています。年金の手取り額を少しでも増やしたいと考える方は多いでしょう。
扶養親族等申告書は年金にかかる税金の計算に必要となる書類で、提出すると年金の手取り額が増えることがあります。これまで提出していなかった、よく分かっていなかったという方のために記事内で扶養親族等申告書の記載方法、提出方法について、くわしく解説します。
扶養親族等申告書は必ず提出しよう!
扶養親族等申告書とは、年金にかかる所得税を計算するための情報収集を目的とした書類です。本人、配偶者、扶養親族など主に扶養している家族の状況を申告することで、自分に当てはまる控除が受けられるのです。
該当者には毎年9月ごろ~10月初旬にかけて、日本年金機構から扶養親族等申告書の用紙が郵送されます。年金から源泉徴収させる所得税、復興所得税について控除を受ける際、必要になる重要な書類のため、10月31日の締め切りに間に合うように返送しましょう。
扶養親族等申告書を提出することで、控除対象者には控除が適用され、税金が安くなります。年金から天引きされる所得税が減るため、年金の手取りが増えるのです。年金の手取りが増える可能性があるため、これまで出していなかった方は必ず提出しましょう。
うちには届いていないっぽい…そんなときは?
扶養親族等申告書が自宅に届いたことはないという方もいらっしゃるでしょう。扶養親族等申告書は年金受給者のすべてに郵送されるわけではありません。
扶養親族等申告書が郵送されない方は次の通りです。
(1) 65歳未満で108万円未満
(2) 65歳以上で158万円未満
年金をもらっていても、基礎控除、公的年金控除があるため、一定額になるまでは税金がかかりません。そのため、上記の年金額の場合は課税されていないため、控除もなく、扶養親族等申告書が送られてこないのです。
また、障害年金や遺族年金は所得税がかからないため、受給者は扶養親族等申告書の対象にはならず、送られてくることはありませんので、届かなくても心配は無用です。
障害年金、遺族年金の受給者以外で、扶養親族等申告書が郵送されてこない場合には、ご自身の年金の金額を確認してみてください。
扶養親族等申告書の書き方をわかりやすく解説!

扶養親族等申告書は、年金にかかる所得税を計算するために本人、家族の情報を提出するものです。提出された情報を元にして、当てはまる税金控除を受けられるため、振り込まれる年金額が増えるのです。
扶養親族等申告書は簡単にいえば、年金受給者のための所得税の申告制度です。扶養親族等申告書には新規用、継続用の2種類があります。それぞれの書き方を解説します。
新規用の申告書用紙の場合
新規用の扶養親族等申告書が送られてくるのは次のような方です。
- 老齢年金を受給して1年目の方
- 前年度には所得税、復興所得税の課税対象でなかった方
新規用の扶養親族等申告書が郵送されてきても、年金受給者本人が障害者、寡婦などに該当せず、控除対象となる配偶者、扶養親族がいない場合には申告書は提出しなくても大丈夫です。
新規用の申告書に記入する情報は以下の6点です。
- 受給者氏名
- 電話番号
- 障害者、寡婦、ひとり親に該当するか
- 受給者本人の所得見積もり
- 控除対象となる配偶者の情報
- 扶養親族の情報
受給者氏名、電話番号を記入しますが、押印は不要です。万が一押印してしまっても、そのまま提出して構いません。
受給者本人が障害者、寡婦、ひとり親のいずれかに該当する場合は、該当する箇所に〇をつけます。また、受給者本人の所得見積もりがが900万円を超える場合、本人取得欄に〇をつけましょう。
控除対象となる配偶者の情報では、条件に該当する配偶者がいる場合のみ記入します。条件とは以下のいずれかです。
- 所得900万円以下の受給者と同一生計で、所得が95万円以下である
- 所得900万円超の受有者と同一生計であり、所得48万円以下で障害者に該当する
上記のいずれかに該当する配偶者がいる場合は、配偶者の氏名、続柄、生年月日、マイナンバーを記載します。
「配偶者の区分」欄は、配偶者の所得が年金のみで申告書に記載してある金額以下であれば、上段に〇をつけます。それ以外の方は、全所得を合計した年間所得見積額を中段に記載しましょう。
年間所得の見積額は、記入の仕方に迷うところですが、控除に該当するかの情報が必要なだけなので、1円単位まで正確でなくても問題ありません。単位も「万円」となっているため、大まかな金額で大丈夫です。
配偶者が退職所得を受ける見込みがあれば、退職所得を覗いた所得見積額も記載が必要になります。最後に配偶者が障害者か、同居・別居の区別、老人控除配偶者に該当するか、記載しましょう。配偶者の欄が一番記載項目が多くなっていますが、記載漏れのないようにすべての項目を埋めます。
扶養親族の情報では、年間取得48万円以下の受給者本人と同一生計の親族が対象になります。控除対象となる扶養親族は16歳以降、扶養親族は16歳未満の人を指します。該当する場合は、氏名、マイナンバー、続柄、生年月日、特定扶養親族・老人扶養親族の区別を記載しましょう。
継続用申告書用紙の場合
継続用用紙が送られてくるのは、前年度に扶養親族等申告書を提出した方です。継続用申告書には前年度の申告内容がすでに印刷されています。
内容を確認して、前年度と変更がなければ「前年から『変更なし』で申告します」にチェックを入れます。変更がある場合は、「前年から『変更あり』で申告します」をチェックしましょう。
しかし、受給者の氏名及び電話番号は印刷されていないので、変更の有無にかかわらず、手書きで記入する必要があります。変更ありの場合は変更があった箇所について、二重線で訂正・追記・抹消を行いましょう。訂正印は不要です。
継続用申告書は記載内容は少ないですが、念のため送付前に記載漏れがないか、しっかりチェックしましょう。
扶養親族等申告書の提出方法

扶養親族等申告書の提出方法は、郵送で可能です。申告書とともに返信用封筒が同封されてくるため、書き終わったらすぐに郵送できます。返信用封筒には専用の郵便番号が記載されているため、わざわざ住所を書く必要はありませんが、切手を貼る必要があるため忘れないようにしましょう。
また、郵送ではなくe-Gov(電子申請システム)を利用して電子申請することも可能ですが、電子証明書が必要になることを覚えておきましょう。
扶養家族がおらず、年金以外の収入がない場合には扶養親族等申告書は提出しなくても大丈夫です。申告書の提出が必要ないのは次の条件をすべて満たす方となります。
- 本人が障害者、またはひとり親、寡婦に該当しない
- 所得税の控除対象となる配偶者、扶養親族がいない
- 退職手当を受ける見込みの配偶者、扶養親族がいない
提出が必要な方でも、万が一扶養親族等申告書の提出を忘れ、期限が過ぎてしまった場合でも、その年の最初の年金支払いまでさかのぼって源泉徴収額を再計算してくれますので、遅れても提出するようにしましょう。1月頃までに申告書の提出がない場合、2月頃に再度申告用紙が郵送されることもあります。
所得税の控除を申請して、年金の手取り額を増やそう!
扶養親族等申告書は年金受給者のための所得税の申告書です。年金にかかる所得税計算のため、必要な情報を申告する用紙で、控除の対象になれば年金の手取り額が増加します。
最初の年だけは記入項目が多くて大変ですが、次年度からは前年度のデータが利用されるため、それほど記載する項目はありません。
年金生活では、手取り額を増やすのは大変なことです。扶養親族等申告書を提出することで、所得税、復興所得税の控除が受けられる可能性があるのは非常にありがたいもの。
10月31日の期限に間に合うように提出するのが望ましいですが、間に合わなくても再計算してくれるため、確実に提出し、年金手取り額が増えるようにしましょう。